帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「ご唱和ください、我の名を!」

「ご唱和ください、我の名を!」
ウルトラマンZ』第1話
2020年6月20日放送(第1話)
脚本 吹原幸太
監督 田口清隆

 

ウルトラマンゼロ
身長 49m
体重 3万5千t
光の国のウルトラメダルを飲み込んだゲネガーグを追って地球と月の間に現れるが、ゲネガーグが吐き出したブルトンによって四次元に吸い込まれてしまう。
自分に付きまとうゼットに対して「お前を弟子に取った覚えは無い」と突き放すが、ブルトンに飲み込まれる直前に自分が持っていたウルトラゼットライザーとウルトラメダルを渡してゲネガーグが飲み込んだウルトラメダルの奪還を託す。
ZERO&GEED』でレオから授けられたウルトラゼロマントを着けている。

 

四次元怪獣ブルトン
身長 60m
体重 6万t
ゲネガーグが飲み込んでいた。
ゲネガーグから吐き出されると近くにいたゼロを巻き添えに四次元に姿を消した。

 

古代怪獣ゴメス
身長 18m
体重 3万5千t
新生代第三紀頃の原始哺乳類。
東京の街中に出現して暴れるがセブンガーに殴り倒された。

 

凶暴宇宙鮫ゲネガーグ
身長 67m
体重 6万t
光の国でウルトラメダルを飲み込んでゼロとゼットの追跡から地球へと逃げてきた。
大きな口で怪獣や小惑星すら飲み込んでしまう。又、口から様々な光線や光弾を吐き出す。
一度はゼットとハルキが操縦するセブンガーを倒すが二人が一体化して誕生したアルファエッジのゼスティウム光線で倒された。
『オーブ』の「逆襲の超大魔王獣」「さすらいの太陽」のマガタノオロチの着ぐるみを改造している。

 

物語
怪獣を「特空機」と呼ばれるロボットで迎撃する組織ストレイジが活躍する地球。
その近くに光の国のウルトラメダルを飲み込んだ怪獣ゲネガーグとそれを追うゼロとゼットが姿を現す。

 

感想
冒頭いきなりゴメスが大暴れする。
今回登場するゴメスは身長18mと『Q』の「ゴメスを倒せ!」に登場した個体(身長10m)よりは大きいがウルトラ怪獣の中では小さい。
ゴメスを他の怪獣に比べて小さくした事で人間との距離が縮まって逆に怪獣の巨大さ怖さが出たのが面白い。ウルトラマンもビルより低い方が逆に巨大さが出る事があったりと、この辺りの人間の感覚は不思議だなと思う。

 

人間とゴメスとセブンガーの大きさが違う事で「人間にとって脅威となる怪獣ゴメス」「そのゴメスを倒す事が出来る人類の希望セブンガー」と言うのを映像で見せている。

 

セブンガーの元ネタは『レオ』の「ウルトラ兄弟永遠の誓い」に登場した怪獣ボールのセブンガー。オリジナルのセブンガーは活動時間が1分となっているが本作のセブンガーは1分間のバッテリーを3本装備しているので3分間活動できるとなっている。

 

M78星雲シリーズに登場した怪獣と同じデザインのロボットが防衛軍に配備されると言うのは『ザ☆ウル』のピグと同じ。

 

『Z』のセブンガーはセブンとは無関係なのにどうして「セブンガー」と言う名前なのかは『Z』の軍事考証の小柳啓伍さんが執筆してツブイマで配信されている小説『擲命のデシジョン・ハイト ーストレイジ創設物語ー』で説明されている。巨大ロボットの有名作である『鉄人28号』と同じであるが、そう考えて見るとセブンガーの雰囲気は鉄人28号に似ている。

 

作戦中に犬を保護する事になったハルキ。
第1話で怪獣が暴れる中で主人公が犬を助ける展開は『帰マン』の「怪獣総進撃」でもあった。因みにこちらではゴメスによく似たデザインの怪獣アーストロンが登場していた。

 

オープニング曲は遠藤正明さんの『ご唱和ください 我の名を!』。いきなり物凄い声量で驚く。
『ティガ』等で主題歌がクライマックスのタイトルになる事はあるが第1話のタイトルになる事は珍しい。
オープニング映像を見ると意外とゼットがハッキリ映っている場面が無い事に気付く。逆にストレイジ関連の映像が多いので、本作は特別チームに力を入れている事が分かる。

 

クリヤマ長官に注意されるが反省の色を見せないハルキのお尻をつねって涙目にさせるヘビクラ隊長。考えすぎかもしれないが、『ジード』の『つなぐぜ! 願い!!』でジャグラーがレイトのお尻を触る場面がある。

 

