帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「群青の光と影」

「群青の光と影 ー暗黒星人ババルウ星人登場ー
ウルトラマンメビウス』第35話
2006年12月2日放送(放映第35話)
脚本 小林雄次
監督・特技監督 村石宏實

 

暗黒星人ババルウ星人
身長 2~56m
体重 140kg~2万8千t
ドキュメントMACに記録が残されている宇宙人。
姿を変えて相手を欺き、仲間からの信頼を失墜させる。左腕から光の弾丸を発し、刺又状の武器を振るう。
惑星アーブの戦いで自分に深手を負わせたヒカリを目の仇にしていて、ニセハンターナイト・ツルギに変身して破壊行為を行い、地球人のツルギに対する信頼を失わせた。
疑いが晴れたヒカリによって正体を暴かれ、最後は新たなツルギのナイトシュートによって倒された。
ヒカリによると、地球に危機をもたらす何者かの尖兵との事。

 

ニセハンターナイト・ツルギ
身長 50m
体重 3万8千t
ババルウ星人が変身した姿。
本物と同じくナイトビームブレードを使える。
メビウスに託されたはずのナイトブレスを身に付けていたので偽者と見抜かれた。
街を破壊して一般市民を襲うが、現れた本物のヒカリに防がれ、ブレードショットを受けて正体を暴かれた。

 

物語
突然現れて街を破壊するツルギ。
ミライはそのツルギが偽物である事を見抜くが、人々の間には青いウルトラマンに対する不信感が募っていった。
そこに本物のヒカリがやって来るが……。

 

感想
約4ヵ月振りとなるヒカリの再登場編。
誓いのフォーメーション」でヒカリが地球を去った時、まさかその後の登場が今回の話と「絶望の暗雲」と「心からの言葉」の3話だけになるとは思いもしなかった。
劇中でヒカリとババルウ星人が既に一度戦っている事が語られているが、それは『ヒカリサーガ』の「光の帰還」で描かれている。

 

街を破壊するツルギの姿に「青いウルトラマンは侵略者なのか?」と言う話が出てくる。
リュウも言っているが、かつてのツルギはボガールを倒す為に街の被害を無視して戦っていたのでこういう世論が出るのは仕方が無い。
ウルトラマンに対する世論は後の「皇帝の降臨」に繋がる要素なのでヒルカワに出てほしいところだったが、この時点ではヒルカワはまだウルトラマンに関心を抱いていなかったので難しいか。

 

ババルウ星人を追ってヒカリも地球に辿り着き、本物のヒカリと偽者のツルギの戦いが始まる。この戦いを見た人々は「やはり青いウルトラマンは侵略者なんだ!」と叫んで逃げ出す。
ヒカリとツルギが戦っているのだから、どちらかが偽物だと言う発想は出てこないのだろうか? ただでさえ『メビウス&ウルトラ兄弟』で偽者のメビウスが出ているのだから今回も偽者と言う考えは十分に出てくると思うのだが……。
因みに後にGUYSの監視下に置かれたセリザワが解放された理由はババルウ星人が変身した偽者のツルギが現れたからとなっている。それなら最初の戦いの時点でヒカリの疑いは晴れると思うのだが……。

 

ヒカリからセリザワに戻ったところをミライとリュウに発見され、セリザワは二人に連れられてフェニックスネストの司令室へ。
サコミズ隊長が「お帰り、セリザワ君。いや、ウルトラマンヒカリ」と言い、セリザワがリュウに「今の俺はかつてのセリザワではない。ウルトラマンでもあるんだ」と言ったように、ヒカリとの一体化が進んだセリザワは心身共に人間からウルトラマンへと変化していた。これは『帰マン』の郷秀樹や『A』の北斗星司に近い。

 

かつて人間だったセリザワがウルトラマンになってCREW GUYSから離れたのに対し、ウルトラマンだったミライは正体を明かしてもCREW GUYSと一緒に戦っていると言うのはウルトラマンの物語として興味深い。

 

CREW GUYSは同じウルトラマンであるミライの言葉を信じてセリザワとヒカリの事も信じる事が出来た。これもまたミライが自分の正体を明かしていた事で成り立った話と言える。

