帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「カオスの敵」

「カオスの敵 ーマザルガス登場ー
ウルトラマンコスモス』第51話
2002年7月20日放送(第50話)
脚本 梶研吾
監督 根本実樹
特技監督 佐川和夫

 

天敵怪獣マザルガス
身長 58m
体重 7万5千t
体内にカオスヘッダーを分解・消化する酵素「カオスキメラ」を持つカオスヘッダーの天敵。餌であるカオスヘッダーを追って地球にやって来た。
頭部の口からカオスヘッダーを始めとする色々なエネルギーを食し、逆に爆発する光弾を撃つ事も出来る。
ダビデス909によって体内のカオスキメラが破壊された事で今まで食していたカオスヘッダーに乗っ取られてしまった。その後、エクリプスモードのエクリプスブレードでカオスヘッダーと切り離されるがそのまま死亡してしまう。

 

カオスマザルガス
身長 60m
体重 7万5千t
ダビデス909によって体内のカオスキメラを破壊されたマザルガスをカオスヘッダーが乗っ取った姿。
強力になった光弾や長い尻尾で相手を攻撃する。
エクリプスモードのエクリプスブレードでマザルガスと切り離されたカオスヘッダーはそのままコズミューム光線で消滅させられた。

 

物語
怪獣マザルガスの体内にカオスヘッダーを撃退できる「カオスキメラ」が存在する事を知ったEYESは防衛軍にマザルガスへの攻撃を控えてほしいと頼むが……。

 

感想
杉浦太陽さんの逮捕騒動で中断していた放送が再開された話。初回放送では番組冒頭でムサシが無事に帰還できた事を視聴者に告げる場面があった。

 

今回は今まで怪獣の事を思って保護活動を続けてきたEYESがカオスヘッダーの撃退に必要だからと言う人類の都合でマザルガスの保護を進めると言うこれまでの形を大きく崩す事になった話で、このEYESの姿勢のブレは最終7部作へと繋がっていく事になる。

 

今までは「人類にとって怪獣は有害なので排除するが危険を抑えられるのなら保護も選択肢に入れる」となっていたが今回は「マザルガスはカオスヘッダーを撃退して人類を救う為に必要不可欠な存在なので必ず保護しなくてはいけない」となっている。
この自分達にとって有益だから保護すると言う人類の身勝手さは「宇宙の雪」でも示されている。

 

カオスヘッダーを食べてしまったマザルガス。分析の結果、マザルガスは体内にカオスヘッダーを分解・消化する酵素「カオスキメラ」を持っている事が判明する。
怪獣にとって天敵とも言えるカオスヘッダーを餌にする天敵とも言うべき怪獣が出てくるとは思わなかった。『テレビマガジン特別編集 ウルトラマンコスモス』に書いてあったが、カオスヘッダーですら食物連鎖と言う自然界の掟からは逃れられなかったと言うのが面白い。『T』の「ウルトラの母は太陽のように」でもヤプールが作った生物兵器である超獣を食べてしまう怪獣が現れたが生命って本当に凄い。
ところでコスモスの力ならカオスヘッダーを消滅させる事が出来るのだが、防衛軍含めて誰もコスモスの能力を分析して活用しようとしなかったのは意外。(ドイガキ隊員はコスモスの能力を分析したが活用はしなかった)

 

防衛軍との会議でヒウラキャップはカオスヘッダーを撃退する事も可能となるカオスキメラの重要性を訴え、今回に限っては多少の被害が出てもマザルガスを攻撃しないでほしいと頼む。
それを聞いた西条武官はカオスキメラの重要性は分かったが目の前の脅威を取り除くのが防衛軍の任務で被害が出ているのを手をこまねいて見ていられないと反論するが、佐原司令官は被害を最小限に食い止める事を条件にヒウラキャップの要請を受け入れる。
カオスキメラを手に入れる事が出来たらカオスヘッダーによる被害を未然に防ぐ事が出来るが、その為に多少の犠牲は止むを得ないとするのはこれまでのEYESと比べるとかなりの方針転換。この「非常時だから仕方が無い」と言う考えは最終7部作に入るとさらに加速していく事になる。

 

怪獣の細胞一つ一つの核を破壊して細胞レベルから死に至らしめると言う防衛軍が開発した凶悪な怪獣殲滅兵器ダビデス909。
開発者のハズミ主任によると怪獣の免疫細胞を研究している時にたまたま生まれた副産物だったが、西条武官が目を付けて研究を繰り返させて恐ろしい破壊力を持つに至ったらしい。このところ防衛軍は敗戦続きだったので事態を打開する為により強力な兵器を求めたのかもしれない。
EYESはダビデス909の開発を批判しているが、そう言うEYESのカオスヘッダーに対する新兵器開発も似たようなもの。EYESがカオスヘッダーだけを敵としているのに対して防衛軍はカオスヘッダーだけでなく怪獣も敵としていると両者の違いは倒すべき敵の範囲を何処に設置しているかだけとなってしまった。

 

ハズミ主任は大学時代にヒウラキャップと科学を人類の為に有効利用しようと誓い合った仲であった。その為、自分が開発したダビデス909でマザルガスが倒されて人類の希望であるカオスキメラが失われてしまう事が耐えられないとしてヒウラキャップに情報を流してダビデス909の発射を自分を犠牲にしてでも止めようとした。
間違っていると感じても組織の中では発言できずに流されてしまう事がある。ハズミ主任は今まで流されていた自分の罪を償う為に色々と無茶をして最後は防衛軍を離れる事になる。
立派な行動と言いたいところだが、ダビデス909が発射されなくてマザルガスに弾薬倉庫が破壊されていたら甚大な被害が出ていたと考えると、ちょっと冷静に状況を見る事が出来なくなっていたのかなと感じる。ダビデス909の発射を止める時のシチュエーションがもう少し違っていたらなぁと思う。

 

コスモスが助けたかった怪獣を死なせてしまった展開は「強さと力」「操り怪獣」に続いて今回で三回目。最初のエリガルの時はただ茫然とするだけだったコスモスがマザルガスの時には粛々と亡骸を宇宙に還すのに経験の積み重ねによる成長が見て取れる。(自分の手で奪ってしまった命と他人の手で奪われた命と言う違いもあるだろうが)

 

マザルガスが死んでヒウラキャップはカオスヘッダーに対抗できるかもしれない人類の希望であるカオスキメラを失った事に怒りを露にして西条武官を殴り飛ばしてしまう。
間違ってはいないが、コスモスが現れなかったら弾薬倉庫が破壊されて甚大な被害が出ていた事を考えると西条武官を一方的に責めるのはどうかなと思う。又、人類の希望であるカオスキメラを失った事を悔やむがマザルガスを死なせてしまった事には何も触れていないのもこれまでの話での言動を考えたら疑問を感じてしまうものであった。
ハズミ主任は開発者の責務としてダビデス909を完全に解体して防衛軍を離れるが、後にSRCに参加してカオスキメラの開発を進める事になる。上にも書いているが、やっている事に変わりは無い。
人間は人間を中心にした考え方を捨てる事は出来ないと言うのが『コスモス』の根底にあるが、それを憎まれ役である防衛軍でするのではなく、主人公側であるヒウラキャップでするのはかなりの賭けだったと思う。だが、これが最終7部作を展開する上で非常に重要な意味を持つ事になる。
因みにムサシはカオスキメラの為にマザルガスを保護しようとは言わず、いつもどおり怪獣や人々に被害を出さない為に頑張っていた。EYESの主張がブレてもムサシの主張はブレなかったわけだが、この両者のズレも最終7部作に繋がっていく事になる。