帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

『ウルトラマンコスモス2 THE BLUE PLANET ムサシ(13歳)少年編』

ウルトラマンコスモス2 THE BLUE PLANET ムサシ(13歳)少年編』
2002年9月7日公開

 

ネイチュア宇宙人ギャシー星人
身長 157cm
体重 40kg
夢と輝石を見失った少年ムサシの前に現れて、時間の流れを超越した場所から10年後の未来を見せる。未来の出来事を通して少年ムサシが夢を取り戻したのを確認すると姿を消した。
今回のシャウは髪を下ろしていて少し大人っぽい雰囲気になっていた。

 

物語
木星探査船の事故を受けてアストロノーツ養成学校閉鎖の話が出る。
宇宙への夢の扉が閉ざされた少年ムサシはかつてコスモスと出会ったあの森へと向かう。

 

感想
主人公のムサシを演じていた杉浦太陽さんの逮捕を受けて『THE BLUE PLANET』はムサシを外した再編集がされて公開される事になり、杉浦さんに代わって『THE FIRST CONTACT』でムサシを演じた東海孝之助さんが出演する事となった。当時、代役として考えられる最善の人選だったと思う。
後に杉浦さんが釈放された事でオリジナル版が当初の予定通り公開され、その後、本作も追加で公開される事となった。

 

本作はムサシが青年から少年に代わった事で少年ムサシが未来を垣間見る話に変わっている。
青年ムサシが遊星ジュランでスコーピスに遭遇する場面は少年ムサシが見た夢(予知夢?)になっている。本作は「テックブースター出動せよ(前編)」「テックブースター出動せよ(後編)」以前の話なので遊星ジュランの名前がM42第一惑星になり、少年ムサシはパラスタンの存在を知らない。

 

世界初の木星探査船事故を受けてアストロノーツ養成学校閉鎖の話が出るが、この宇宙開発無期限延期には7年前にムサシの父・五十畑浩康が死亡した事故の影響もあるらしい。父の影響で始まった宇宙への夢が父の死の影響で閉ざされようとしているのが辛い。(でも五十畑博士が亡くなったのは1993年で10年前になるんだよな……)

 

今回の舞台は2003年で前年に父・勇次郎の転勤でムサシはKニュータウンから都会に引っ越したとなっている。
星も見えない夜空を見上げて呟く少年ムサシ。
「なんだか急に目の前が暗くなっちゃってさ。ちょうど、高層ビルに囲まれたこの都会の空みたいに……」。
そんな少年ムサシを母・みち子が諭す。
「辛い気持ちは分かる……。でも……星の光が見えなくても、心の中の光だけは消さないでほしいなぁ。コスモスから貰った光。それだけは消さないで……」。
その言葉を聞いた少年ムサシは閉ざされた未来への扉を開ける為、9月15日、コスモスと出会った記念日にあの思い出の森へと旅立つのだった。
「僕は母さんの言葉を聞いて無性に星が見たくなった。突然、扉を閉めてしまった僕の未来。星の光だけがその扉を開けてくれる。そう信じて、僕はあの場所に向かった。天候は最悪だったけれど、そこに行けばきっと星が見える。そこに行けばきっと何かが変わる。そんな気がした……。マリやツトム、ショージ達と遊んだあの思い出の砦へ。ウルトラマンと会ったあの場所へ……」。
今回のムサシの悩みは宇宙開発の無期限延期だけでなく引っ越しも影響があると思う。こうして見ると「ともだち」の堀村はかつてのムサシに近かったのかな。

 

THE FINAL BATTLE』のパンフレットでは『THE BLUE PLANET』は2012年で本作は2003年となっている。シャウは少年ムサシに「10年後に出会っている」と言っているが正確には9年後の再会と言う事になる。
まぁ、ここは約10年と考えれば良いので別に気にしなくてもいいところだが、実はツトムから青年ムサシに届けられた結婚式の招待状には「2010年11月6日」と書かれている。『THE BLUE PLANET』が2010年で本作をそこから10年前の2000年とすれば、7年前の1993年に五十畑博士が事故で死亡するのも辻褄は合うのだが今度は『THE FIRST CONTACT』の2001年がおかしくなってしまう。本作の少年ムサシは13歳で『THE FIRST CONTACT』では11歳だったので『THE FIRST CONTACT』を1999年にすれば何とか辻褄は合うかな。これもどこか他の話で新たな矛盾が生じてしまいそうだが……。
当初は『コスモス』のTVシリーズが6月に終了した後に『THE BLUE PLANET』が公開される予定だったらしいのでTVシリーズの放送期間の延長や逮捕騒動等で色々とズレが生じてしまったのかもしれない。

