「俺達の翼 ー地底怪獣グドン登場ー」
『ウルトラマンメビウス』第2話
2006年4月15日放送(第2話)
脚本 赤星政尚
監督 佐野智樹
特技監督 原口智生
地底怪獣グドン
身長 50m
体重 2万5千t
東京湾の埋め立て地に現れた怪獣。
GUYS総本部にあるアーカイブの一つ「ドキュメントMAT」に記録が残っている。
テッペイによると、34年前に東京を襲い、ツインテールを捕食したとの事。
両腕の振動触腕エクスカベーターで攻撃する。
メビウスのメビュームブレードで倒された。
高次元捕食体ボガール
怪獣の存在を感じ、異様に長い舌を舐めずる。
物語
ミライとリュウは全滅したCREW GUYS再建の為に新隊員確保に動き出す。
一度は断られるがミライの説得にコノミ達の心が動き、皆の想いが一つになってガンフェニックスにファイヤーシンボルが描かれた時、怪獣グドンが出現した。
感想
歴代怪獣から『帰マン』のグドンが登場。
当初はディノゾールが再登場する予定だったらしく、ミライが「グドンのムチを見切るにはジョージとマリナの能力が必要」と言ったのは、その名残と思われる。
東京湾の地底に怪獣と思われる反応があると聞かされたトリヤマ補佐官は「毎週毎週、怪獣がいてたまるか」と憤る。残念ながら、これから先は毎週毎週怪獣が現れる事になる。
前回の「運命の出逢い」で倒されたディノゾールの死体処理はまだ済んでいないらしい。そう言えば前回の戦いではディノゾールは爆発しなかった。
ディノゾールを倒したメビウスは初代マンっぽいポーズを取っていたが、怪獣が爆発しないのも『初代マン』っぽい。
後処理の事を考えるようになったのか、これからメビウスは怪獣を爆破するようになる。
GUYSの適性試験は16歳になれば誰でも受けられるが、四半世紀も怪獣が出現していなかったので入隊の意志を持っている人間は少ない。さらにメビウスと言う新たなウルトラマンが現れたので、地球防衛はウルトラマンに任せれば良いと言う風潮が強まったらしく、入隊希望者はさらに少なくなってしまった。
入隊希望者が一人もいないと言うのはさすがにおかしいと感じるが、『80』の第1話「ウルトラマン先生」で怪獣が5年間出現しなかっただけで人々があれだけ平和ボケした事を考えると、四半世紀と言う時間は人間から怪獣と戦う意識を無くすのには十分だったのかもしれない。
旧CREW GUYS唯一の生き残りとなったリュウはGUYSの誇りを守ろうと言う気持ちが空回りして、周りに対して妙に攻撃的になってしまっている。セリザワ隊長か、せめて先輩隊員が誰か一人でも生き残っていたら、もう少し余裕を持てたのかもしれないが……。
特にメビウスに対しては同じ地球を守る者としてある種のライバル意識を抱いているように見える。
「地球は我々人類自らの手で守り抜かなければならないんだ。けど、地球は何故かウルトラマンに守られてきた。俺はGUYSをそうじゃないチームにしたいんだ!」。
セリザワ隊長は「ウルトラ5つの誓い」の「他人の力を頼りにしない事」を挙げ、「その為に必要な炎は心のどこかでずっと燃やし続けなければならない」として、ガンクルセイダーやGUYSメモリーディスプレイにファイヤーシンボルを描いていた。この思いはリュウに引き継がれ、ガンフェニックスにもファイヤーシンボルが描かれる事となった。
この他にもメビウスブレスを始めとしたメビウス関連も炎がシンボルになっていて、『メビウス』にとってファイヤーシンボルは作品を象徴するキーヴィジュアルとなった。
過去の作品では既に形が出来上がっている特別チームの中に主人公が入ってくると言う展開が多いが、『メビウス』では主人公二人だけの特別チームに新しい隊員が集まってくると言う逆の構図になっている。
又、コノミ達はミライの推薦だったので、CREW GUYSはウルトラマンがメンバーを集めたチームと見る事が出来る。
これらはウルトラシリーズでも本作のみとなっていて、過去の作品を踏まえながらも新しい事を展開した『メビウス』らしいと言える。
マリナは音頭を取って皆を引っ張っていくリーダー的存在で常に先陣を切って行動している。
逆にジョージは既にマリナの尻に敷かれたりと意外と周りの意見に負けている。
