帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

『蘇れ! ウルトラマン』

『蘇れ! ウルトラマン
1996年3月9日公開
脚本 市丸宗治・おおいとしのぶ・早川優
監督 圓谷昌弘
共同監督 満田かずほ

 

ウルトラマン生誕30周年記念映画 ウルトラマンワンダフルワールド』の1作として『ゼアス』等と共に公開された。
ウルトラマン』の映像を再編集してウルトラマンゼットンに敗れた後を描いた「第40話」とも言える内容になっている。

 

フジ隊員以外の科特隊のフルネームが発表され、ムラマツ・トシオ、ハヤタ・シン、イデ・ミツヒロ、アラシ・ダイスケとなっている。
メインキャストが揃っているのが嬉しいが声の変化に30年の時間を感じる。

 

オープニングのアップテンポな曲調とCGを使った映像が新しい感じになっていた。

 

物語はウルトラマンゼットンの戦いから始まり、ウルトラマンが敗れるもイデ隊員が発明した凄い兵器でゼットンは倒される。
一ヶ月後、向かう所敵無しな科特隊に対し、ゼットンとの戦いで深い傷を負ったウルトラマンはスランプに苦しむ。アラシ隊員は「怪獣を倒しているのは我々だ。ウルトラマンはもう当てにしなくても良い」と言い出し、それを聞いたハヤタ隊員は自分の存在理由に悩む事になる。
その後、ハヤタ隊員はウルトラマンと一体になって手に入れた予知能力で怪獣総攻撃を予感するが、この事を喋ったら自分がウルトラマンである事がバレてしまうかもと悩んでしまう。
TV版ではハヤタ隊員の悩みはあまり描かれなかったが、メインライターである金城さんが書いた『怪獣絵物語 ウルトラマン』ではハヤタ隊員の心情が語られていて、今回の映画のハヤタ隊員はTV版よりこの小説版に近いキャラクターとなっている。

 

何故かイデ隊員もハヤタ隊員と同じく怪獣軍団襲来の夢を見る。
ウルトラマンにだけ感じられるはずの予知能力を見せた事でハヤタ隊員はひょっとしたらイデ隊員も宇宙から来たヒーローなのかもと考える。

 

謎の宇宙人による怪獣総攻撃の合図を受けてドドンゴが出現。ハヤタ隊員とイデ隊員が向かうがピグモンドドンゴの起こした落石で死んでしまう。ピグモンの死を目の当たりにしたハヤタ隊員はベーターカプセルを手に「俺は一体、何を……!」と迷いを振り切ってウルトラマンに変身しドドンゴを倒すのであった。
小さな英雄」と対になる展開が興味深い。又、イデ隊員が怪獣語を分かるようになっていたのが細かくて良かった。

 

各地で怪獣達が一斉に出現すると、ウルトラマンは新しい戦法、分身の術ことウルトラセパレーションを使ってそれぞれの場所へと向かう。
5人に分身したウルトラマンはまず宇宙でキーラと戦い、地球でゴモラヒドラ、ウー、ザンボラーケロニアと戦う! って、全部で6体いるんだが……。最初にキーラを倒したウルトラマンがそのまま地球で連戦したのかな?
TV版では倒さなかったヒドラスペシウム光線で倒すウルトラマン。ウーとの決着は描かれなかったが、出来ればヒドラやウーとは戦ってほしくなかった。

 

イデ隊員がハヤタ隊員が行方不明だと報告した時にムラマツキャップが「ハヤタに構うな」と言ったのはちょっと寂しかった。

 

ウルトラマンが各地で戦っている頃、科特隊本部をゼットンが襲撃。ウルトラマンは一度はハヤタ隊員の姿に戻るがゼットンの出現を聞いて再びウルトラマンに変身する。
「ハヤタ、いや、ウルトラマンゼットンと決着を付けたかった!」。
ゼットンに再戦を挑むウルトラマンだが前回と同じ展開になって危機に陥る。ウルトラマンのカラータイマーが点滅した時、イデ隊員が発明したスタミナカプセルがアラシ隊員によって撃たれ、それを受けたウルトラマンはスタミナが回復し、新技マリン・スペシウム光線で遂にゼットンを倒すのだった!

 

戦いが終わって喜び合う科特隊。ハヤタ隊員にも笑顔が戻る。
「イデ隊員の見た怪獣総攻撃の夢が本当に予知だったかどうかは分からない。彼は宇宙から来たヒーローなのかも……。それは誰にも、ハヤタにも分からない」。
ただの偶然? 本当に予知夢? それともハヤタ隊員の秘密を知っていたから?
この謎が明かされる事はおそらく無いだろう。

 

TV版では描かれなかったウルトラマンゼットンの再戦、ハヤタ隊員の心情、ウルトラマンの新技と再編集でここまで新しい物語を作る事が出来るのかと驚かされた。

 

ウルトラマン』の再編集映画4本を見ると、科特隊が活躍する『長篇怪獣映画 ウルトラマン』、怪獣に感情移入する『実相寺昭雄監督作品 ウルトラマン』、ウルトラマンウルトラ兄弟達のエピソードを加えた『ウルトラマン 怪獣大決戦』、ハヤタ隊員の心情を描いた本作と作品ごとに描く視点が異なっているのが興味深い。