帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「人と怪獣」

「人と怪獣」
ウルトラマンデッカー』第10話
2022年9月17日放送(第10話)
脚本 根元歳三
監督 越知靖

 

海獣キングゲスラ
身長 68m
体重 2万1千t
街に現れて暴れるがネオメガスに口に光線を撃ち込まれて倒された。

 

新創獣ネオメガス
身長 60m
体重 2万5千t
街に現れたサドラとキングゲスラを倒した謎の怪獣。その正体はシゲナガ博士が発見した怪獣に他の怪獣の細胞を掛け合わせて作り出された新しい生命だった。
カイザキ副隊長が制御装置であるシゲナガ博士のペンダントを破壊した事でコントロールから外れるが、ペンダントが拘束装置でもあった為に暴走してしまう。
圧倒的な力でデッカーを追いつめるがGUTSホークの援護を受けたデッカー・ストロングタイプのドルネイドブレイカーで爆破され、一部の細胞が残った。
『Z』の「叫ぶ命」のグルジオライデンの着ぐるみを改造している。

 

物語
街で暴れる怪獣を倒す謎の新怪獣が現れた。
調査を続けるGUTS-SELECTはかつて怪獣研究室の室長を務めていたシゲナガ博士へと辿り着く。
シゲナガ博士が主張する人と怪獣の関係とは?

 

感想
カイザキ副隊長の主役回。
カイザキ副隊長は怪獣の生態に詳しい。過去の作品でこういう怪獣に詳しい隊員は『メビウス』のテッペイや『大怪獣バトル』のオキのようにオタク的なキャラ付けがされていたが、カイザキ副隊長は住んでいた街に怪獣が現れて多大な被害が出たので怪獣について色々と調べるようになり、怪獣が必ずしも悪いわけではなくて人間の開発や環境破壊が原因で暴れ出すものもいた事を知ったとなっている。
学者と言えば自分の研究にのめり込むオタク的な一面が取り上げられる事があるがカイザキ副隊長は怪獣が出るようになった世界で怪獣に関する知識を身に付けていく事で人間社会をより良い方向に持っていこうとする知識人的なところが強い。

 

怪獣の出現に人間の開発が関わっている事を知ったカナタは悪いのは人間の方なのかと尋ねるがカイザキ副隊長は「必要な、仕方の無い開発もある」「どっちが正義だとかどっちが悪だとかそう簡単に割り切れる問題じゃない」と答える。
ケンゴとの会話からカナタは自分の戦いの先に何があるのか考えるようになったが今回はちょっと答えを急ぎすぎているところが見られた。ここでカイザキ副隊長が簡単に答えを出せる問題ではないとじっくり考えるタイプだったのはカナタにとって幸運だったかもしれない。過去の作品を見ていると答えを急ぎすぎた為に大きな失敗を犯してしまう人物がたくさんいたので。

 

謎の怪獣の正体を探る為にTPUとGUTS-SELECTは怪獣が現れた場所の調査を行う。
描かれていないだけでどの作品でも怪獣が現れる度にこういう地道な調査・処理活動をしているんだろうなぁ。

 

カイザキ副隊長の恩師であるシゲナガ・マキは怪獣研究の第一人者で怪獣研究室の室長であったが5年前にクローン技術を使って怪獣を生み出して脳にコントロールシステムを埋め込んで制御する事で怪獣兵器を生み出そうとして室長の任を解かれたとの事。
『ティガ』で似た事をやって事件が起きているのでシズマ会長が認めなかったのも分かる。『ダイナ』のゴンドウ参謀だったら認めてくれそうだが。

 

強力な兵器なので一時は開発が凍結されていた新兵器DG001が完成したらしく近々稼働実験が行われると言う話題が出る。
怪獣事件を解決するには強大な兵器が必要と言うのは実はシゲナガ博士の主張に通じるものがある。シズマ会長はハト派時代の情報局出身なのでそう言った計画はあまり認めていなかったようだがスフィアの襲来でそうも言っていられなくなったのかもしれない。

 

