帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「襲来の日」

「襲来の日」
ウルトラマンデッカー』第1話
2022年7月9日放送(第1話)
脚本 根元歳三
監督 武居正能

 

巨大宇宙球体キングスフィア
全長 不明
重量 不明
日本のソラフネシティ、オーストラリアのシドニーアメリカのニューヨーク、フランスのパリ、エジプトのギザに現れた謎の存在。
スフィアソルジャーとスフィアザウルスを出現させ、両者がデッカーに倒されると地球をバリアーで覆って宇宙との交流を絶った。

 

精強宇宙球体スフィアソルジャー
全長 不明
重量 不明
火星のレッドシティを襲撃した謎の存在。その後、ソラフネシティにキングスフィアと共に現れた。
光線で街を破壊し、襲った人間を取り込む。
地球からエネルギーを吸収するスフィアザウルスを守る為にデッカーを攻撃するが返り討ちにされる。

 

精強融合獣スフィアザウルス
身長 68m
体重 6万8千t
キングススフィアが地上に放った光線の中から現れた怪獣。
衝撃波を発する事で周囲に電波障害を起こして遠隔操作のGUTSファルコンとナースデッセイ号を無力化させた。
巨大な前足で地球からエネルギーを吸収する。
デッカー・フラッシュタイプのセルジェンド光線で倒された。

 

物語
怪獣が出現しなくなって7年が過ぎ、地球は宇宙に向けて力を注ぐようになった。
そんなある日、火星と地球が謎の球体スフィアに襲われる。
その場にいたアスミ・カナタは立ち向かうがスフィアソルジャーに取り込まれてしまう。

 

感想
オープニング曲はSCREEN modeの『Wake up Decker!』。
サビ部分の「You can now send! Sing out!」が「勇敢な戦士が」と聞こえるところが大好き!
基本的に『デッカー』は手堅いと言うかあまりネタに走らない作風なのだが、それだけにこの曲のMVのインパクトは凄まじかった。


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『デッカー』の時代は『トリガー』から7年後となっている。これは元となった『ダイナ』が『ティガ』の7年後を舞台にしていたから。そして『デッカー』も『ダイナ』と同じくネオフロンティア時代を迎える。

 

火星第2コロニー開発チームの代表ヤオ・マモル博士は『ティガ』でマキシマ・オーバードライブを発明したヤオ博士がモデルかな。

 

怪獣が出現しなくなった事で怪獣関係の予算は減らされていった。その状況をムラホシ校長は「前に向かって進む事は良い事です。でも、その為にも足下をしっかりしておかないと。都合良く私達を助けてくれる存在がまた現れてくれるとも限らないですし」と語る。
この場面はムラホシ校長の表情といい喋り方といい無音となる演出や暗めの感じなど全体的に不穏な作りになっている。ただでさえ『デッカー』の元となった『ダイナ』ではゴンドウ参謀がF計画等を進めていたので、ムラホシ校長の今後に不安を感じる場面であった。
結論を言うとムラホシ校長が人工ウルトラマンを作るなんて事は無かった。ゴンドウ参謀がウルトラマンと言う存在の不確かさを解決する為にプロメテウスやネオマキシマ砲やテラノイドと言った強力な戦力を得ようとしたのに対し、ムラホシ校長はアスミ・カナタと言う人の力を求めた。この考え方の違いは警務局出身の参謀であるゴンドウと訓練校の校長と言う人を育てるムラホシの違いから出たのかもしれない。

 

『ダイナ』の主人公であるアスカは訓練施設ZEROからスーパーGUTSに入隊すると言う軍のエリートであったが『デッカー』の主人公であるカナタは「明日見屋」と言う煎餅屋を家業としている一般人でこの時点では軍の訓練を一切受けていなかった。
又、アスカは光に消えた名パイロットである父親との話が一つの軸になっているがカナタは両親が健在で父親との話は特に語られなかった。
『トリガー』のケンゴが『ティガ』のダイゴを意識した設定であったのに対し、『デッカー』のカナタは『ダイナ』のアスカとの共通点は特に設定されなかった。

 

『トリガー』のケンゴは第1話では自分の研究に没頭して周りと会話していなかったが『デッカー』のカナタも相手の都合お構いなしに自分の店の煎餅を押しつけてくると方向性は違うがどちらもコミュニケーションにちょっと難がある人物になっている。

 

『トリガー』では人々が火星で暮らすようになったと言う「映像」で未来を示し、『デッカー』では火星への旅行が身近になったと言う「言葉」で未来を示している。

 

『トリガー』の第1話は「地球は怪獣が出て大変だなと思っていたら火星にも怪獣が現れた」と言う展開で『デッカー』の第1話は「火星が宇宙生命体に襲われて大変だなと思っていたら地球も宇宙生命体に襲われた」と言う展開になっている。

 

スフィアの襲来に対してGUTSファルコンとナースデッセイ号が出撃する。
こういう装備がさらっと出てくる事で世界観が前作と繋がっている事が実感出来る。

 

緊急事態なのでムラホシ校長は制服姿で戦う事になる。
ウルトラシリーズは制服組は銃を持って戦う事が少ないので制服姿で戦うムラホシ校長の姿は印象に残った。

 

