「ようこそ! 地球へ 前編 バルタン星の科学 ー子供の超科学星人タイニーバルタン 超科学星人ダークバルタン登場ー」
『ウルトラマンマックス』第33話
2006年2月11日放送(第33話)
脚本 千束北男
監督 飯島敏宏
特技監督 菊地雄一
子供の超科学星人タイニーバルタン
身長 ミクロ~150cm
体重 0.1g~55kg
方舟アークに乗って銀河系外惑星バルタンから地球の危機を救う為にやって来た穏健派のバルタン星人。
一応は女の子で、地球人の女の子に変身して勉と行動を共にする。
魔法のような不思議な現象を次々に起こして地球人に警告を発する。
超科学星人ダークバルタン
身長 ミクロ~51m(超巨大化時・357m)
体重 0.1g~3万9千t(超巨大化時・27万3千t)
自分達の星の環境を破壊し続けて月や火星を侵略しようとする地球人は全宇宙共通の敵であるとして、地球人を抹殺する事は正義であると主張する過激派のバルタン星人。やたらと自分達の科学力を誇示する。
重力バランスを操作してベース・タイタンや街を混乱に陥れる。両手のハサミから赤色停止光線やエネルギー流や捕獲光線を発し、さらに高速移動に再生能力に超巨大化能力も有する。
底知れぬエネルギーでマックスに圧勝した最強のバルタン星人。
海獣
勉と接触する為にタイニーバルタンが見せた幻。勉によると100t以上の大きさがあったらしい。
何となく、飯島監督が手掛けた『初代マン』の「海底科学基地」に登場したグビラに似ている感じがする。
物語
「嘘吐き少年」と呼ばれる勉はタイニーバルタンと名乗る宇宙人と知り合う。
ダークバルタンの脅威を聞いた勉は地球人の女の子に変身したタイニーバルタンと共に不思議な事件へと巻き込まれていく。
一方、地球に出現したダークバルタンは圧倒的な強さでマックスを追い詰める!
感想
面白い映像がたくさんあったのだが、どう考えても話に矛盾点が出てしまう回。
多くの要素が盛り込まれているのでカットされた場面があるのかもしれない。
今回は初代バルタン星人を作った飯島監督が脚本と監督を担当していて、『コスモス』の『THE FIRST CONTACT』に通じるテーマを取り扱っている。
飯島監督は『Q倶楽部』で「2025年からの使者(前編)」「2025年からの使者(後編)」「諸人こぞりて(続・2025年からの使者)」と言うケムール人を主役にした三部作を作っていて、こちらも今回の話に通じる部分が多々あり、今回の話を読み解く一つの鍵となっている。
勉が見た謎の生物は「海獣」と言う名前でタイニーバルタンが勉と接触する為に見せた幻らしい。
タイニーバルタンの乗る方舟アークが貝殻になっているが、ハマグリの吐き出す息が蜃気楼を作り出していると言う話が元になっているのかもしれない。(海獣を見付けた時の勉は潮干狩りをしていた)
今回ゲストの警察官はおおとりゲンを演じた真夏竜さん。事なかれ主義な田舎の警察官を好演している。
次回のラストシーンでレオリングを見せているが、他に『レオ』絡みのネタは無かった。
落ちない紙飛行機の場面に出てくる警備員を演じているのは毒蝮三太夫さん。病気で仕事を休んでいた時期だったが、それを押しての特別出演となった。
全国のウルトラファンの度肝を抜いたタイニーバルタン人間態。まさかバルタン星人が僕っ娘魔法少女になるとは思ってもみなかった。
タイニーバルタンは外見は女の子だが一人称が「僕」で、ダークバルタンは外見は男で一人称が「私」なので、意図的に両者の性別と一人称を入れ替えた可能性がある。
因みにタイニーバルタンが唱える呪文は「ばるるん」ではなく「まるるー」。飯島監督によるとタヒチの言葉との事。
今回のバルタン星人が自分達の科学力について語っているのにタイニーバルタンの能力が魔法のように演出されているのはアーサー・C・クラークの「充分に発達した科学技術は魔法と見分けがつかない」を下敷きにしていると思われる。
タイニーバルタンの目的はダークバルタンの侵略から地球を救うであった。
マックスの正体がカイトだと既に知っていて、カイトを引っ張り出す為に勉に海獣を見せてDASHを呼ばせたらしい。
て、この時の調査で既にカイトが来ていたんだけれど……。
まぁ、この時は邪魔者がいて上手くいかなかったと言っているので、何か不都合があったのだろう。(とは言え、この邪魔者が何者なのかが分からなかったりする。ダークバルタンの事かと思いきや、この時点ではタイニーバルタンはダークバルタンはまだ地球に来ていないと思っていたし)
勉に真相を明かして行動を共にする事になったタイニーバルタンは各地で不思議な現象を起こしてDASHを出動させるのだが、遊園地の事件の時にカイトが来ているのに何故か動かなかった。
もし、勉とカイト以外の人間の存在が邪魔だったのでタイニーバルタンは動かなかったとするなら、そもそも人目のある場所で騒ぎを起こしてカイトを呼ぶと言うタイニーバルタンの作戦自体がおかしな事になってしまう……。
カイトが「事件を通報する勉の背後に何者かを感じる。でも、感じるだけで正体が判然としない」と言っているので、ひょっとしたら、勉以外にはタイニーバルタンの姿が見えていないのかもしれない。トミオカ長官の話等でも通報者として勉の話は出てくるがタイニーバルタンには一切触れられていないし。
と思いきや、後半でミズキ隊員が普通にタイニーバルタンの姿を見て話をしていた……。
この一連の展開は空飛ぶジェットコースターや落ちない紙飛行機と言った夢のある映像があるのだが話の不自然さがどうしても気になってしまう。
「嘘吐き呼ばわりされても勇気を持ってDASHに事件を通報する子供」と「面倒な事件は無かった事にしようとする大人」「夢のある現象を夢の無い解釈をしてしまう大人」と言う構図は分かるのだが……。
「大多数の地球人は宇宙人の存在を信じていないし、宇宙人がいても地球人より知能が低いか、地球人に好意的だろうと思い込んでいる」とミズキ隊員がいきなりこれまでの話と矛盾しまくる発言をしたので驚いた。
『マックス』はオムニバス形式で1話1話の世界観が異なっているらしいが、それでもいきなりこれまであった話の多くを否定する発言が出てくるのは衝撃だった。(ところで地球人はマックスの存在を宇宙人とは思っていないのかな?)
マックスとダークバルタンの戦いは超巨大化を始め今までに無い映像があって面白かった。
コンビナートを舞台にしているのは『初代マン』の「侵略者を撃て」での初代バルタン星人との戦いを意識してであろうか。
底知れぬエネルギーでマックスに圧勝した後のダークバルタンの「地球人達よ、君達がいつも宇宙に呼び掛けている言葉を私にもどうだ? 「ようこそ、地球へ」……」は鳥肌モノのカッコ良さ!
と言う事で次回「ようこそ! 地球へ 後編 さらば! バルタン星人」に続きます。