帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「決意のカナタ」

「決意のカナタ」
ウルトラマンデッカー』第2話
2022年7月16日放送(第2話)
脚本 根元歳三
監督 武居正能

 

破壊暴竜デスドラゴ
身長 66m
体重 6万t
TPU訓練校怪獣対策課の最後の行軍訓練中に出現した。
『トリガー』の地球では『エピソードZ』以来の地球怪獣となるので、『トリガー』の地球の「始まりと終わりと再開の怪獣」となった。
何かを警戒していて、角を落とされても戦意を喪失せず攻撃を続けた。
GUTSファルコンとGUTSホークに角を折られ、最後はデッカー・フラッシュタイプのセルジェンド光線で倒された。

 

ディメンションカード怪獣ミクラス
身長 ミクロ~40m
体重 0~2万t
カナタの「負けるわけにはいかない!」と言う思いに応えて現れたミクラスのモンスディメンションカードをウルトラDフラッシャーでリードすると現れた。
デスドラゴに攻撃を加えてデッカーの危機を救った。

 

物語
デッカーに変身したカナタはTPU訓練校怪獣対策課に入学した。
それから一年が経ち、地球はバリアーを越えて外に出る事が出来ないままであった。
再編されたGUTS-SELECTへの入隊をかけたTPU訓練校での行軍が行われる中、怪獣デスドラゴが地上に現れる。

 

感想
スフィアのバリアーに包まれて一年が経過した地球は火星との通信が途絶えて宇宙に出る事が出来なくなってしまったがそれ以外の異常が無かった為に混乱した人々の生活も落ち着きを取り戻してきた。
この設定は2020年から始まったコロナ禍をイメージしたものだと思われる。
『ダイナ』のエッセンスを取り入れた作品ならネオフロンティアで宇宙を舞台にしてほしかったが、逆に『ダイナ』を元にした作品で宇宙に出る事を封じられる事で外出自粛を求められたコロナ禍を強くイメージ出来たところがある。
作品はそれが作られて発表された時代の影響を完全に排除する事は出来ないので、コロナの影響を設定に感じる『デッカー』はこの時代だからこそ生まれた作品と言える。

 

カナタは一年前の「襲来の日」以来一度もウルトラマンに変身出来ておらず、スフィアの襲来もあれから無かったらしい。
ウルトラシリーズに限らずヒーロー作品は一度戦いが始まったら毎週戦いが起こるようになるので最初の戦いから次の戦いまで一年の間があったと言うのは斬新で驚きだった。でも、実は『ダイナ』もスフィアの襲来は第2話の「新たなる光(後編)」の次は8ヶ月後の第35話「滅びの微笑(前編)」だったりする。(しかも劇中では二年経過した設定だった)

 

再編されるGUTS-SELECTのメンバーが訓練校の生徒から選ばれるらしいと言う話を聞いたカナタは驚くが、それを聞いたイチカは「あなたは一年間何を目指してきたの?」とその反応に驚く。
おそらくカナタはデッカーに変身出来るので「GUTS-SELECTの隊員になってスフィアと戦う」ではなく「デッカーに変身してスフィアと戦う」と考えていたと思われる。訓練校での日々もGUTS-SELECTの隊員になる為ではなくてデッカーとして戦う為の訓練と言う意味合いが強かったのかもしれない。
そんなカナタは今回の話でGUTS-SELECTの隊員になる事を強く望むリュウモンとぶつかる事になる。

 

訓練生の一人が教官達の話から仕入れたGUTS-SELECTの候補はノジマとヤマシタとサカイであった。
ノジマとヤマシタは中間での総合成績が2位と3位だったので順当と言ったところだが、サカイは7位でイチカより下の成績で、1位だったリュウモンが選ばれていなかったりと、この時点でムラホシ校長は成績以外のところも考えて選んでいる事が分かる。

 

デッカーはまた現れるのかと言う話題でムラホシ校長は「さぁ。彼とも仲良くなれると良いのですけどね」と仲良くなれなかったらどうするつもりなのかと不安になる返答をするが後の話を見ると本当に仲良くなりたいと言う気持ちだった事が分かる。

 

60kmの行軍を散歩にちょうど良いと軽口を叩きながら実際に始めると(リュウモンがペースを上げてしまったのもあるが)途中でへばってしまったカナタ。どうやらデッカーの力を得ても普段の身体能力は向上していないようだ。