休憩中にジェットビートルの模型を手に何かを話しているリュウ。多分、リュウさんの話は長い。
コノミは引っ込み思案のようでありながら一番最初にガンフェニックスに自分の名前を書いちゃったりしている。
現れたグドンを見て熱く説明して軽く周りから浮いてしまうテッペイ。
リュウの「俺達の翼」と言う言葉が気に入ったのか、今回のミライはやたらと「俺達の翼」と言っている。ミライが「俺」と言うのは新鮮。
スタッフによると、CREW GUYSはスポーツ作品によくある「学校の弱小チームを立て直す話」がモデルらしい。
確かに旧CREW GUYSが全滅し、一人生き残ったリュウが新入隊員のミライと一緒に新しい仲間を集める展開はスポーツ作品でよく見られる展開。サコミズ隊長が謎を秘めた顧問で、トリヤマ補佐官とマルが嫌味な教頭と取り巻きで、ミサキ代行が主人公達に理解がある校長で、セリザワ隊長(ヒカリ)が捻くれ者のハグレ者と言ったところかな。
こうして見ると色々と合点がいくところがあるのだが、学校単位なら顧問の正体を謎にしたり少数精鋭にしたりする事もまだ出来るが、地球全体を守る特別チームの総監の正体が謎だったり、わずか数人でメカの運用までしたりするのはさすがに不自然だったと思う。
民間人が特別チームに入隊するのは『セブン』からの伝統。
入隊して間も無い民間人が戦闘機を操縦できるのは本当はおかしいのだが、そこはGUYSライセンスホルダーはフライトに必要な最低限のシミュレーションを適性試験で経験済みと言う設定が付けられた。ここは四半世紀の間、怪獣が出現していなかったとは言え、かつては「怪獣頻出期」と呼ばれるほど怪獣が出現していた世界らしい設定であった。
「GUYS Sally Go!」「G・I・G!」のやり取りから「ワンダバ」がかかるウルトラシリーズ伝統の出撃シーンはやはり盛り上がる。
尚、「GUYS Sally Go」は『スーパーロボット マッハバロン』の「マッハ サリー・ゴー」の、「G・I・G」は『キャプテン・スカーレット』の「S・I・G」のオマージュらしい。
超絶科学メテオールはMuch Extreme Technology of Extraterrestrial ORiginの略称で「地球外生物起源の超絶技術」と言う意味らしい。
過去に宇宙人が残した乗り物の残骸等をGUYSが独自に研究して手に入れた超絶テクノロジー。ウルトラシリーズではまさに星の数ほどの宇宙人が襲来しているので、その技術を転用するのは自然な流れだと思う。
ガンローダーがブリンガーファンでグドンを放り投げたのには驚いた。いくらなんでも怪獣を放り投げた戦闘機は他に無い。
スペシウム弾頭弾にも驚いたが、元々、スペシウムは火星にある物質なので、火星を開拓してスペシウムを採取したと考えたら納得。ウルトラマン達の基本光線であるスペシウムの研究が進められているのは最終回「心からの言葉」に登場したスペシウム・リダブライザーの伏線だったとも考えられる。
CGを使ったマニューバモードの演出はアナログ技術を使ったガンクルセイダーの演出との対比で昭和から平成への技術の変化を見る事が出来た。
メテオールの使用時間は1分間だけだが、時間切れにならなかったらグドンに勝てそうな勢いであった。
マリナが世界選手権を蹴ってCREW GUYSに参加した理由はこの時点では語られていないので、今回の話だけ見たら、一般市民の搭乗とメテオール使用を渋ったトリヤマ補佐官の態度にイラつき、その場の勢いで決めてしまったように見える。
メビウスは前回の「運命の出逢い」では街の真ん中で戦って被害を拡大させてしまったが、今回はグドンを街から遠ざけてから戦っている。
最後に一つ気になる点を。
テッペイが「グドンは34年前に現れてツインテールを食べた」と説明している。
『帰マン』の「決戦! 怪獣対マット」でグドンはツインテールを食べていないので、この台詞はミスなのかなと思ったが、実は今回の話は2006年で『帰マン』の「決戦! 怪獣対マット」は35年前の1971年となっている。
と言う事は『帰マン』の「決戦! 怪獣対マット」の後、1972年にツインテールを食べたグドンが現れた可能性がある。(ひょっとして、それが『ファイヤーマン』に登場したグドンかも……と考えると考察の可能性が広がっていく)