「甦れ青春 ー飛魚怪獣フライグラー登場ー」
『ウルトラマンマックス』第23話
2005年12月3日放送(第23話)
脚本 小林雄次
監督 栃原広昭
特技監督 鈴木健二
飛魚怪獣フライグラー
身長 51m
体重 2万5千t
ミノス島近海に棲むトビウオが突然変異を起こした怪獣。環境破壊を行う人類に怒りの矛先を向け、明確な意思を持ってベース・ポセイドンを襲撃する。
時速60ノットで水中を進み、トビウオの如く海上を飛び、地上戦も行える。
両脇のエラで水中や空中から水分を吸収して口から強烈な水流波を放つ。
マクシウムソードで羽を斬られて地上に落とされ、トミオカ長官が操縦するダッシュバード3号の攻撃をエラに受けて苦しんだところをマックスのマクシウムカノンで止めを刺された。
『コスモス』のリドリアスの着ぐるみを改造している。
物語
トミオカ長官に同行してベース・ポセイドンに向かう事になったカイト。
そこにはトミオカ長官とヨシナガ教授の古い友人であるダテ博士がいた。
感想
トミオカ長官とヨシナガ教授の古い友人としてダテ博士が登場。演じるのは『初代マン』でイデ隊員を演じた二瓶正也さん。
これで科学特捜隊のハヤタ、フジ、イデ隊員が揃った。アラシ隊員を演じた毒蝮三太夫さんは今回の話には出られなかったが後に「ようこそ! 地球へ 前編」に出演している。
特殊潜航艇ことダッシュバード3号が登場し、それに伴ってオープニングの映像にもメカアイテムが色々と追加された。
ダッシュバード3号はフライグラーと同じく水中と海上を舞台に活躍し、さらに最後のダテ博士の台詞で地中も活躍できる事が語られた。ダッシュバード3号の地中での活躍は「地上壊滅の序曲」で描かれる事になる。
トミオカ長官は歴代ウルトラシリーズの長官の中でも出番が多い為、人物の掘り下げが行われて人間味溢れる存在となった。
ヨシナガ教授も「勇士の証明」ではマックスをエイリアンとして調査研究する事を訴えていたが、そう言った側面は段々と薄くなってきて、皆の心情に理解を示す人物となっていった。
このように上層部の人間が現場の特別チームに近くなった事で『マックス』は歴代ウルトラシリーズの中でも特に明るい作風となった。(他の作品では上層部の中に強硬派や特別チームと対立する存在がいて、それがシリアスで暗い展開に繋がっていた)
今回はトミオカ長官の怪獣観が改めて打ち出されている。
「人類の環境破壊は次々と怪獣を作り出している」「フライグラーは人類に怒りの矛先を向けている」とトミオカ長官はカイトに向かって語る。
「怪獣は我々人類の負の遺産だ。我々の世代がかつて開発を続け高度成長を支えてきた、そのツケが今、怪獣となって現れ人類に試練を与えている。ならばそのツケを清算するのは君達若者じゃない。我々自身じゃないのか……」。
意外と人類が怪獣を作り出してしまう事が多かった『初代マン』の話を頭に入れて聞くと色々な考察が出来る発言である。
トミオカ長官に「馬鹿が百個付くほどの正義感に溢れる青年」で「まるで昔の自分」と評されるカイト。
やはりここは「初代マンに変身していた男」と「マックスに変身する男」として考えていきたい。
トミオカ長官に「人類の負の遺産である怪獣は我々の世代が始末を付けなければいけない」と告げられたがカイトは「自分も一緒に戦う」と答える。こうして世代を超えて新旧ウルトラマンが力を合わせて共に人類の試練に立ち向かう事となった。
トミオカ「何故いつも危険を顧みず、怪獣にぶつかっていくんだ?」、
カイト「何故って……、皆を守りたいから……」、
トミオカ「その意志の源は何だ?」、
カイト「……誰かを守るのに理由が必要ですか?」、
トミオカ「私は君が羨ましい。私が既に忘れかけていたものを君は思い出させてくれた。恐れを知らない勇気。人を思いやる心。それさえあれば我々のする事に意味など必要無いのだ」。
今回の話はトミオカ長官を通してカイトのキャラや戦う目的を確立させ、さらにカイトと絡める事でトミオカ長官の立ち位置も確立させると言う密度の濃い話であった。
フライグラーを倒したマックスはトミオカ長官と見つめ合った後、軽く頷いて大空に飛び立つ。
それを見送り、「ありがとう、ウルトラマン……マックス」と告げるトミオカ長官。
狙いすぎた場面ではあるが、これはアリ!
そう言えば『初代マン』の第1話「ウルトラ作戦第一号」でハヤタ隊員は特殊潜航艇に乗っていたなぁと言う事を思い出した話でもあった。
今回の話はUDFのトップで歴戦の勇士であったトミオカ長官とDASHの新人であるカイトに共同作戦を取らせる事で二人の人物像を深める話であったが、役者込みで見ると、最初のウルトラマンと最新のウルトラマンを並べて描く事で一つ一つの言動に裏の意味を持たせた話となっていた。
今回の話は栃原監督のウルトラシリーズ監督最終作となっている。