帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「胡蝶の夢」

胡蝶の夢 ー魔デウス登場ー
ウルトラマンマックス』第22話
2005年11月26日放送(第22話)
脚本 小林雄次
監督 実相寺昭雄
特技監督 菊地雄一

 

夢幻神獣デウス
体長 24m
体重 3万5千t
女がカイトから聞き出した恐ろしい怪獣を基に作り上げた存在。無機質で掴み所が無く感情移入も出来ないオブジェ。人類の様々な夢を餌にして強大化しフォルムを抽象化させていく。
デウス・エクス・マキナ」をもじって名付けられた。この世に対するデウス・エクス・マキナであったが、最後は究極のデウス・エクス・マキナであるマックスによって倒された。しかし……。

 

物語
最近、カイトは不思議な夢を見るようになっていた。夢の中で自分は脚本家になっているのだ。
最近、蓮沼は不思議な夢を見るようになっていた。夢の中で自分はカイトになっているのだ。
そして女は問う。あなたにとって恐ろしい怪獣とは?
そして女は問う。「胡蝶の夢」を知っているかと……。

 

感想
開始数秒ですぐに他の話とは違うと感じる実相寺監督作品。
実は今回の話はウルトラシリーズでもかなりギリギリな内容であった。
実在する円谷プロの会議室が舞台となり、金城哲夫の名が挙げられ、ウルトラシリーズに関する書籍や玩具や脚本が小道具として使われ、女が「この世界は一人の作家が夢見る一本の緻密なシナリオだ。お前達は与えられた役柄を演じ、与えられた台詞を喋っているチェスの駒に過ぎない」と暴露する。
これだけメタな話にしながらも「胡蝶の夢」の設定を使って従来のウルトラシリーズの枠組みに落とし込んだバランス感覚が見事である。

 

今回の話は荘子の『胡蝶の夢』の設定を使って作品内のカイトの世界と作品外の蓮沼の世界を出して、蝶々の小道具や唱歌の『蝶々』を使って作品の内と外にあるカイトの世界と蓮沼の世界の壁を曖昧にしていた。
設定はやや違うが、夢と現実の世界を曖昧にして、そこから怪獣が生まれるのは同じ実相寺監督作品である『ティガ』の「」を思い出す。

 

不気味に笑う女が物凄いインパクトを誇る話。
女の正体が最後まで謎のままなので、正体がある程度判明する侵略者より遥かに不気味で底知れない存在となっている。
女の正体は謎のままだが目的は判明している。それは「必ず倒される運命にある怪獣に一度で良いからこの世界を征服させてやりたい」。この発想は同じ実相寺監督作品である『ダイナ』の「怪獣戯曲」に登場した鳴海に通じるものがある。
因みに「怪獣戯曲」では鳴海が破棄したウルトラマン登場と言うクライマックス場面を見付ける事で、今回はカイトがウルトラマンが勝利するシナリオを完成させる事で、それぞれ物語に決着を付けている。
どんなに怪獣が物語を混沌のまま終わらせようとしても、究極のデウス・エクス・マキナであるウルトラマンが絶対的な力で物語に秩序ある決着を付けてしまう。これは決して逃れる事が出来ないヒーロー作品の決まりと言える。

 

怪獣退治の専門家であるウルトラマンから怪獣のアイデアを聞き出すと言う逆転の発想が面白い。
カイトにとっては魔デウスが一番恐ろしい怪獣と言う事になる。どんな存在なのか分からない魔デウスの不気味さは確かに怖い。ところで魔デウスのフォルムは「第三番惑星の奇跡」に登場したイフの第一型に似ている気がする。

 

女が怪獣工房で作っていた怪獣の人形は『コスモス』の『THE BLUE PLANET』に登場したサンドロスの没デザインで後に『メビウス』の「運命の出逢い」に登場するディノゾールの原型となっている。

 

カイトが蓮沼の部屋で手にしたシナリオは『21世紀版空想科学特撮シリーズ ウルトラマンマックス 第39話「ウルトラCLIMAX」』。
蓮沼が現在書いているシナリオはこの第39話以降のものなので、蓮沼の世界の『マックス』は4クール作品のようだ。

 

胡蝶の夢」によってカイトと蓮沼が入れ替わってしまう。
ウルトラマンであるカイトが考えた恐怖の怪獣を脚本家の蓮沼がシナリオにする事で誕生した魔デウス
カイトの世界に現れた怪獣・魔デウスは脚本家のカイトが勝利のシナリオを完成させてウルトラマンである蓮沼が変身して勝利する事で倒された。
これで全てが終わったと思われたが今度は蓮沼の世界に怪獣・魔デウスが……。
全てはこれから始まるのだった……。

 

 

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