帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「ガイアに会いたい!」

「ガイアに会いたい! ー大宙魔パスギーク登場ー
ウルトラマンガイア』第40話
1999年6月12日放送(第40話)
脚本 小中千昭
監督・特技監督 北浦嗣巳

 

大宙魔パスギーク
身長 80m
体重 8万2千t
空間変異性チューブに乗って地上に降下してジオ・ベースを狙う。
口から炎を発する。結晶の点滅で軌道エレベータを操作する。
逃げようとしたところをガイア・スプリームヴァージョンのシャイニングブレードで倒された。

 

物語
日本中から選ばれたXIG子供隊員がエリアル・ベースの見学にやって来る。
一方、一緒にやって来た田端さんは目の当たりにしたXIGの軍事力に懸念を示す。

 

感想
今回は「バンダイウルトラマンガイアキャンペーン」の番組出演権当選者が出演する特別編。タロウを除いた5人のXIG子供隊員が当選者との事。

 

子供達に「我夢隊員」と呼ばれる我夢。我夢が「隊員」と呼ばれるのってここだけかも。

 

「ガイアに会いたい」と言う子供隊員達の要望に我夢は「呼べば来てくれるものではなく、自分達が精一杯頑張ったら助けてくれる」と答える。同じように子供達が基地を訪問する『80』の「怖れていたバルタン星人の動物園作戦」を思い出すやりとり。

 

「ファイターEXは堤チーフの専用機だけど自分が結構改造している」と説明する我夢。
EXが堤チーフの専用機だと説明されるのはここが初めて。言わなければ分からなかった人もいるかもしれない。実際、子供隊員達は我夢の専用機だと思っていたわけだし。
それにしても他人の専用機に勝手にPALを載せちゃう我夢は図太いなぁ。

 

今回のエリアル・ベース見学はかなり波紋を呼んだらしいが千葉参謀が無理を通したとの事。
「必要だと思ったんだよ。そらが怖いと思っている子供達、未来が来ないと感じてしまっている子供達に「いやいやそうじゃないんだ。未来に希望を持って生きていこう」と子供達自身の目で見てもらいたかったんだよ、このエリアル・ベースで働いている人達の姿をね」。
これは「石の翼」を受けての話。『ガイア』は複雑な設定からXIGやアルケミー・スターズと言った限られた特別な人達を中心に話が進むところがあるので千葉参謀のように一般にも目を向けられる存在は大事である。

 

ダヴライナーに乗らないでカメラでエリアル・ベース内を撮影する田端さんの所に堤チーフがやって来る。
堤「そんなにスクープが撮りたいか?」、
田端「あ、いや……。俺には納得できない。あんなに戦闘力のあるファイターが、それにこのとてつもない空中基地を一般の人に隠して開発していた事がね」、
堤「仕方が無かった」、
田端「そうだろうねぇ。破滅を招くものが来ると分かれば世界はパニックに陥る。でも、もし来なかったら? 戦争の道具になっていたのかなぁ?」、
堤「憶測には答えられない」、
田端「立場としてはそうでしょうねぇ、堤中佐」。
『ガイア』に限らずウルトラシリーズではとてつもない軍事力を持った特別チームが登場している。怪獣や宇宙人と言う敵がいるとその戦力が人間に向けられると言う考えは出にくいが、『ガイア』は根源的破滅招来体が実際に現れる前にXIGが結成されたと言う特殊な事情があるので田端さんの言った「もしも」の可能性が出てくる。
殆どのウルトラシリーズでは第1話の前から怪獣が出現していて最終回の後も出現し続けているのだが、もし怪獣や宇宙人が出現しなくなったら残された特別チームの戦力はどう扱われるのだろうか? 怪獣や宇宙人と言う敵がいなくなった世界、残る敵は同じ人間となりそうだが……。

 

田端さんは飛行機をまるでゲームの駒のように動かして命に関わる命令を下す仕事は理解できないと堤チーフに詰め寄る。
今回の田端さんはかなりキツい言い方をする。確かにXIGの存在に疑問を持ってはいたのだが途中からは自分達を守る存在として信頼するようになっていたので今回の話はそれを無視しているように見える。
一隊員である我夢と幹部である堤チーフは分けて考えているのかもしれないし、初めてエリアル・ベースを目の当たりにして改めて懸念を感じたとも考えられるが、今回の話は田端さんがXIGを信頼する「マリオネットの夜」より前にした方が良かったかも。

 

ダヴライナーの航跡を追うように現れたワームホールに似た光の輪は空間変異性チューブと言うもので大気の摩擦を逃れて物凄いスピードで地上に降下できる一種の軌道エレベーターとの事。
パスギークの着陸場面は合成で手前に人物が入れられていて着陸と同時に人々が衝撃で倒れるのが細かくて良い。
パスギークの出現にリンブンはすぐさま中継を始める。この人は仕事関係ではかなり有能。判断も早くなったし、田端さんの後を継げる日も近いかな。
ジオ・ベース地下から迎撃システムがせり上がって来るのはミーモスの時の反省かな。

 

ピースキャリーのBハッチが無断で開いてしまう。実はEXにタロウが乗っていたのだった。初期の我夢の時もだったが堤チーフと神山リーダーはどうしてピースキャリーの中に誰かいる事を気付けないのかな……。そんなに鈍い人達とは思えないのだが……。(むしろ鋭い方でしょう)

