帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「怪獣は何故現れるのか」

「怪獣は何故現れるのか ー牛鬼怪獣ゲロンガ登場ー
ウルトラマンマックス』第29話
2006年1月14日放送(第29話)
脚本 小中千昭
監督・特技監督 村石宏實

 

牛鬼怪獣ゲロンガ
身長 5m~47m
体重 2t~5万8千t
1964年に『UNBALANCE』の撮影現場に現れた怪獣で、その時は佐橋達の勇敢な行動で牙を一本失い、そのまま地中に潜ってしまった。口から炎を吐く。
時を経て、巨大化した状態で再び地上に出現するが、残された牙をマクシウムソードで折られて戦意を喪失すると最後はマックスによって奥多摩山中の地下深くに運ばれた。
モデルは『Q』で未制作に終わった「ゲロンガ対山椒ラウス」から。

 

物語
「自然界のバランスが崩れ、それまで人間の想像の存在でしかなかった怪獣が本当に現れ始めました。しかし、では、人間は怪獣をどのように想像してきたのでしょうか? これから30分。あなたの目はあなたの体を離れ、この不思議な時間に入り込むのです」。

 

感想
「『Q』の第29話」とも言える話で、あちらこちらに見え隠れする『Q』関連のネタが面白い。

 

最初の構想ではパゴスが再登場する予定だったらしいが、パゴスが登場する『Q』の「虹の卵」の脚本を書いた山田正弘さんが亡くなっているので、ゲロンガと言う新怪獣を登場させる事になったらしい。

 

今回の過去編は1964年、『UNBALANCE』、「山椒ラウスの逆襲」と『Q』の制作裏話を題材にしている。「怪獣は作り物」と言っていながら実は本物の怪獣がいたとする展開は『ティガ』の「ウルトラの星」を思い出す。

 

今回の話の主役3人は佐橋健二に西郷保彦と『Q』の主役を演じた佐原健二さんと西条康彦さんをモデルにしている。と言うか、本人が演じているのでメタ的な登場人物と言った方が良い。
面白いのが3人目で、桜井浩子さんが演じているのでヨシナガ教授が3人目だと思われるが実は違う。何故なら3人目には「桜井弘子」と言う名前があるのだ。つまり、『UNBALANCE』に出演していた女優さんとヨシナガ教授は別人なのだ。(劇中でもヨシナガ教授はゲロンガを昔に見たとは言っていない)
桜井浩子さんが『初代マン』でフジ隊員を『Q』で由利子を演じていた事から『マックス』ではフジ隊員イメージのヨシナガ教授と由利子イメージの桜井弘子と言う二つのキャラクターが誕生する事となった。
じゃあ、最後に3人が集まった時の昔懐かしの仲間が揃った感は一体何だったんだ?と言う疑問が出てしまうが……。(もしかしたら「桜井弘子」は芸名で、『UNBALANCE』に出演していた女優さんとヨシナガ教授はやっぱり同一人物だったと言う事なのかな?)

 

佐橋がSF作家になって、保彦がお店のマスターになっているのは『Q倶楽部』を思い出す設定。それなら現代編に登場していない弘子はフリーのカメラマンになっているのだろうか?

 

「緊急討論 怪獣は何故現れるのか?」は『ガイア』にも出てきたKCBで放送されていて、『ティガ』の「怪獣が出てきた日」に登場した上田耕生がゲストとなっている。(演じている人は違うが)
今回はTV局を舞台にしているので怪獣出現に対する世間の反応を見る事が出来る。

 

ヨシナガ教授は怪獣が特に日本に多く出現している事を「日本列島が特異なプレート構造になっている事に起因しているかも」と述べている。
ウルトラマンマックス誕生!」でのヨシナガ教授の説とは違っているが、基本的にヨシナガ教授は怪獣を自然の摂理や環境によって生じたものと認識している。これは怪獣出現には人間の負の側面が関わっていると言うトミオカ長官の考えとは大きく異なっている。

 

『UNBALANCE』の撮影中に「牛鬼」と言う妖怪の話題が出て保彦と弘子は「妖怪なんて時代遅れ」とバカにする。しかし、実際の歴史ではこれから数年後の第1次怪獣ブーム終焉と共に『ゲゲゲの鬼太郎』による妖怪ブームが起こる事になる。

 

『マックス』世界において怪獣が現れ始めたのはここ1年程だが日本人はずっと以前から怪獣を知っていた想像してきたと訴える佐橋。
「怪獣が何故現れるのか。私はずっと考えてきました。怪獣が実際に現れるようになったのは人間が怪獣の出現を望んだからではないか? そう言う可能性を私は否定する事が出来ないのです! 古来より人間は怪物と言うものを数多く夢想してきました。ドラゴンがその代表でしょう! 人は怪物を想像しないではいられなかった。人の力を超えた強大な力と巨大な体を持つ怪物の姿。それに人は強く憧れてきたのです! この日本ではスクリーンやTVに数多くの怪獣が現れ、子供達の心にその姿を強く焼き付けてきました! いつしか怪獣は単に作り物の存在ではなく、我々の想像の中で現実化していった!」。
人間の想像力が怪獣を作ったと言うのは「胡蝶の夢」に通じる部分がある。どちらもメタ的な話だった。
佐橋のこの台詞と共にカイトはマックスに変身し、『Q』には存在しなかったウルトラマンがその姿を現す。

 

ゲロンガが巨大化した理由は説明されていないが、人間と絡む事が多い『Q』ではそれほど大きくない怪獣もいたが『初代マン』からはウルトラマンと戦う為に50m前後の大きさの怪獣が殆どとなったと言う『Q』から『初代マン』への作風の変化による怪獣の大きさの変化を示しているのかもしれない。

 

 

 

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  • メディア: DVD