「故郷のない男 ー光波宇宙人リフレクト星人登場ー」
『ウルトラマンメビウス』第34話
2006年11月25日放送(第34話)
脚本 赤星政尚
監督 小原直樹
特技監督 菊地雄一
ウルトラマンレオ
身長 51m
体重 4万8千t
獅子座L77星の王子でウルトラ兄弟の七男。
リフレクト星人に負けたミライの前に現れ、リフレクト星人を倒さなくては地球を託す事は出来ないと叱咤する。かつて自分が地球で着ていた道着をミライに渡し、ミライが特訓の末に新必殺技を編み出すよう見守る。
最初はメビウスとリフレクト星人の戦いを静観していたが、リフレクト星人がCREW GUYSを人質に取ったのを見ると戦いに参加し、メビウスバーニングブレイブのバーニングメビウスピンキックと同時に放ったレオキックでリフレクト星人を倒した。
戦いが終わった後、メビウスとCREW GUYSに地球を託した。
光波宇宙人リフレクト星人
身長 50m
体重 5万5千t
光線の吸収性が無い硬い体表を持つので光線技や光剣が通じない。メビウスを圧倒する格闘能力を誇る。両腕から光弾を発し、装甲の中に剣や鎖を隠し持っている。
慇懃無礼な態度で余裕を見せる一方で、自分の体を傷付けられると人質を取る卑怯な一面がある。
CREW GUYSを人質に取った事でレオの逆鱗に触れ、最後はレオキックとバーニングメビウスピンキックを同時に受けて倒された。
名前の由来は「リフレクト(反射する)」かな。
物語
突然現れたリフレクト星人に敗れたメビウス。
そんなミライとCREW GUYSの前に一人の雲水が現れる。
雲水の正体はかつて地球を守り抜いたウルトラマンレオであった。
感想
「別れの日」「約束の炎」のタロウに続いてレオが登場。
真夏竜さんがおおとりゲンを演じ、レオリングを使った変身シーンを見せ、『レオ』当時の映像も使われる等、ヒーローの客演回としてかなり豪華な作りとなっている。
レオに呼ばれたミライは伊豆諸島の南端にある黒潮島へ向かう。ここは『レオ』の「セブンが死ぬ時! 東京は沈没する!」「大沈没! 日本列島最後の日」でブラックギラスとレッドギラスに沈められて島民の殆どが全滅した悲劇の島。そこでゲンは雲水の姿で島民魂碑に花を捧げていた。
「俺は地球での最初の戦いで沈むこの島を守れなかった。その為に多くの人達が犠牲になった。ここは俺が絶対に忘れてはならない場所だ」。
碑に捧げられている風車は「怪獣の恩返し」を思い出す。この話でレオはマグマ星人を倒して敵討ちを果たしている。
光の国以来の再会となったレオはメビウスを挑発。ミライは戦いを拒否するがCREW GUYSに押されて戦う事になり、メビウスとレオと言う本物のウルトラマン同士の戦いが始まる。
ライダーバトルが一つの定番となっている仮面ライダーシリーズと違い、ウルトラシリーズではにせウルトラマンやイーヴィルティガと言った偽者や闇のウルトラマンとの戦いは何度かあるが、本物のウルトラマン同士、ヒーロー同士の戦いは珍しい。
因みにウルトラシリーズで本物のウルトラマン同士が戦った初めての回は『レオ』の「決闘! レオ兄弟対ウルトラ兄弟」「レオ兄弟 ウルトラ兄弟 勝利の時」であった。
メビウスを倒したゲンに向けてリュウとジョージは銃を構えるが、ゲンは「武器に頼れば隙が生じる。最後に頼るべきは自分自身だ」と忠告する。
この台詞は銃だけでなくメテオールの事も含めて語っているようにも聞こえるが、『メビウス』ではゲンの言葉とは逆に武器を否定せず武器であるメテオールに人の想いが込められているのを描いていった。
「今は任務で遠く離れているが、この地球は俺にとって第二の……、いや、本当の故郷だ。その故郷をお前に託せるかどうか試させてもらった。タロウ兄さんは許したらしいが、俺は許さん! お前には地球は託せない」。
ゲンの言葉を聞いたリュウは「今の地球はメビウスと自分達が守って来た」と訴えるが、ゲンは「メビウスがリフレクト星人と自分に負けた事が何を意味しているか分かるか?」と問いかける。
『レオ』ではレオの敗北はそのまま地球の滅亡に直結していた。実際に地球が滅亡する事は無かったが、その度に多くの犠牲者が出ていた。
「お前達の戦いは必ず勝たねばならん戦いなんだ! そんな事も分からずによく「ウルトラマン」を名乗れたもんだ!」。
『レオ』第1話の「セブンが死ぬ時! 東京は沈没する!」でゲンは「自分の名前はウルトラマンレオ」と自ら「ウルトラマン」を名乗ったが、そこから茨の道を歩む事となった。地球にとって希望である「ウルトラマン」を名乗る事は生半可な覚悟では許されないのだ。
ゲンの言葉に思わず悔し涙が零れるミライに向かってゲンは自身も『レオ』の「男と男の誓い」でダン隊長に言われた言葉を使って叱咤する。「その顔は何だ! その目は! その涙は何だ! そのお前の涙でこの地球を救えるのか!」。
ところで、ゲンが「タロウ兄さん」と言っている事に妙な引っ掛かりを覚えるなと思ったら、映像作品でレオとタロウの絡みが出るのはこの場面が初めてだったりする。
ドキュメントMACを調べたCREW GUYSはレオは幾度か宇宙人や怪獣に敗れたが再戦で新たな技を繰り出して勝利した事、特別チームであるMACが全滅し、生まれ故郷である獅子座L77星も全滅していた事を知る。