 

途中でカナタが負傷したのを受けてリュウモンは諦めてリタイアを選択する。
「お前の体力では無理だ。制限時間内に揃ってゴール出来なければ任務成功とは見なされない。本部に連絡しリタイアするのが正しい選択だ」、
「お前のような考えで戦えると思っているのか? GUTS-SELECTの一員としてやっていける自信があるとでも言うのか?」。
しかし、カナタはそんなリュウモンの考えに真っ向から反論する。
「今やれる事を限界までやりもしないで、失敗だからと言って途中で止めて、お前こそ本当に戦えるのかよ!」。
リュウモンは「結果」と「理屈」を、カナタは「経過」と「気持ち」を重視している感じかな。二人の言っている事はどちらも間違いがあって正しさもある。なので、両方の言い分をまとめられるイチカの存在が重要となる。

 

「私、ずっと宇宙開発の仕事がしたいって思ってた。けど、スフィアのせいで出来なくなっちゃって。今は宇宙に行った先輩達や大勢の人を助けたい。また皆が普通に夢を追いかけられるような世界に戻したい。本当に出来るかどうかなんて分からない。けど、自信があるからいるんじゃないよ。やらなきゃいけないって思うから、やらずにはいられないからやるんだよ」。
イチカのこの言葉は『デッカー』やウルトラシリーズだけでなくヒーロー作品全てに当てはまる名言であった。放送された時期を考えたらコロナ対策に関わる人々にも通じるものがある台詞だった。

 

出現したデスドラゴの生態を詳しく説明するカイザキ博士。
『トリガー』の頃は怪獣に対応する組織が出来てまだ数年だったので怪獣の生態は宇宙人のマルゥルの知識に頼っていたところがあったが、『デッカー』ではカイザキ博士のように怪獣の権威と呼ばれる地球人が出るようになった。

 

GUTS-SELECTの再編が完了していないので隊長予定のムラホシ校長が自らGUTSファルコンで出撃する事になる。
「腕は鈍っていない」と言っていたが『トリガー』の頃からGUTSファルコンは無人になっているので実際に彼が搭乗したのは10年以上前になるのかな。それならさすがに不安になるのも分かる。

 

GUTSファルコンは『トリガー』では無人機になっていた。今回の話を見たら安全を考えたら無人機と言う劇中での選択は分かるのだが『トリガー』の「怒る饗宴」や今回の話を見たら作品として考えたら有人機の方がやはり盛り上がる事が分かった。
なので、『デッカー』ではスフィアの設定を使ってGUTS-SELECTの戦力を無人機から有人機に切り替えたのは良い判断だったと思う。

 

GUTSファルコンが撃墜され、デッカーもカナタの負傷を引きずって苦戦する中、新戦力のGUTSホークが現れてデスドラゴの角を破壊する。
カナタ達がまだGUTS-SELECTの隊員ではない今回の話だからこそGUTS-SELECTの新戦力をサプライズで出す事が出来た。

 

ディメンションカード怪獣はウルトラマンが使うもので『セブン』のカプセル怪獣に近いのだが、カプセル怪獣と違ってウルトラマンに変身した後に使う事が殆どだった為、ウルトラマンは接近戦も遠距離戦も出来るしパワーもスピードもある上にデッカーはタイプチェンジでパワー特化や特殊能力特化に変われるとディメンションカード怪獣を戦いに加える意味があまり無くて使い勝手がイマイチ悪かったのが残念だった。
属性を付けてデッカーが氷を使う隣でミクラスが炎を使うとか、味方怪獣として定着しているミクラス達ではなくて意外な怪獣を味方にするとか、『メビウス』のマケット怪獣のようにデッカーではなくてGUTS-SELECTが使うとか、もう少し活躍出来る設定にしてほしかった。

 

カナタ達は総員退避の命令を無視して人々の避難誘導等を行っていて、これが決め手となってムラホシ校長はカナタ達をGUTS-SELECTに入隊させる事を決める。
それは良いのだが、他の訓練生に明確な落ち度が描かれていないので、成績上位だったリュウモンとイチカはともかく成績が最下位だったカナタがGUTS-SELECTに選ばれた理由はちゃんと説明しないと他の訓練生からの反発が起きそう。