スフィアザウルスは巨大な前足が印象的。
『ダイナ』の第1話「新たなる光(前編)」に登場したダランビアが操演怪獣で二足歩行ではないデザインになっていたが、あの方向性を着ぐるみ怪獣でやるとスフィアザウルスみたいになるのかな。
正直言って人が入る着ぐるみのデザインは大体出揃った印象があったのでスフィアザウルスのデザインを見た時はまだまだ新しい形があると知って衝撃を受けた。

 

スフィアソルジャーが人間を取り込む事が判明してムラホシ校長は皆に退避を命じるが、スフィアソルジャーの侵略に怒りを爆発させたカナタは落ちていた銃を持って一人で突撃してしまう。
これはさすがに無謀すぎる……。アスカも無茶をする人物だったが彼はまだ正規の訓練を受けていたのに対してカナタは民間人。リュウモンが「素人が勝手な真似をするな! 助かったのは運が良かっただけだ!」と怒るのはまさにその通り。

 

スフィアソルジャーに取り込まれたカナタは「ここはどこだっけ? 俺……、俺って何だ?」と自身の存在が不確かになる。『ダイナ』ではスフィアの目的が人間も含めた地球との融合であったが実際に人間が融合される場面は無かった。(状況を考えると「太陽系消滅」で闇に吸い込まれた人達はその後に融合されたと思われるが)
全てが一つに融合させられると言うのは自分と言う存在が消えると言う事なのかな。何となく『新世紀エヴァンゲリオン』の「人類補完計画」を思い出す。

 

スフィアソルジャーの中で自分と言う存在が消えそうだったカナタだったが「何だじゃない! 俺は……俺だ! 俺はアスミ・カナタだぁ!」と自分と言う存在を強く意識するとスフィアソルジャーの世界が打ち破られて宇宙が広がり、そこでウルトラマンデッカーと出会う。

 

ニュージェネレーションシリーズのウルトラマンはよく喋るようになったが、『Z』をピークにして『トリガー』『デッカー』ではウルトラマンが人間の言葉を喋る場面は抑えられていった。今回もデッカーの声はカナタには聞こえるが視聴者には聞こえないとなっている。

 

デッカーのデザインで目を引くのは宇宙が描かれたプロテクターであろう。
デッカーのデザインは元となったダイナにかなり近いのだがこのプロテクター一つでかなり違う印象を受ける。スフィアザウルスの巨大な前足もだが、一つ大きなポイントでインパクトを付ける事で新しいイメージが出来上がっている。

 

トリガーは必殺光線の名前もティガと同じだったがデッカーはダイナとは少し変えている。自分としては元になったと言ってもデッカーとダイナは違う存在なので名前が違っていて良かったと考えている。

 

スフィアザウルスを倒したデッカーは宇宙にいるキングスフィアに戦いを挑むがバリアーを展開されて地球に叩き落とされてしまう。結果だけ見たら新ヒーローが第1話で負けてしまったわけだが、その前にスフィアザウルスとの戦いでデッカーの強さは見せているし、ウルトラマンの活動時間は限られているのでカラータイマーが点滅してからのキングスフィアとの戦いは負けても仕方が無いかなと思えるので、第1話で負けたからと言ってデッカーが弱いと言う印象は受けなかった。

 

無事に生還したカナタにリュウモンは素人が勝手な真似をした危険を責め、ムラホシ校長も人助けも良いが自分の命も大切にするよう注意する。
ムラホシ「私の名前はムラホシ・タイジ。TPU訓練校の校長です。もし君に意志があるのなら、いつでも連絡してください」、
カナタ「意志?」、
ムラホシ「大切な者を守る意志です」。
スフィアの襲撃でTPUの戦力は壊滅状態に陥り、地球がバリアーに覆われて宇宙との繋がりが絶たれた事をニュースで聞くカナタに祖父のダイシロウが語りかける。
ダイシロウ「俺なら心配無い。お前はお前の信じる道を行け」。
そして宇宙開発課の訓練が中止されたTPU訓練校では宇宙飛行士志望者は怪獣対策課の一員として戦闘訓練を受ける事になり、そこにリュウモンとイチカの他にカナタの姿もあったのだった。

 

前作の『トリガー』は『ティガ』の設定やテーマを強く意識した作品であったが『デッカー』は『ダイナ』の設定やテーマを引き継いでいるように見えて「父親が健在で主人公と父親の話が無い」「スフィアのバリアーによって宇宙に出られなくなる」と『ダイナ』のメインテーマであった「父親を超える」と「ネオフロンティア」を外している。
物語が進んで結果として『ダイナ』とは違う設定やテーマになったではなく、あえて最初から『ダイナ』とは違った設定やテーマで始めると言うのはかなり挑戦的であったと思う。

 

エンディング曲は影山ヒロノブさんの『カナタトオク』。自分は『ドラゴンボールZ』の世代なのでメチャクチャ好きな歌!
因みに影山ヒロノブさんは前田達也さんと『ダイナ』の『光の星の戦士たち』の主題歌を担当し、さらにLAZYとして『ダイナ』のTVシリーズの後期のエンディング曲も担当している。