「誓いのフォーメーション ー再生怪獣サラマンドラ登場ー」
『ウルトラマンメビウス』第17話
2006年7月29日放送(第17話)
脚本 赤星政尚
監督 佐野智樹
特技監督 北浦嗣巳
再生怪獣サラマンドラ
身長 60m
体重 4万t
口から1300度の火炎を吐く。
メビュームシュートでも倒せないほど途轍もなく硬い体表を誇る。
再生能力を持ち、初戦でヒカリのナイトビームブレードで一刀両断にされても残された細胞片から再生した。
ドキュメントUGMに残された記録によると、過去の戦いでは80の光線で細胞片まで焼き尽くされて倒されたとなっている。
バラバラになる瞬間に喉のコブから再生を促す酵素を分泌するが、リュウとミライのフォーメーション・ヤマトで喉のコブを破壊された事で再生能力が失われ、最後はメビュームシュートとナイトシュートを同時に受けて倒された。
物語
リュウはセリザワ隊長がGUYSに戻ってこない事に不安を抱いていた。
一方、再生能力を持つ怪獣サラマンドラが出現。再生能力を司る喉のコブを攻撃するにはフォーメーション・ヤマトしかなかった!
感想
今回でツルギ・ヒカリ編が完結。
「逆転のシュート」での初登場からヒカリ(ツルギ)は殆どの話に出ているが逆にセリザワの出番はあまり無かった。『メビウス』ではミライが「ウルトラマンが変身した人間」の物語を展開していたので、「ウルトラマンと一体化した人間」であるセリザワにはミライとは違う物語を展開できる期待があったのだが、残念ながら、そういう話はあまり無かった。
「ヒカリは本当にセリザワ隊長なのか? セリザワ隊長ならどうして戻って来てくれないのか?」と語るリュウ。
『初代マン』のハヤタ隊員、『帰マン』の郷秀樹、『T』の東光太郎とウルトラマンと一体化した事で生き返った人間はそのまま元いた場所に戻って来ているのだが、セリザワだけはリュウやGUYSと一定の距離を取り続けた。
「母の奇跡」でセリザワが「今のリュウの傍にはメビウスがいる」と言っているので、初代マン達と違ってヒカリはメビウスと言う仲間がいるので自分が特別チームに所属する必要は無いと判断したのかもしれない。
又、ウルトラマンと一体化した郷秀樹や北斗星司は最後はウルトラマンと一緒に地球を離れる事になっているので、自分の運命を悟ったセリザワはいずれ地球を去る事を考えて、あえてリュウ達から離れたのかもしれない。
ヒカリは「ボガールが滅んでも怪獣の出現が止まらないのは何故だと思う?」とメビウスに問いかける。
この時点では答えは明かされなかったし、問いかけたヒカリ自身も明確な答えを持っていなかったようだが、ヒカリは地球が再び怪獣頻出期に突入したのは何者かの意思が絡んでいるのではと考えているようだ。
出現したサラマンドラに対してメビウスはメビュームシュートを撃つがそれでは倒せず、ヒカリのナイトビームブレードで倒す事が出来た。
メビュームシュートで倒せなかった敵をナイトビームブレードで倒す事で両者の強さの違いが示され、次回の「ウルトラマンの重圧」で登場するメビウスブレイブ登場への伏線となった。
ただ、「サラマンドラは光線技に強いがブレード技には弱い」とも解釈できるので、メビュームブレードで斬れなかったサラマンドラをナイトビームブレードで斬る展開にした方がより分かり易くなったと思う。(メビュームブレードとナイトビームブレードにそんなに威力の違いがあるのかと言う疑問はあるが)
ヒカリがGUYSが現場に到着する前に現れ、メビウスが倒せなかった怪獣を倒した事で、リュウはヒカリがいればGUYSもメビウスもいらないのではないかと考えるようになる。この展開は「運命の出逢い」と同じで、その後、「ウルトラマンがいなければサラマンドラを完全に倒す事は出来ないのか?」と言うトリヤマ補佐官に向かって「地球は我々人類自らの手で守り抜かなければならないんだ! ウルトラマンがいなければ怪獣は倒せない。そんな事死んでも口にするな!」と「俺達の翼」と同じ言葉で怒りを表す。
ウルトラマンの光線が無ければサラマンドラを完全に倒す事は出来ないのではないか?と言われる中、リュウはスペシウム弾頭弾は理屈の上では過去にウルトラマンが撃っていた光線と同じ威力だとして、メビウスのメビュームシュートでは倒せなかったが、スペシウム弾頭弾を連続して撃てば倒せるはずだと訴える。
ここはエネルギーが限られているウルトラマンとエネルギーを考えずに撃てる兵器の違いと言える。(残弾は考えなければいけないけれど)
危険な作戦に皆は難色を示すが、リュウは「やる前から失敗する事を考えていたら前に進めない!」と一喝。この言葉に刺激を受けたCREW GUYSによってサラマンドラにスペシウム弾頭弾が撃ち込まれる事になる。この良くも悪くもチームのムードメーカーなのがリュウである。