 

ロケット砦に到着した少年ムサシはコスモスと初めて出会った夜と同じように星を見る準備を始め、そこにムサシの母親から連絡を受けたマリが励ましにやって来る。
マリ「誰だって壁にぶつかる時はある。でも信じればいつかきっと夢は叶うって! ファイトファイト!」、
ムサシ「簡単に言うなよ! 詳しい事情も知らないくせに偉そうに言うなよ!」。
少年ムサシはマリの励ましを拒絶してしまい、マリはそんな少年ムサシに失望して怒って帰ってしまう。
マリが少年ムサシにかけた励ましの言葉は後に夢を見失ったジーンにもかけられる事になる。この場面によって「夢を見失った者」としてムサシ=ジーンの構図がオリジナル版以上に分かりやすくなった。

 

マリと別れた後、やり場の無い苛立ちをぶちまける少年ムサシは誤って輝石を池に落として見失ってしまう。どれだけ探しても見付からない輝石に少年ムサシが諦めかけるとどこからか声が投げかけられる。
「諦めないで……。輝石はきっと見付かるわ。ムサシがもう一度夢を信じられれば……」。
オリジナル版では青年ムサシに感化されていったシャウが本作では少年ムサシを導く役になっているのが面白い。
今回のシャウはオリジナル版より落ち着いていて大人っぽい雰囲気となっている。因みに本作に出演している東海孝之助さん、斉藤麻衣さん、宇野あゆみさんの3人の中では斉藤さんが一番若かったりする。

 

少年ムサシを時間の流れを超越した世界へ連れていくシャウ。こんな能力があるとは驚き。オリジナル版では見せていないのでサンドロスとの戦いが終わった後に身に付けた能力だろうか、それともサンドロスの追撃から逃れる時に使用していた超時空航法が絡んでいるのだろうか……?
この時空間に干渉できる能力は『THE FINAL BATTLE』でムサシの救出に関わる事となる。

 

役者繋がりで今回のシャウは『超時空の大決戦』の七瀬リサを思い出すところがある。
そう言えば少年ムサシが見る未来の物語は佐々木勉の結婚式の招待状から始まるが『超時空の大決戦』の主役の名前は新星勉だったりする。

 

未来の自分自身を見る事は出来ないとして青年ムサシの登場は無し。
皆と楽しそうにはしゃぐ大人になった自分を楽しそうに見る少年ムサシ。これはオリジナル版で海の中から青年ムサシ達を見ていたシャウに繋がる。

 

TEAM SEAはオリジナル版では各隊員の人物紹介が無かったのだが本作ではあって、ヒュウガ隊員はオペレーター担当、カノウ隊員はアナライズ担当で海洋生物学が専門、マカベ隊員はデータリング担当、キド隊長はTEAM SEAの頭脳と紹介されている。

 

スコーピスに倒されるレイジャを見た少年ムサシはコスモスに来てくれるよう望むが現れたのは幻のファントムコスモスだった。
少年ムサシは未来の事情を知らないのでコスモスが地球にはいないと考えるのは理解できる。(遊星ジュランでの戦いはシャウに見せられた未来ではなく少年ムサシが見た「夢」と言う扱いになっている)
THE FIRST CONTACT』ではコスモスの登場を望んでもムサシが本当の勇気を手に入れていなかったら現れないと言う展開があったので、ファントムコスモスはその展開を継いでいるように見える。

 

K2電波シールドの完成にはジーンの協力が必要不可欠で、青年ムサシは故郷を失って固く閉ざされてしまったジーンの心を開こうとする。
ここでは青年ムサシだけでなく時空間を超えて少年ムサシの声もジーンに届いているような感じがした。
青年ムサシの顔を出せないので、ジーンに向けてラウンダーショットを構えるが葛藤の末に降ろす場面ではラウンダーショットがアップになっている。結果としてこの演出によってオリジナル版以上に「力で相手を抑え込むのではなく、相手を信じようとする」と言うテーマが強調される事となった。