今回の話は『ダイナ』の「激闘! 怪獣島」のオマージュ回となっているが、自分の研究を止めたカイザキ副隊長へのシゲナガ博士の個人的な恨みが強いので「激闘! 怪獣島」の続編である「青春の光と影」の要素も強い。

 

TPUの他にもスフィアや怪獣に対抗できる力を欲している国や企業がいてシゲナガ博士の研究に援助をしているとの事。この辺りは『マックス』の「地底からの挑戦」を思わせる。
『ティガ』『ダイナ』ではTPCがかなり強大な組織になっているのでその組織の中の対立が多かったのだが、『トリガー』『デッカー』のTPUはシズマ会長個人の力が強いからかTPCに比べて組織の強大さは無くてTPU以外の組織がそれぞれ大きな計画を進めるようになってきた。

 

怪獣をコントロールする人物は過去にもいたが怪獣の手に乗る人物はいなかったかな。怪獣のコントロールが完璧なのが分かる場面だったし、その後のデッカーの手に乗るカイザキ副隊長との対峙も緊迫感を高める良いシチュエーションであった。

 

ニュージェネレーションシリーズに登場する地球人は過去のシリーズに比べてぶっ飛んだ考えをする人は少なかった印象があったのだがシゲナガ博士は怪獣を改造するわコントロールするわ国や企業から資金を得た上に切り捨てる気満々だわ人に向けて銃を向けるわウルトラマンの抹殺を掲げるわとウルトラシリーズでも上位のぶっ飛んだキャラでインパクトが大きかった。

 

ネオメガスが正面からデッカーを押し切るところは強さが分かりやすくて見ていて盛り上がった。
それに対抗してGUTSホークが翼代わりになったデッカーも問答無用でパワーアップした事が分かる展開で見ていて燃えた!
ウルトラマンと特別チームのメカが合体するのはあまり無いが、ウルトラマン+メカと言う絵が格好良いしウルトラマンと人間が力を合わせて戦うテーマに合っているしと今後も増やしていってほしい展開だった。

 

シゲナガ博士は怪獣との戦いは人間が怪獣を滅ぼすか支配するかしないと永遠に終わらないと言っていたが、『ガイア』の終盤の話を見ていると実はそれって「血を吐きながら続ける終わらないマラソン」の始まりだよなぁと思ってしまう。
だが、『Q』から『メビウス』まで舞台だった地球は『大怪獣バトル』の頃になると怪獣が全滅して人類が発展していたし、『トリガー』『デッカー』の地球では超古代人が怪獣を使役していたっぽい描写もあるので、シゲナガ博士の考えは完全に間違っているとは言い切れないところがある。

 

『ティガ』の「うたかたの…」は「怪獣と人間が衝突しないようにする」と言うレナ達と「出現した怪獣は倒さなくてはいけない」と言うシンジョウ達の議論が噛み合っていなかったが今回の話もカイザキ副隊長とシゲナガ博士で議論が噛み合っていないところがあった。
カイザキ副隊長は「人間が犠牲にならないようにする」が第一なので、怪獣を研究して暴れるのを防げるのならそうするし、怪獣兵器が人間に向けられる可能性があったらそれを危険視する。一方のシゲナガ博士は「怪獣を滅ぼす」が第一なので、怪獣兵器が完成して野生の怪獣が全て滅ぼされるのならその後に人間が怪獣兵器を使って人間を攻撃する可能性は無視できる。

 

ちょっと思ったのだが、カナタが使うディメンションカード怪獣ってシゲナガ博士が主張する「怪獣を人間の思い通りに動かして戦いに使う」を実現させたものなんだよな。
ディメンションカード怪獣は『デッカー』の後半になると使われなくなるが、今回のシゲナガ博士の主張を聞いたカナタがディメンションカード怪獣の扱い方を考えて、そこからこの戦いの先に人と怪獣はどのような関係でいれば良いのかと言うところまで考えるようになるのもアリだったんじゃないかなと思う。全体的にディメンションカード怪獣は扱い切れていなくて勿体ないところがあった。