「きっとレオはその孤独さえも力に変えて戦ったんだ。それだけの覚悟を持って守り抜いたから、他人の星を「故郷」と言い切れるんじゃないかな?」。
レオの境遇を聞いたリュウは「自分達にそれだけの覚悟があったのか」と自問し、自分達の戦いは必ず勝たねばならないものだと言う事を理解する。
「別れの日」「約束の炎」でのタロウ客演はタロウと言うウルトラマンの紹介に留まっていたが、今回はレオと言うウルトラマンの紹介だけでなく『レオ』と言う作品そのものについても語られている。
サコミズ隊長がレオについて語った台詞の中に出てきた「他人の星」は『レオ』でなく『セブン』の言葉だが、モロボシ・ダンが『レオ』でダン隊長となっているので繋がりはある。因みに「他人の星」は『セブン』の「盗まれたウルトラ・アイ」の脚本時のタイトルで、この話に登場したマゼラン星人マヤは地球を第二の故郷にしないで自分が消える事を選択したと言うゲンとは真逆のキャラクターであった。
ミライがCREW GUYSに自分はウルトラマンだと正体を明かした事で他のウルトラマン達もCREW GUYSに自分達の正体を明かせるようになり、ウルトラマンが中心の話でもCREW GUYSが外される事無く会話に参加できるようになった。
その結果、「ミライはゲンの話を聞くがCREW GUYSはゲンの正体を知らない」と言ったキャラクターによって情報に格差が生じると言う事が無くなり、話の構造も複雑にならずに済むようになった。作品中盤で主人公が自分の正体を明かす展開は衝撃だったが、この事によって作品終盤に控えていた歴代ウルトラマンの客演回が作り易くなった。
リフレクト星人の特性を分析したCREW GUYSは先程のレオの攻撃はメビウスにリフレクト星人打倒の術を教えていたのだと気付く。
レオキックならリフレクト星人を倒せるがメビウスにはレオ程の身体能力は無い。そこでミライはゲンから託された道着を着て特訓を決意する。
マリナは「熱血馬鹿のリュウが喜びそうな展開」と言っていたが、確かにリュウに合いそうな展開である。そもそもリュウみたいなキャラクターはアライソ整備長やゲンのような昔気質の厳しいオヤジとの話が合うと思う。
「孤独を力に変えた」「他人の力を頼りにしない」と言う言葉からミライは一人で特訓を開始する。
かつて自分が地球で流した汗が染み込んだ道着を着て特訓に励むミライを見てゲンは「男はいつも一人で戦うんだ。自分自身で戦うんだ」と呟く。
昭和の頃はよくあった展開だが、平成の世には珍しい泥臭い特訓。現在は苦しい特訓はあまり受け入れられないようだが、特訓して強くなるのはパワーアップの過程が分かり易いので自分はアリだと思う。
特訓を続けるミライだがレオキック並みの破壊力を手に入れる事が出来ず苦悩する。そこにリュウがやって来て「他人に甘えないって事は他人に心配をかけても良いって事じゃないんだぜ。心配してんのは俺の勝手だがな」と声をかける。そしてミライはリュウが木を擦る事でマッチもライターも使わないで火を起こすのを見て、自分に足りない何かを見付ける。
再び現れたリフレクト星人に対してミライはメビウスに変身。通常のキックにスピンを加えて炎エネルギーを発生させるバーニングメビウスピンキックで大ダメージを与える。
「約束の炎」のメビウスバーニングブレイブに今回のバーニングメビウスピンキックにと『メビウス』は炎を使ったパワーアップが上手い。
リフレクト星人は慇懃無礼な態度と妙にカッコ良い声が印象に残るキャラクター。
怪獣のような外見でありながら知能の高い宇宙人は『レオ』に登場した宇宙人に通じるものがある。
体が丸い球体になっているのは円盤生物のイメージかな?
鎖を使って相手を捕らえるのはマグマ星人やババルウ星人を思い出す。
特訓の成果であるバーニングメビウスピンキックで大ダメージを与えたメビウスだったが、逆上したリフレクト星人はCREW GUYSを人質に取る。それを見たゲンはレオに変身し、メビウスとのタッグでリフレクト星人を圧倒する。
最後のレオキックとバーニングメビウスピンキックによるWキックはキックの本場である仮面ライダーシリーズに負けない格好良さ!
戦いを終えたミライはゲンに道着を返して「レオ兄さん。地球は僕がきっと……」と言い、その道着を受け取ったゲンは「お前になら、いや、お前達になら託せそうだ。俺の故郷を」と答える。
今回の話でゲンはミライに一人で戦う事を教え、ミライもそれに応えようとしたが、結局、ミライが新必殺技を思い付いたのはリュウのおかげだったし、最後もレオとの共闘でリフレクト星人を倒している。
『レオ』の時のゲンはMACの協力も無く一人で孤独に戦い続けていたが、『メビウス』のミライにはCREW GUYSと言う仲間がいる。だからこそゲンはリフレクト星人の手によってCREW GUYSが犠牲になる事を断固として阻止したし、最後も「お前達になら託せる」とミライだけでなくCREW GUYSも含めて地球を託している。これは昭和ウルトラシリーズとはテーマが異なる『メビウス』と言う作品を示していると言え、『メビウス』最終回の「心からの言葉」でメビウスフェニックスブレイブが誕生する事へと繋がっていく。