クリヤマ長官に特製のミックスジュースを勧めるユカ。彼女のキャラクターのせいで得体の知れないものが入れられているイメージがあるが今回はバナナ・小松菜・モロヘイヤとちゃんと中身が判明している。

 

ヘビクラ「おい、ハルキ。何に代えても命を守りたいと言うその心意気は俺好きだ。大好きだ。でもさ、せっかくだから命だけじゃなく規律の方も守ってくれないか」、
ハルキ「じゃあ、あの犬は放っといたら良かったんですか?」、
ヘビクラ「万が一、セブンガーがお前踏んじまったらどうする? ヨウコは一生消えないトラウマを背負うとこだ」。
『Z』でヘビクラ隊長が部下に自分の命を第一に考えるよう伝えるのは終始一貫している。因みに『帰マン』の「怪獣総進撃」では犬を助けた郷秀樹は瓦礫の下敷きになって命を落としている。それがウルトラマンの感動を引き起こして郷秀樹と一心同体になる事を決断させるのだが、そう考えるとヘビクラ隊長(ジャグラー)はこの時点で光の国のウルトラマンとは考え方が違う事が分かる。

 

ウルトラシリーズ仮面ライダーシリーズでは二つの力を合わせて戦う事があるが今回の『Z』はなんと三つの力を組み合わせて戦うとなっている。
今回の主人公であるゼットは自称ゼロの弟子なのだが、ゼロからは「半人前ではなく3分の1人前」と呼ばれている。そこから三つの力を使うと言うアイデアが上手かった。

 

自称ではあるがゼロの弟子であるゼットが登場。セブンがレオを弟子に取り、そのレオがセブンの息子であるゼロの師匠になり、更にそのゼロもギンガやビクトリーやオーブやジードを指導してゼットと言う自称・弟子が出てくる等、ウルトラシリーズはヒーロー達の人間関係で歴史が紡がれていくところがある。
因みに仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズでは作品の中で家族や師弟と言った関係が出てくる事はあるが、作品を超えて家族や師弟関係が設定される事は少ない。ウルトラシリーズ仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズに比べて昔のヒーローも現役のように活躍していると言われているが、それは過去の作品のキャラクターに父や兄や師匠と言った設定を付けて新作のキャラクターと繋げているからだと思われる。

 

瓦礫の撤去作業をするセブンガー。怪獣と戦うロボットと言えば平成ゴジラシリーズに登場したメカゴジラやモゲラがいるが、それらはゴジラと戦う場面はあっても怪獣がいないところで復興作業をする場面は無かった。
セブンガーは怪獣作品のロボットと言うより『機動警察パトレイバー』のレイバーに近いところがある。因みに実写版の『THE NEXT GENERATION パトレイバー』には『Z』のスタッフでもある田口監督や辻本監督も参加していた。(『Z』とは直接関係無いけれど、パトレイバーシリーズの押井守さんは『ジード』のメインライターの安達寬高(乙一)さんの義理の父親)

 

一時期のウルトラシリーズは「特別チームは予算がかかる」「特別チームの関連商品は売れない」と言う話があったが『Z』で特別チームのメカがロボット怪獣になる事でそれらの問題が解決された。
それにしても、あのセブンガーが令和の時代に特別チーム復活の立役者になるとは想像できなかった。セブンガーは人気が出ると計算して計画を立てた田口監督は凄すぎる。

 

怪獣出現に際してスマホに緊急速報メールが送られてくるのは東日本大震災後の怪獣作品として時代を感じる。

 

ウルトラシリーズの第1話に登場する怪獣は『Q』の放送第1話に登場したゴメスのイメージやウルトラマンと格闘をさせやすい事等から二足歩行の人型に近い形が多いが今回登場するゲネガーグはかなり特徴的な形になっている。マガタノオロチの着ぐるみを改造すると言う事情もあるが、ニュージェネレーションシリーズが続いた事で少し変わったタイプの怪獣を第1話に出せるようになったと言うのもあるかもしれない。

 

戦闘機が怪獣の光線を受けても墜落しないで戦い続けたら違和感が生じるが、ロボット怪獣だと怪獣に殴られたり光線を浴びせられたりしてもそのまま戦い続けても違和感が無いので戦闘機より活躍を描きやすいところがある。

 

ゲネガーグとゼットを見たハルキは「どう見てもこっちが敵だよな!」と言ってゲネガーグを攻撃する。おいおい。見た目で判断したら危ないぞ。今回は正解だったが後にハルキは悪そうなトゲトゲの見た目をしている魔人態ジャグラーと対面する事になる。

 

後に明らかになる事だが、ヘビクラ隊長ことジャグラーの目的は「光の国の正義の危うさを示す事」だったのだが、まさかその為に開発した特空機に乗った自分の部下のハルキが光の国のウルトラマンであるゼットを見て直感的に「自分達の味方だろう」と判断してしまうのは皮肉なものだなぁ。