 

スコーピスとの戦いでEYESが現れたのを見た少年ムサシはなぜ怪獣保護チームが戦闘に参加するのか不思議に思い、それに対してシャウは「彼らは……大切な仲間の為に来たの。未来の……あなたの為に」と説明する。
少年ムサシは夢に向かっている未来の自分、そんな未来の自分の仲間達を知り、やがて自分自身の夢を取り戻していく。
ただ、細かい部分をツッコませてもらうと、EYESの結成は2006年なので少年ムサシがEYESの存在を知っているのはおかしかったりする。

 

スコーピスによって破壊される街で青年ムサシは一人の少年と出会う。
「あの子は前のムサシと同じ……。初めてコスモスと出会った時の……あなたと……」と言うシャウの話を聞いた少年ムサシは「ウルトラマンコスモス、来てくれるんよね?」と言う少年の言葉に『THE FIRST CONTACT』でのコスモスとの出会いを思い出し、「うん! きっと来てくれる!」と力強く答える。
オリジナル版では唐突に出た感じがあった北九州の少年を『THE FIRST CONTACT』の時のムサシと重ねたのが上手かった。因みにこの少年役のくぼかんじさんはTVシリーズでも「カオスを倒す力」でかつてのムサシと重ねられる役を担当している。

 

ジーンと一体化したレイジャが倒されたのを見て少年ムサシは叫ぶ。
「なぜ夢を奪うんだ! お前達にそんな資格があるのか! 僕に力を! 皆を守る力を! もう一度、僕に! コスモース!!」。
見失ったはずの輝石がムサシの手の中で光り輝く。それを見たシャウは自分の役目は果たしたと感じたのか満足な笑みを浮かべて姿を消す。
少年ムサシの変身ポーズは『THE FIRST CONTACT』を踏まえた形となっている。コスモスを呼び出した『THE FIRST CONTACT』と違って今回は少年ムサシがコスモスと一体化している。コスモスに憧れていた少年ムサシがコスモスと一体化し、それを北九州の少年が応援すると言う構図が見事であった。
今回は時空間を超えて過去と未来のムサシが一体化したとも考えられるようになっていて、歴代ウルトラマンの変身の中でも色々考えさせられるものとなった。

 

コスモスに変身した少年ムサシはジャスティスと力を合わせてサンドロスを倒して未来に光を取り戻す。
本作では少年ムサシの視点に絞られて物語が展開されているのでオリジナル版以上にジャスティスの登場が唐突で不必要なものとなってしまった。

 

破壊されたサイパンをコスモスが直すのも少年ムサシの見た夢と解釈すれば納得できるかな?

 

翌朝、目を覚ました少年ムサシは全て夢だったのかと思うが一度見失ったはずの輝石を手に持っているのを見て「夢?……じゃなかったんだ」と呟く。
笑顔でやって来るマリに少年ムサシは昨夜の事を謝る。
シャウに関しての記憶は曖昧になっていたがツトムの結婚式やマリの恋愛は覚えていたらしく楽しそうに夢の中で見た未来の話をする。
マリ「またウルトラマンの夢見てたんでしょう?」、
ムサシ「夢? うん! 目一杯見ている!」。
そんなムサシとマリを見送るシャウ。
シャウ「ムサシ、夢を信じる強さを忘れなければ……必ず会える。遠くない未来に……」。

 

本作は緊急事態による主人公差し替えだったのでオリジナル版を見ていなかったら分かり難い話になってしまっているところはある。
だが、オリジナル版の後に本作を見れば、少年ムサシの視点に絞った事でテーマが明確になって説明不足だった部分のフォローもされている。又、オリジナル版では違和感を覚えるサンドロスとスコーピスを絶対悪として躊躇無く倒してしまう展開もこの時点ではムサシはまだカオスヘッダーとの和解と言う考えに至っていないので悪に対して単純な怒りを見せても矛盾は無い。『THE FIRST CONTACT』との繋がりも活かされていて、あの状況でよくここまでのドラマを作り出せたなと感心するしかない。正直言うと、テーマと言う点ではオリジナル版よりまとまっていた気がする。