帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「飛ぶクジラ」

「飛ぶクジラ ーカオスジラーク登場ー
ウルトラマンコスモス』第16話
2001年10月20日放送(第16話)
脚本 長谷川圭一
監督 市野龍一
特技監督 佐川和夫

 

精神寄生獣カオスジラーク
身長 64m
体重 5万6千t
浩太の無神経な言葉に傷付いた茜の所に降り注いだカオスヘッダーは「クジラと一緒に泳ぎたい」と言う茜の夢を現実化させてフライホエールジラークを生み出す。
心に取り憑いたカオスヘッダーは茜に特殊な力を発現させ、フライホエールジラークに取り込ませてカオスジラークへと変化させる。
カオスジラークは口からエネルギー光球や光の矢を放ち、左手から光の鞭を伸ばして電撃を流す。フルムーンレクトも通じない強敵だったが浩太の訴えで我を取り戻した茜がルナモードのルナレインボーで救出されるとそのまま昇天した。
名前の由来は「クジラ」かな。

 

物語
突如、空に巨大なクジラが現れる。
浩太は自分が茜に浴びせた無神経な言葉が原因だと悩む。

 

感想
空を泳ぐ巨大クジラと言う絵がファンタジックで素晴らしい。
海の中で泳ぐクジラを下から見上げると青空を飛んでいるように見えると言う発想が見事。
CGの質感が実体の無い幻と言う設定とマッチしていた。

 

茜の心に取り憑いて願いを叶えたカオスヘッダー。
フライホエールジラークは茜の心が生み出したもので、茜とフライホエールジラークが合わさって誕生したカオスジラークは茜の醜い心の表れとして自分を傷付け悲しませた者に復讐しようとする。
今回のカオスヘッダーは『80』のマイナスエネルギーに近い性質を示していた。

 

カオスジラークは中に茜を取り入れる事で攻撃を受けないようにしたらしい。もしそれが本当なら初期に比べてかなり知恵が付いてきたと言える。
茜とフライホエールジラークが会話をしている場面があるが、これは嫌な事を言う現実の友達とは違った決して自分を裏切らない夢の友達を願った茜の意思か、それともフライホエールジラークを通じて茜を我が意に従わせようとするカオスヘッダーの意思だろうか?

 

カオスヘッダーは「蛍の復讐」で無機物に取り憑き、今回の話で人間の心と言う実体の無いものにも取り憑く事が判明した。以前の話でもカオスバグには蛍の怨念と言う残留思念が含まれていたし、「動け! 怪獣」のムードンも滅びた生物の子供に会いたいと言う気持ちとカオスヘッダーが結びついたものだったのでこの可能性は十分にあった。
カオスジラークはフルムーンレクトが効かなかったりと結構手強かったが、ひょっとしたら、茜の心が関係していたのかもしれない。だからなのか、今後のカオスヘッダーは無限の可能性を秘める人間の心に興味を抱くようになる。

 

フライホエールジラークの調査に残ったムサシの所に浩太がやって来て事情を明かす。
ちゃんとかがんで目線を浩太に合わせて話を聞くムサシ。EYESの中では子供に見えるムサシも子供と一緒にいると大人に見える。
茜がカオスヘッダーに関わっている事が判明して、ムサシは浩太に男と男の約束として必ず茜を助けると誓う。カオスヘッダーに利用されている茜の姿にワロガに利用されたレニの姿が重なったと見るのは考えすぎかな?

 

カオスジラークの攻撃に浩太危うし! そこに間一髪コスモスが登場!!
挿入歌の『Touch the Fire』が流れて盛り上がる場面。ベタな展開だがヒーロー作品でこういう基本はやはり大事。

 

皆で将来の夢を話し合っている時、茜はクジラと一緒に泳ぐ夢を語るが、浩太は「茜は泳げないし体が弱いから絶対無理だ」「叶わない夢なら見ない方がマシだ」と言ってしまう。翌日から茜は学校を休み、空を巨大なクジラが泳ぐようになり、クジラと合体した茜は化け物となってコスモスを倒そうと暴れる。
そんな茜を見て浩太が叫ぶ。
「止めろー! 茜ー! 茜ー! お前どうしてそんな恐い姿になっちゃったんだよ? 僕が……夢なんて無理って言ったからなのか? ごめんな、茜。本当はあの時、悔しかったんだ。僕には……夢なんか無かったから……。嬉しそうに夢の話をする茜が……羨ましかったんだ。茜ー! クジラと泳げる場所があるんだ! ドミニカ共和国! 凄く遠いけれど、お金もたくさんいるけれど、今から頑張ればきっと行ける! 僕も頑張る! 一生懸命勉強して! 店の手伝いして、おいしいパンいっぱい作って! そして、茜と一緒にクジラと泳ぐ! それが今の僕の夢だ!!」。
浩太が茜に謝ると言う展開は読めたが浩太がクジラと泳げる場所を探していたのは予想外だった。「飛べ! ムサシ」もだったが、言葉だけでなく実際の行動も伴って夢は現実となるのだろう。

 

浩太の訴えは告白のようであったが「嫌い」を連呼して現実を拒絶していた茜を「好き」で現実に呼び戻したと考える事が出来る。

 

今回の話は「心」「部屋」「カオスジラークの中」と閉ざされた世界にいた茜が母親やムサシや浩太の言葉で外へと出る展開となっていた。
茜が窓から外を見る場面が何度かあるが、話の冒頭ではカオスヘッダーによる実体を持たないフライホエールジラークが飛んでいて、話の最後ではお見舞いに来た友達がクジラパンを持って来ると言う対比が上手かった。