『ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘』
1966年12月17日公開
脚本 関沢新一
特技監督 円谷英二
監督 福田純
ゴジラシリーズの第7作。
本編監督が本多猪四郎さんから福田純さんに変わり、特撮も円谷監督は編集を担当して現場は有川監督が担当し、音楽も伊福部昭さんから佐藤勝さんに変わるなどスタッフが大幅に入れ替えられた。それに伴って作品の雰囲気も重厚でシリアスな感じから明るく軽くてコミカルな感じとなった。
これまでの東宝特撮怪獣作品の主人公達は高名な学者の関係者だったり、TVや報道の仕事に関わっていたり、警察や軍に所属していたり、そう言った仕事でなくても何らかの長を任せられていたりと「ハイソ」な人達だったのだが、今回は「青森から東京に出てきた少年」が物語の中心となっている。
その為かこれまでの作品の主人公達のようにいきなり怪獣事件に関わる事が難しく、「遭難した兄の生存をイタコから伝えられる」「上京してお上(警察)に掛け合うが廊下であしらわれる」「面白がったマスコミに拾われる」「新聞社の応接室で「耐久ラリーダンスコンクール」のポスターを手に入れる」「ダンス会場で失格になった大学生達に気に入られてヨットがある場所まで連れて行ってもらう」「たまたま金庫破りが潜んでいたヨットに乗り込む」「神様の思し召しと思って勝手にヨットを出発させる」「嵐に巻き込まれたところをエビラに襲われてレッチ島に漂流する」とかなりの段階を経てようやく怪獣事件に関わっている。
これまでの東宝特撮怪獣作品の主人公達は基本的に善の人だったのだが本作の主人公である吉村は金庫破りと言う犯罪者だった。
吉村はれっきとした犯罪者なのだが、「秘密組織が支配する南海の孤島」だと修羅場を潜り抜けてきた吉村が軟弱な若者達を奮い立たせて引っ張っていく頼りになるリーダーとなるのが面白かった。
最初は軟弱だった仁田と市野だが修羅場を潜り抜けてきた吉村と一緒にいる事で段々と肝が据わっていき、後半になると「アイデアで勝負」と言う吉村の言葉を胸に色々な作戦を考えてゴジラ復活と赤イ竹撃破を成し遂げるようになる。
この犯罪者だった吉村の更生と軟弱だった仁田と市野の成長は分かりやすくて感情移入しやすいもので良かった。
ダヨを始め数人のインファント島民は日本語を理解して喋っていた。
『三大怪獣 地球最大の決戦』では小美人が日本のテレビ番組に出演するほど良好な関係になっていたので、島民の中でも日本に興味を持って言葉を学んだ人がいたのかもしれない。
基本的に非暴力であるインファント島の島民が刀を持ち出していた事で赤イ竹がどれだけ非道な事をしていたのかが分かる。
赤イ竹の正体は劇中では明かされず謎のままとなった。
レッチ島の他に本部があるらしいのでかなり大きな組織だと思われるが、さすがに国レベルではないと思われる。そんな組織でも核兵器の実験が出来てしまう時代になったと言うのが恐ろしい。『ゴジラ』で水爆がゴジラを生み出してしまった反省が全く生かされていない。
レッチ島の赤イ竹の構成員はおそらく殆どが日本人であったと思われる。
仁田と市野のように楽しく遊んで暮らそうとする大学生がいる一方で、都会で金庫破りを繰り返す吉村や地方でイタコを信じる良太がいたり、日本を離れた南の島では密かに核兵器を開発しようとする集団がいる等、同じ日本人でも様々な人間がいる事が分かる。
東宝特撮怪獣作品は『地球防衛軍』から『ゴジラ FINAL WARS』までずっと敵基地への侵入は展開が大味と言う結構ガバガバなところがあって本作も吉村達が赤イ竹に潜入する流れは結構ツッコミどころがあった。(スタッフも分かっていたのか途中からギャグっぽくなっていた)
赤イ竹に追いつめられた市野は眠っていたゴジラを復活させようとする。
市野「奴らはこの島で密かに核兵器を作っているんだぞ。人類の平和をぶっ壊そうとしているんだ!」、
吉村「それはゴジラだって同じだ!」、
市野「違う! 少なくともゴジラは中立だ」。
そして市野は島で手に入れた刀と導線を使ってゴジラに雷を落として目覚めさせる。
「ゴジラは中立の存在だと語る」「人間で初めて自分の意思でゴジラを復活させる」と市野はゴジラシリーズの中でもかなり重要な人物となった。
『フランケンシュタイン対地底怪獣』『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』の影響か、エビラが人間を襲って食べる場面がある。
ガイラの時と違ってあまりトラウマにならなかったのは人型の怪獣かどうかが関係しているのかな?