 

ガイアに会う為にEXに潜んでいたタロウ。潜む前にタロウと真澄が頷き合っているので二人で考えた事だと思われる。ダヴライナーがタロウを乗せずに発進したのも真澄が点呼を誤魔化したのだろう。
タロウがEXに潜んでいた理由だが「EXはガイアと一緒に戦ってきたんだよね」と我夢に尋ねているのでガイアと会える可能性が一番高いと考えたのだろう。
真澄が何者かは説明されていないが、さすがにXIG隊員ではないと思われる。XIG隊員だったらEXに乗ってもガイアに会えない事くらい分かるし、いくらなんでもあんな行動は取らないだろう。
結果的にタロウは無事に助かった。それでも千葉参謀は後で責任を追及されるんだろうなぁ……。

 

軌道エレベーターの波動でPALのシステムがダウンしてEXを自動操縦にする事が出来なくなる。パジャマを着て寝ているPALの絵が出てくるが我夢が作ったのかな?

 

責任を感じる千葉参謀に向かって石室コマンダーは「子供達は必ず地上に戻します」と告げる。この時に我夢の方をチラッと見ていて露骨にガイアへの変身を促しているのが笑える。

 

タロウを助ける為にフローターに乗り込んだ堤チーフは操縦桿を握るのは何年振りかと呟く。
ちょっと待って! ひょっとして、XIG結成以来一度もファイターの類を操縦していないの!? 我夢がEXを勝手に改造しても何も言わなかったのも自分はもう操縦しないからなのかな?

 

「聞こえるか? タロウ君はウルトラマンガイアが好きなんだろ? ガイアも精一杯頑張っているんだ。勇気を持って! 君にも勇気があるはずだ。そのEXは君が自分で操縦するんだ。さあ、君の勇気を見せるんだ!」。
堤チーフの言葉に驚く田端さん。確かにタロウにEXを操縦させるのは無茶だが「子供を自分の部下みたいな言い方」と言うのは違うと思う。高所恐怖症が高い所にいるせいかピースキャリーに乗っている時の田端さんはなんか支離滅裂になっている。

 

堤チーフが自らフローターで出たのは子供に自分の顔を見せる為と説明する神山リーダー。
「戦いの場面では無線が頼りです。でもその前に我々を指揮する堤チーフ、必ず私達と顔を合わせるんです。命懸けの仕事をする私達にとって指揮官を信じるのは何よりも大事な事です」。
話を聞いた田端さんは堤チーフへの認識を改め、XIGと言う組織への認識も改めたらしいが、個人は善でも集団になったら危険な道へと走り出しかねないのが戦争時の組織と言うもの。いくら堤チーフと言う個人が善でもXIGと言う組織が危険な道へと走り出さない保障は無い。実際、地底貫通弾やワームジャンプ・ミサイルと言ったものが作り出されているわけだし。ちょっと今回の田端さんのドラマは練り込み不足だった気がする。

 

今回は走りながら変身する我夢。速い速い!!
パスギークとの戦いはテンポが良くて燃える展開。ここ最近は辛い戦いが続いていただけに今回の戦いはカタルシスがあった。
ところでガイアはタロウを助けに来たはずなのにパスギークとの戦いを優先させたのはちょっと問題。確かにジオ・ベースの危機だったがチーム・ライトニングがいたのだから暫くは任せても良かったと思う。いきなりタロウを助けたら今回の話が成り立たなくなるのは分かるが、石室コマンダーや千葉参謀は早くタロウを助けてくれとハラハラしていただろうなぁ……。
戦いが終わり、タロウが助かって本当に良かったとハイタッチする石室コマンダーと千葉参謀。序盤の話の時は何か裏のありそうな二人だなと思っていたが終わってみると二人とも良い人だった。

 

「今回の事はXIG隊員にあるまじき勝手な行動だ」とタロウを叱る堤チーフ。その言葉は隣にいる我夢にも言ってください。
続けて「勝手な行動だったがXIGの制服を着る者に相応しい勇気ある行動だった」と諦めずにEXを操縦したタロウを褒める堤チーフ。それに対するタロウの「ありがとう、堤おじさん」にちょっとグサッときてしまうが、33歳でショックを受けなくても……。そもそも自分でも途中で「おじさん」と言っていたでしょうが。(まぁ、我夢は「我夢隊員」だったのに自分は「堤隊員」ではなくて「堤おじさん」と呼ばれたらショックも受けるものかな)

 

「選ばれた皆や選ばれなかった皆の気持ちを伝えたかったんです」と語る真澄が見せたものは子供達が描いたウルトラマンの絵だった。
「アグルもまたガイアと一緒に根源的破滅招来体と戦うんでしょ? 本当はガイアとアグル仲良しなんだよね!」と言うタロウの問いに「もちろんだ。だって二人ともウルトラマンなんだ」と答える我夢。
この辺りは実際に『ガイア』を見ている子供達と『ガイア』を作っている大人達のキャッチボールみたいで見ていてホッコリした。その後のエンディングでのガイアの手に乗ってそらを飛ぶ子供達や子供達が描いたウルトラマンの絵は見ていて思わず涙が出そうになった。