 

一体化のウルトラマンの場合、「ウルトラマンが一体化しなかったら人間の命が危なかった」や「ウルトラマンは人間と一体化しないと地球で活動できない」と言ったように一体化しないと人間かウルトラマンかに不都合が起きる事が殆どなのだが、今回は「ハルキは死んだしゼットもヤバい」と一体化しないと人間とウルトラマンのどちらにも不都合が起きるとなっている。

 

言葉遣いがちょっとおかしいゼット。これは日本語に不慣れな外国人のイメージかな。思えば『初代マン』の「ウルトラ作戦第一号」でハヤタ隊員に話しかける初代マンも言葉遣いが微妙におかしかったので、今回のゼットの言葉遣いがおかしい描写も異色に見えて実は『初代マン』の描写を令和の時代に正しく再現したとも言える。

 

「地球の言葉はウルトラ難しい」と言うゼットだが、地球に来る前からゼロとの会話で「ウルトラショック」とか言っているので、本人は地球の言葉に慣れていないだけと思っているようだが実は元々言葉遣いがちょっとおかしかった人のような気がする。

 

21世紀になってからヒーローの変身アイテムはトリガーを押したりカードやメダルをセットしたりと色々段取りが増えたのだが、それをそのまま劇中に組み込んで名(迷)シーンを作り出したのは凄かった。3分の1人前が三つのメダルを使うもだが『Z』は玩具の設定と劇中の設定のすり合わせが抜群に上手かった。

 

ウルトラシリーズのタイプチェンジはパワー特化やスピード強化と言ったステータスの割り振りである事が多いのだが、マンネリ化を防ぐ為か、『R/B』ではエレメントが、『タイガ』ではタイタスやフーマと言ったキャラクターが、そして本作ではアルファエッジに変身するにはゼットの師匠のゼロ、ゼロの師匠のレオ、レオの師匠のセブンのウルトラメダルが必要であると人間関係が付け加えられている。

 

アルファエッジで印象的だったのはアルファチェインブレードと言うヌンチャクのような技。アルファエッジはレオとゼロの力で宇宙拳法が使えると言う設定。レオも「泥まみれ男ひとり」でレオヌンチャクを使っていたが意外と活躍は少なく、正直言うと自分もさすがにウルトラマンでヌンチャクはあまり活かせないかなと思っていたので、今回のヌンチャクの描写を上手くウルトラシリーズらしく表現したのには感動した。

 

寄生生物のセレブロに乗っ取られてしまうカブラギ。
「宇宙生命体が地球人と一体化する」と言うのは実はウルトラマンに通じるところがある。

 

エンディング曲は玉置成実さんの『Connect the Truth』。
どちらかと言うとストレートで分かりやすいオープニング曲に対してこちらは少し複雑な感じになっている。何となくであるが、オープニング曲はゼットとハルキの事を、エンディング曲はジャグラーの事を歌っているように思える。

 

ニュージェネレーションシリーズは毎年7月に放送開始されるのだが2020年は東京オリンピックが開催予定だったので本作は放送開始が早められる事となった。実際は新型コロナウイルスが世界的に流行した為に東京オリンピックは翌年に延期されたが、例年より早く制作を開始していた為に本作はコロナ媧でも予定通りに放送を終える事が出来た。

 

 

当然だがストレイジ広報のヨシダはゼットの正体を知らないので、この活動報告を読むとウルトラマンの事情を知らない人は事件をどう捉えているのかを知る事が出来る。

 

ストレイジの広報だからか、この活動報告ではストレイジに不都合な部分は記事にされていなかったりする。

 

 

「ゼットとゼロの出会いの話」
ウルトラマンゼット&ウルトラマンゼロ ボイスドラマ』第1回
脚本 足木淳一郎
CG 渋谷怜央加
編集 金光大輔

 

ゼットとゼロが出会った頃のお話。
実は『Z』本編ではゼットとゼロの話は意外と少ない。本作に限らず、ニュージェネレーションシリーズではウルトラマン達の人間関係が色々設定されているのだが、TVシリーズは地球の話になるのでウルトラマンだけの話と言うのは作りにくいところがあって、そこをボイスドラマで補完するようになっていった。

 

本編でもコミカルなところがあるゼットだが彼にいわゆる「アホの子」なイメージが付いたのはボイスドラマでのエピソードが原因だと思われる。

 

Twitterでの本作のハッシュタグは「ZZボイスドラマ」となっている。ゼットとゼロの頭文字から付けられたと思うが、『Z』は『パトレイバー』や『エヴァンゲリオン』と言ったロボットアニメのオマージュが多いので、ひょっとしたらこれも『機動戦士ガンダムZZ』が元ネタかもしれない。