「ウルトラの星から飛んで来た女戦士」
『ウルトラマン80』制作第43話
1981年2月4日放送(第43話)
脚本 水沢又三郎
監督 湯浅憲明
特撮監督 神澤信一
ユリアン(星涼子)
ウルトラの星の王女。
ウルトラの星侵略に失敗したガルタン大王が80を狙って地球に向かっている事を知らせにやって来るが、ガラガラ星人に宇宙船を破壊されて墜落し、ショックで記憶喪失になって猛の名前以外全てを忘れてしまった。
常に地球人の姿をしている。「星涼子」はオオヤマキャップが仮に付けた名前。
凄まじい回復力と運動神経を持つ。テレパシーを使う。相手の変身を解除させる事が出来る。
優しくしてくれた城野隊員に友情の証としてブライトブレスレットを送るが、これが原因で城野隊員はガラガラ星人に捕らわれる事になった。
再びガラガラ星人に襲われる事で記憶を取り戻した。
瀕死の重傷を負った城野隊員を救おうとするが救えず、城野隊員の遺言を受けて、80を助ける為にUGMの隊員となる。
侵略星人ガルタン大王
身長 2m~60m
体重 120kg~3万2千t
宇宙の遊牧民と言われているガラガラ星人の支配者。
ウルトラの星侵略を企むが返り討ちに遭って王子を失い、復讐の為に地球にいる80を狙って来た。
部下のガラガラ星人は変身能力や瞬間移動を駆使してユリアンを捕らえて80を誘き寄せようとするが間違えて城野隊員を捕らえてしまう。その後、猛を殺そうとするも城野隊員に妨害され、最後は猛に全員倒された。
ガルタン大王は巨大化して80と対決。手にした剣は光線を発し、地面に突き刺すと地表を電撃が走る。しかし、80のウルトラダブルアローで剣を折られ、最後はサクシウム光線で倒された。
ガラガラ星人はガラガラヘビのような声を発する事で有名らしくUGMにもその存在を知られていた。
「タイムトンネルの影武者たち」に登場したアクゾーンもだったが、戦闘員を持つ敵はウルトラシリーズと言うより東映のヒーロー作品にイメージが近くなる。
ガラガラ星人は「裏切ったアンドロイドの星」のファンタス星人のマスクを改造している。
物語
謎の宇宙船が攻撃を受けて墜落。テレパシーで自分を呼ぶ声を聞いた猛は謎の女性と出会う。
記憶を失っていた女性の正体はウルトラの星の王女ユリアンだった!
感想
いよいよ『80』もクライマックス突入のユリアン編。
冒頭、猛は謎の宇宙船がウルトラの星の物である事を見抜く。
どうやらウルトラマンにもそれぞれ能力のバラつきがあるようで、ユリアンは初代マンやゾフィのように赤い玉に変身する事は出来ないようだ。
猛は宇宙船に対する反応で城野隊員に「矢的隊員。あの宇宙船がどこから来たのか知っているみたいね」と指摘され、その後も「矢的隊員。あなたは時々宇宙人みたいな事を言うのね」と厳しい追及を受けてしまう。
高価な宝石を身に着けている事からどこかの王女ではないかとUGMに思われたユリアン。実際に彼女はウルトラの星の王女だった。ウルトラの星に王家が存在していたとは驚き。因みにウルトラの父と母とタロウは王家ではなく、キングも王家の者と言う説明は特に無い。(因みにレオとアストラはL77星の王子だったと言う設定がある)
ユリアンが身に着けていた宝石類は実はブライトブレスレットと言って本来の姿に戻る為の物で、イヤリングも無くなったブライトブレスレットの探す為の物だった。
「とりあえず……、星涼子」。
記憶喪失状態であるユリアン(地球人形態)にオオヤマキャップが付けた仮の名前。
それにしても、こういう名前がパッと思いつくものだろうか?
あと、イトウチーフの婚約者であった星沢子に似ているのも気になる……。
次回から涼子はUGMの準隊員となるが、仮の名前のままと言う事は記憶は戻っていないと言う扱いなのかな。記憶喪失者でもUGMの隊員になれるのものなのかな? 城野隊員の遺言だから?
城野隊員はユリアンに対して凄く優しい。こんなに世話焼きだったっけ?
ユリアンは友情の証として城野隊員にブライトブレスレットを送るが、これが原因で城野隊員はユリアンと間違えられてガラガラ星人に捕らえられてしまう。
ウルトラの星侵略を企むが返り討ちに遭い王子も失ってしまったガルタン大王。相手が悪すぎる……。
復讐の為に地球にいる80を狙って来たらしいが、それって腹いせに一番弱い奴を狙ったと言う事?
部下のガラガラ星人はユリアンと間違えて城野隊員を捕らえてしまう。
テレパシーでも使えば城野隊員がユリアンかどうか分かるだろうに……。それとも使えないのか?
ガラガラ星人は80の居場所を吐かせようと捕らえた城野隊員を鞭でひっぱたく。鞭って、えらく原始的な手を……。もしかして、本当にテレパシーとか使えないのか?
こんなのでウルトラの星を侵略できるわけないでしょ……。
再びガラガラ星人に襲われる事でユリアンは記憶を取り戻す。
猛はユリアンに「僕がウルトラの星から地球に来た時、君はまだちっちゃな女の子だったからなぁ」と語る。
ちょちょちょちょちょっと待って!
千年万年単位で生きているウルトラマンで、現在は地球人で20歳前後に見えるユリアンが猛が気付かないほどちっちゃかったって、80は何千年前に地球に来たんだ?