 

死んだと思われたセリザワの帰還に驚くトリヤマ補佐官。そこでセリザワは自分には後ろめたい事は無いとして自分がヒカリである事を明かす。
セリザワも最初はミライがCREW GUYSに正体を明かしていた事に驚いていたが、ミライの話を聞いて考えを改めている。かつてのウルトラマン達は自分の正体を明かしてはいけないと決められていたが、この辺りから光の国全体の考えも変わっていったのかもしれない。
さて、セリザワの話を聞いたトリヤマ補佐官は「ヒカリは街を破壊した侵略者だ」として総監に報告する。宇宙人に対して良い感情を抱いていないトリヤマ補佐官だが、ウルトラマンと言えども特別扱いはしなかった。(それだけに「皇帝の降臨」でミライの正体を知っても庇う場面が引き立つ)

 

GUYS総本部の意向によってセリザワは疑いが晴れるまで監視下に置かれる事になり、それを見たババルウ星人は「人間は外見で判断する」と嘲笑う。ババルウ星人は完璧な変身能力を持っていて外見を自由に変えられるだけに、外見に振り回される人間が愚かに見えるのかもしれない。
しかし、トリヤマ補佐官は(偽者とは言え)ツルギが街を破壊したから判断を下したので「外見で判断した」と言うのは少し違う。実は外見で全てを判断していたのは外見を武器にしていたババルウ星人の方だったのかもしれない。
ババルウ星人の嘲笑に対してセリザワは「お前もいずれ思い知るはずだ。人間の内に秘めた強さを」と返す。

 

今までたくさんのウルトラマンが地球に来て人間を守って来たが青いウルトラマンはヒカリが初めて。人々の間ではヒカリがウルトラマンだと言う事自体十分に認知されていなかった。
ナイトブレスを返しに来たメビウスに向かってヒカリは答える。
「俺が過去に犯した罪は容易く清算できるものではない。これは自業自得なのだ。今、逃げ出したら余計に信頼を失う。それにこれは自分一人の問題ではない。これから先の未来、俺と同じ青い体の同朋達が地球を訪れ人々の為に戦う日が訪れるかもしれない。しかし、彼らがその青さ故に人間達の信頼を得られず、ウルトラマンと認められないとしたら、それは俺の責任だ。彼らの為に俺は必ず人々の信頼を勝ち取ってみせる。君に出来た事が俺に出来ないはずがない。俺も君と同じウルトラマンだから」。
これは光の国出身では初めての青いウルトラマンであるヒカリだからこそ出来た話。かつてはボガールへの復讐と言う自分の都合のみで動いていたヒカリが自分の後の事まで考えるようになったところに成長が見て取れる。
その人個人ではなく肌の色で物事が判断される恐れがあると言うのは現実の地球での民族や人種の問題と重なるところがある。かなり難しい問題を取り上げたと思う。
因みにヒカリの次に登場した光の国出身の青いウルトラマンは『タイガ』に登場したトレギアであった。もし、トレギアが初めて登場した青いウルトラマンだったら、おそらく視聴者は青いウルトラマン=トレギアのイメージが強くて、トレギアの次に登場する青いウルトラマンに対しても最初は良いイメージを抱けないかもしれない。

 

今回のメビウスとヒカリの会話はウルトラマンが二人いるからこそ出来る展開。
これまでの歴代ウルトラマンの客演回はまだまだ経験の浅いメビウスが過去に地球で戦った先輩達から色々な事を学んでいく展開が多かったが、ヒカリは地球で活動する点においてはメビウスの後輩に当たり、ヒカリがメビウスから色々な事を学んでいくと言う今までとは違った展開になっている。

 

ヒカリの人間態であるセリザワの外見はメビウスの人間態であるミライの外見より年上なので、地球で戦うウルトラマンの中では一番後輩と言う感じが無く、ルーキーを前面に押し出しているメビウスとの差別化がされている。

 