しかし、スペシウム弾頭弾連発でもサラマンドラを倒す事が出来ずリュウは危機に陥る。そこにヒカリが登場してリュウは一瞬だけ嬉しそうに微笑むが、すぐに気を引き締めると「これは俺達の戦いだ!」と言ってヒカリより前に出る。
そして「戦慄の捕食者」で語られた「俺達、防衛チームが限界まで戦い抜いた時だけウルトラマンは現れるんじゃないのか?」と言うセリザワ隊長の言葉を掲げ、「俺……、いや、俺達GUYSはまだ限界まで戦い抜いちゃいねぇ!」と叫ぶ。同じようにリュウがセリザワ隊長の存在を意識して行動した「復讐の鎧」の時と違って、「俺」ではなくて「俺達GUYS」と言ったところにリュウの変化が表れている。
ここでセリザワ隊長やリュウが掲げた「防衛チームが限界まで戦い抜いた時だけウルトラマンは現れる」は『80』の「怖れていたバルタン星人の動物園作戦」で矢的猛が人間とウルトラマンの関係を「人事を尽くして天命を待つ」と説明した事にも通じる。
サラマンドラの再生能力を司る喉のコブを攻撃するには「フォーメーション・ヤマト」しかない。今回は取り上げられる事が少ない『80』の話が多くて良かった。
かつてセリザワ隊長による鬼の特訓で会得する事が出来たリュウはぶっつけ本番で行おうとするミライに苦言を呈するが、逆に「やる前からしくじる事を考えていたら先には進めません!」と説得される。
フォーメーション・ヤマト絡みの話だと「ウルトラマンとウルトラマンに依存している状況を良いとは思っていない人間のコンビ」と言う点で矢的猛&オオヤマキャップとミライ&リュウは同じだと言える。
再生能力を失ったサラマンドラにヒカリが戦いを挑むが苦戦。そこをメビウスが助け、ヒカリはメビウスが差し出した手を掴んで立ち上がる。ここはツルギ時代との違いがよく分かる場面。
メビュームシュートだけでは硬い体表を持つサラマンドラは倒せないので、メビウスとヒカリはメビュームシュートとナイトシュートを同時に撃ってサラマンドラを倒す。
最初の戦いでヒカリはサラマンドラを倒したが、GUYSがいなければ再生能力は破壊されなかったし、メビウスがいなければ完全に勝つ事は出来なかった。ヒカリがいればGUYSもメビウスもいらないのではないかと思われたが、実はGUYSとメビウスの援護が無ければヒカリでも勝つ事は出来なかったのだった。
そしてそれはメビウスもヒカリの援護が無ければ勝つ事が出来ないと言う次回「ウルトラマンの重圧」への伏線にもなる。
「不死鳥の砦」でゾフィーから光の国への帰還を促されていたヒカリはリュウの成長した姿を見て地球を離れる決意をする。この流れは『80』の「あっ! キリンも象も氷になった!!」を思わせる。
ヒカリはナイトブレスをメビウスに託し、メビウスのメビウスブレスと合体したナイトメビウスブレスを生み出す。
元々、ナイトブレスはヒカリが惑星アーブを守る為に手に入れた力なのだが、それをメビウスに託すと言う事は、単に力を与えるのではなく、「惑星アーブのような悲劇を繰り返さないでほしい」と言う願いも一緒に託したように見える。
ここでヒカリは「来たるべき戦いの時、ナイトブレスは必ず必要になる」と言っている。この「来たるべき戦い」を後にメビウスはエンペラ星人との決戦と解釈したが、この時点でヒカリはエンペラ星人の動向を把握していない。おそらく地球を再び怪獣頻出期に突入させた何者かとの決戦を漠然でありながらも想定していたのだろう。
自分をウルトラマンとしてくれたメビウスとの別れの後、ヒカリはセリザワとしてリュウの前に現れる。
「強くなったな、リュウ。メビウスを、GUYSを頼んだぞ」と告げ、セリザワはヒカリとなって空の彼方へと飛んで行く。
リュウは「バカヤロー! 戻って来たと思ったら、もう行っちまうってどういう事だ! お前なんかもう戻ってくんな!」と言いながら飛んで行くヒカリを追いかけると、CREW GUYSの仲間達と一緒に「ウルトラ5つの誓い」を叫んでセリザワ隊長を見送るのだった。「聞こえるか! ちゃんと言うんだぜ! ウルトラマンの言葉はしっかり伝わってるってな!」。
このリュウがセリザワ隊長を見送る場面は『帰マン』の最終回「ウルトラ5つの誓い」がモデル。この後、セリザワは光の国へ行くのだが、子供の時から話を聞かされていたジャックとの対面は言葉にならない感動があったのだろうな。逆にジャックも次郎君を通して「ウルトラ5つの誓い」が世代を超えて語り継がれている事に感慨深さを感じたと思う。
これまでリュウはサコミズ隊長の事を「サコミズさん」と呼んでいたが、ここからは「サコミズ隊長」と呼ぶようになる。
こうしてリュウはセリザワ隊長から離れて独り立ちする事になり、メビウスもまたヒカリと離れて独り立ちする事となった。
「守り抜こうぜ、地球を。俺達の手で!」。