前作に登場したキングギドラと比べるとさすがに怪獣としてのインパクトは弱くなるエビラだが、嵐の夜のゴジラとの戦いでは夜の暗闇に鋭角なデザインが映えてかなり格好良かった。戦いもゴジラシリーズで初めての本格水中戦だけあって今まで見た事が無い絵がいくつかあって刺激的だった。
他にも嵐の夜に巨大なハサミが現れて船を襲う場面はかなりの迫力があって怖かった。
個人的にエビラは実際に映画を見たかどうかで大きく印象が変わる怪獣かなと思っている。
冒頭から名前は出ていて後半に入って遂に主人公メンバーに合流する弥田は「あぁ、こりゃ良太の兄さんだわ……」と納得のキャラクターであった。
まさか映画冒頭でムチャクチャやった良太よりさらにムチャクチャな人が出てくるなんて予想外だった。
ゴジラがダヨを殺そうとしなかったのは赤イ竹と違ってダヨは武器を持っていなかったのとこの頃のゴジラはモスラと敵対しなくなったのでモスラの関係者であるインファント島の島民も無闇に敵視しなくなったのかもしれない。
ゴジラの鼻を擦る動きは若大将シリーズの加山雄三のパロディらしい。
他にも赤イ竹の戦闘機との戦いでは軽快な音楽と共に踊るように動く等、本作のゴジラには当時の日本の若者文化が盛り込まれている。
大コンドルはゴジラとまともに戦える大きさではないのだが、モスラ、ラドン、キングギドラと基本的にゴジラは空を飛ぶ相手が苦手なので大コンドル相手でも最初は結構苦戦していた。
エビラや大コンドルが普通のエビやコンドルより大きくなった理由は不明だが、赤イ竹が核兵器を開発していた事と何か関係があるのかな?
本作は南海の孤島が舞台なのであまり大きな建物の破壊は無かった。
赤イ竹は施設の大部分が地下に作られているので「ゴジラが地上の施設を破壊する事で地下の施設が崩れて人間達が窮地に陥る」と言う場面が多くなっている。
ゴジラはエビラの両腕のハサミを引きちぎると勝利の雄叫びと共にエビラのハサミをガシャガシャと鳴らす。
エビラは死なずにそのまま逃亡するのだが、個人的にはここでゴジラにトドメの放射熱線を吐いてほしかった。最初に見た時はエビラとの戦いがいつ終わったのか分かり難かった。
今回登場したモスラは『三大怪獣 地球最大の決戦』で幼虫だった個体が成長した姿なのかな。
ゴジラはモスラと何か言い争いをした後に放射熱線を吐いて攻撃するのだがあっさりと反撃されてしまう。羽のチョップ一撃でゴジラをぶっ飛ばした成虫モスラの強さに驚く。
本作では小美人をペア・バンビが演じている。ザ・ピーナッツとは違った雰囲気があったので、もう少し見たかった。
「ゴジラは中立」と言う市野の影響を受けてか吉村達もゴジラに対する印象が段々と変わっていき、最後はゴジラを助ける為に爆発するレッチ島から逃げろと呼びかけるようになって、ゴジラが無事に生き延びた事を知ると皆で大喜びした。
前作の『怪獣大戦争』でも主人公達のゴジラへの気持ちが少しずつ変わっていったが、本作でハッキリと「ゴジラの生存を人間が願う」と言う場面が出た事でゴジラの立ち位置は大きく変わって後のシリーズに大きな影響を与える事となった。
本作は元々は『キングコング対ゴジラ』に続いて企画された東宝版キングコングの第2作『ロビンソン・クルーソー作戦 キングコング対エビラ』であったのだが諸般の事情で不採用になってしまい、キングコングをゴジラに置き換えてゴジラシリーズの一作として作られる事となった。本作のゴジラはこれまでとは違った描写が多かったが本来はキングコングの予定だったと知って腑に落ちた。
クライマックスにモスラが登場するが、キングコングと違ってゴジラが赤イ竹に捕らえられた人々を助けるのはあまりにも無理があるので、その役割はモスラに振られたのだと考えられる。
冒頭の話なので途中ですっかり忘れていたが、この作品で一番の被害者はヤーレン号を所有するジェイムズ・コンウェイさんだよなぁ。太平洋横断の為に色々準備して後は出発を待つばかりだったのに……。
※「来ちゃダメッ」「待ってたぜ」と妙に怪獣達が可愛い予告編。