まず一つ目の仮説。
ウルトラマンは様々な姿に変身する事が出来るので、80がウルトラの星から地球に旅立つ時のユリアンは今の姿と違ってちっちゃな女の子の姿に変身していた。
実際、『ネオス』のセブン21は毎回違う人物に変身していて相棒のネオスでさえその正体に気付かない時があった。
ただこの場合、猛は「まだちっちゃな女の子だった」ではなく「前回会った時はちっちゃな女の子の姿をしていた」と言うべきなので、イマイチかな。
続いて二つ目の仮説。
実はユリアンは過去に地球に来ていて、その時にある女の子(色々な問題を避ける為、この女の子は孤児で、ユリアンが発見した時、女の子は既に死んでいたとする)と合体していた。
ウルトラマンと合体しても地球人の肉体は普通に年をとっていくと考えたら、現在のユリアンは20歳前後に見えるので、「まだちっちゃな女の子だった」と言う台詞から、80がウルトラの星から地球に旅立つ時のユリアンが小学生くらいだったら辻褄が合うかな。これなら80が現在から8年くらい前に地球に来ていれば問題は解決する。
とは言え、『80』第1話から今回の話までに劇中で8年も経ったとは考えにくい。そこで実は80は『80』第1話の直前に地球に来ていたのではなくて『レオ』最終回の直後に地球に来ていたと考えてみる。
ウルトラマン達は地球の平和は地球人自身の手で守っていくべきだと考えているが、あれだけ続けてウルトラマン達が地球に来ていたのに、いきなり5年間も誰も来なくなるとは考えにくい。
おそらく80は『レオ』の最終回でおおとりゲンが旅立った直後に地球に来ていたのだろう。しかし5年に亘って怪獣が現れなかったので80が姿を現して戦う機会も無かった。
又、ウルトラシリーズは1年間の放送でも劇中では1年以上時間が経過している事がある。特に『80』は「5年間怪獣が現れなかった」と言う設定なので、実際の時間経過をそのまま劇中に当てはめると色々と矛盾が生じてしまう。おそらく『80』第1話から今回の話までに劇中では3年ほど経過しているのではないだろうか。
これなら「5年+3年」で80が地球に来たのは約8年前となって問題は解決する。(ぶっちゃけて言うと、『80』は時間関係の設定が杜撰すぎる)
因みに80は8000歳で、ユリアンは7800歳との事。思った以上に二人の年齢は近かった。
ユリアンはUGMで検査を受けているが宇宙人とはバレなかったようだ。
『セブン』の「史上最大の侵略 前編」「史上最大の侵略 後編」では検査を受けると自分が地球人でない事がバレてしまうとしてモロボシ・ダンが逃走すると言う話があり、「星から来た少年」では猛の血液は地球人とは違うと言う話があった。
モロボシ・ダンも猛もウルトラマンが地球人に変身しているタイプだが、もし仮にユリアンが地球人の体を使っているタイプだとしたら、検査を受けても体は地球人なので正体がバレなかったと考えられる。ユリアンは凄まじい回復力や運動神経や超能力を持っているが、それは『帰マン』の郷秀樹のようにウルトラマンが合体しているので地球人の体に特殊能力が宿ったのだろう。(検査の報告を持ってきたのがオオヤマキャップとイトウチーフだったので、ユリアンの正体が分かっても、あえて黙っていたと言う考え方も出来るが)
ユリアンの凄まじい運動神経に城野隊員やイケダ隊員は驚く。
今まで猛は地球人の姿でもウルトラマンとしての特殊能力を使う事が多かったが、ユリアンの行動を見て、それではいけないと思ったのか、今回からは地球人でいる時は出来るだけ地球人の力で状況を打破しようとするようになる。(「怖れていたバルタン星人の動物園作戦」でも少し見られたが)
ガラガラ星人が張った鉄条網を飛び越える時もユリアンのように超飛躍を使わないで棒高跳びと言う地球人でも出来る方法を使っている。(もっとも、イケダ隊員は失敗してしまうが……)
ガルタン大王に捕らえられた城野隊員を助けに向かう猛。その為、遂に城野隊員に猛が80である事がバレてしまう。そしてガラガラ星人の攻撃から猛を庇って重傷を負ってしまう城野隊員。その後、猛と城野隊員はお互いを「矢的隊員」「城野隊員」ではなく「猛」「エミ」と呼び捨てで呼び合う。
80はガルタン大王を倒したが、エミはユリアンがあらゆる手を尽くしても駄目だった。
「ありがとう、猛……」、
「隠していて悪かった……。僕がウルトラマン80なんだ」、
「そんな感じがしていたわ……」、
「エミ、君は俺の為に……!」、
「あなたは……地球にとって大切な人なのよ……。あなたには……これからも地球の為に戦ってほしい人なのよ……。だから……、だから……、だから私、少しも後悔なんてしていないわ……」、
「エミ……」、
「涼子さん……。お願いがあるの……。私の代わりにUGMの隊員になって矢的隊員を助けてあげて……。約束して……!」、
「私がUGMの隊員に!? ……分かったわ! 約束する!」、
「ありがとう……。猛、さようなら……」。
命を落としたヒロインは過去にも『帰マン』のアキちゃんと『レオ』の百子さんがいる。しかし、エミは最後に猛の正体に気付き、自らの意思で猛を庇って死んでいるところが前の2人とは大きく違っていた。(ところで初代マンのようにユリアンがエミと一心同体になる事は出来なかったのだろうか?)
城野隊員の死を悲しむUGMの隊員達。
特別チームのレギュラー隊員が死ぬのは『レオ』でもあったが、『レオ』と違って今回は殉職する城野隊員にスポットが当てられていた。
「城野隊員の美しい愛の行為はUGMの隊員の心にいつまでも深く深く残る事であろう」。