今回のリュウはブチ切れると思いきや意外と冷静。それだけセリザワの事を信じているわけで、もしセリザワが生死不明にならず、その後もCREW GUYSにいたら、リュウはもっと落ち着いた感じになっていたのかなと思う。
「そこにいるのはツルギなんかじゃない。ウルトラマンでもねぇ! CREW GUYS JAPANのリーダーだった男だ。俺の憧れの隊長なんだ!」と一般隊員に訴えるリュウ
セリザワは旧CREW GUYS隊長なので、この時の一般隊員とも顔見知りだった可能性がある。そう考えると、やはり、セリザワとGUYS関係者の話が殆ど無かったのは勿体無かった。自分達の顔見知りの人物がウルトラマンとして帰って来たのを組織としてどう受け止めるのかと言うのは他の作品には無かったので新しい話を描けるチャンスだったと思う。

 

セリザワがGUYSの監視下に置かれた事を知ったババルウ星人は再び偽者のツルギに変身して街を破壊。
て、何で変身した!?
本物が拘束されている中で暴れたら自分が偽物だと宣言しているようなもの。
案の定、セリザワの監視は解かれ、本物のヒカリによってババルウ星人は倒されてしまう……。

 

同じガンウインガーに搭乗する事になって「またセリザワ隊長と一緒に飛べる日が来るなんて」と嬉しさを隠せないリュウに対し、セリザワは答える。
「済まない、今の俺はかつてのセリザワではない。ウルトラマンでもあるんだ。ツルギの罪は計り知れない。しかし、彼の中には地球の人々を思いやる優しさがある。俺は何としてでも罪を拭い去り、証明しなければならない。彼の愛した人間達に、ウルトラマンである事を」。
ここはセリザワの意識が出ている場面。セリザワとヒカリは話し方に大きな違いが無いので、今はどちらの意識が強く出ているのか判別するのが非常に難しい。
セリザワの言葉を聞いたリュウは「行ってください。行って、証明してください! 自分がウルトラマンだって! 俺が知っているセリザワ隊長はそう簡単にくたばりません!」と言って送り出す。
セリザワがウルトラマンである事を認めると言うリュウにとってセリザワ隊長からの卒業を意味していると言える台詞。一方で「俺が知っているセリザワ隊長はそう簡単にくたばりません」と言う台詞はババルウ星人には負けないと言う意味が第一だと思われるが、ヒカリとの一体化が進んでもセリザワの意識は消えないと言う意味も含んでいるように聞こえる。

 

本物のヒカリの出現に焦ったからか、偽者のツルギは一般市民を襲おうとし、それを庇う事でヒカリの疑惑は完全に晴れる事に。
『レオ』の「決闘! レオ兄弟対ウルトラ兄弟」「レオ兄弟 ウルトラ兄弟 勝利の時」では本物のアストラを自分で捕らえて、ボロが出ないようにだんまりを決め込んだ事で兄であるレオも完璧に騙せたのだが、今回は本物のヒカリがGUYSの監視下と言う名の保護下にあった上、ババルウ星人自身も行き当たりばったりな部分が見られて割とあっさりと企みが失敗している。

 

偽者のツルギの攻撃から人々を守ったヒカリはそのまま力尽きてしまう。しかし、リュウの「立ってくれセリザワ隊長! あんたは……ウルトラマンなんだ!」の言葉で再び立ち上がり、ブレードショットで偽者のツルギの正体を暴く。
そして変身しようとするミライに向かって「待て! この戦いは俺が決着を付ける! 俺はもう……一人ではない」と言って天に手を掲げる。すると、光が舞い降りてヒカリを包み、ヒカリは自分の意思で鎧を纏った新しいツルギへと変身。ババルウ星人の攻撃を撥ね返し、ナイトシュートで勝利を収めるのだった。

 

戦いが終わり、セリザワは地球に危機が迫っていてババルウ星人もその先兵だとし、自分はその調査に向かう事を告げる。
「ありがとうリュウ。君のおかげで俺はウルトラマンになれた」と言って旅立つセリザワ。「地球は自分にとってかけがえのない星だ」と言って、必ず帰って来る事を約束して、ヒカリは再び地球を離れた。
個人的にはヒカリは再びレギュラーにして少しずつ地球人の信頼を得ていく流れにしてほしかったかな。