帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

「オペレーションドラゴン」

「オペレーションドラゴン」
ウルトラマントリガー』第15話
2021年10月30日放送(第15話)
脚本 足木淳一郎
監督 坂本浩一

 

アブソリュートタルタロス
身長 56m
体重 6万2千t
エタニティコアが自分達の脅威になるのはまだ先だと判断して、光の国との戦いを優先する為にザ・キングダムに帰還する事を決める。

 

アブソリュートディアボロ
身長 65m
体重 9万t
GUTS-SELECTが擬似的に再現したトリガーのエネルギーの波長に誘き出されて宇宙線研究所に現れるとGUTS-SELECTと闇の巨人の共同戦線によってアブソリュート粒子を奪われる。
グリッタートリガーエタニティとリブットとナースデッセイ号の攻撃を同時に受けて倒されたがアブソリュートハートがある限り不死身で、戦いが終わった後に再生してタルタロスと共にザ・キングダムに帰還した。

 

ウルトラマンリブット
身長 40m
体重 4万t
ケンゴとユナの問題点を見抜き、青年の姿に変身して二人を指導した。
ユナから借りたGUTSスパークレンスとGUTSハイパーキーにエネルギーを送って自分用の変身アイテムに変えるとウルトラマンに変身してトリガーを援護した。
戦いが終わった後、リブットの力が込められたGUTSハイパーキーをユナに託して元の次元へと帰っていった。

 

宇宙竜ナース
全長 120m
体重 15万t
かつてナースデッセイ号を作る為にマルゥルがワイルド星人から裏取引で手に入れた。

 

物語
アキトはアブソリューティアンが持つアブソリュート粒子を使えばナースデッセイ号の真の力バトルモードを起動するだけのエネルギーを確保できると計算する。
一方、ケンゴの問題点を見抜いたリブットは青年の姿に変身すると意外な特訓を課すのであった。

 

感想
「リブット。さっき君を助けたウルトラマンと言えば分かるかな」。
リブットの人間態が登場。演じるのは『ベリアル銀河帝国』のエメラナ姫役だった土屋太鳳さんの弟で声優の土屋神葉さん。
土屋神葉さんはウルトラシリーズスーツアクターを務めている岩田栄慶さんのアクションスタジオの生徒で、ゼロの声を担当している宮野真守さんがきっかけで声優を志すようになったとの事。さすがにアクションも喋り方もビシッとしていてまさに正統派ヒーローと言う感じだった。

 

ケンゴはまだ自分の本当の力に気付いていないとしてリブットは「心を無にして本能のまま内に眠る秘めたるパワーにタップするんだ。そうすれば自らの手で運命を切り拓く事が出来る」とアドバイスを送る。
この「眠っている領域にタップして潜在能力を解き放つ」は『ウルトラギャラクシーファイト 大いなる陰謀』の「動き出す陰謀」でリブットがグレートとパワードから伝えられた事。セブン、レオ、ゼロの流れもだが、こうやって教えが次の世代のウルトラマンへと引き継がれていくのを見るのは長期シリーズの醍醐味の一つと言える。

 

今回はカルミラの人間態も登場。こちらはカルミラの声を担当している上坂すみれさんが人間態も担当した。似合っていたのでこれをレギュラーにしてほかった気持ちもあるが、基本的にカルミラは人間を下等な存在と見ているので今回の人間への変身はあくまで特別な状況だったのであろう。
今回のカルミラは「三千万年の奇跡」でのダメージがまだ残っている自分達だけでアブソリューティアンを倒すのは難しいので人間に変身してGUTS-SELECTの動向を探ってアブソリューティアンを倒す機会を伺っていたと思われる。(まぁ、研究所に正面から入って警備員を倒しちゃっているけれど)

 

アブソリューティアンを誘き寄せる為にトリガーのエネルギーの波長を擬似的に再現する事になる。『トリガー』ではアキトがトリガーのパワータイプやスカイタイプのGUTSハイパーキーを用意しているのでトリガーのエネルギーの波長を擬似的に再現できるのも納得。
石版があるとは言え地球人がここまでウルトラマンの力を分析して管理できていると言うのはウルトラシリーズでは結構珍しい気がする。『トリガー』のウルトラマンの力は光の国やO-50と言った地球から遠く離れた場所にあるのではなく超古代とは言え地球にあるものなので他の作品より人間による分析が進められたのかもしれない。(『トリガー』の元ネタになっている『ティガ』『ダイナ』でもイーヴィルティガやテラノイドを作れるほど人間はウルトラマンの力の分析が出来ていたし)

 

リブットの特訓はなんとダンス!
いきなり踊らされて困惑するケンゴとユナであったが演じている寺坂頼我さんと豊田ルナさんはどちらもダンスが出来る人でケンゴとユナもあっという間にダンスをマスターした。
このダンスの振り付けは『爆竜戦隊アバレンジャー』で今中笑里(えみポン)役だった西島未智さんが担当している。
今回は『ウルトラ・BOOT CAMP!』と言う土屋神葉さんが歌う専用の歌まで用意されて特別にエンディングにも使われると言う力の入れっぷりであった。作詞を担当した松井洋平さんは次作『デッカー』のオープニング曲『Wake up Decker!』の作詞も担当しているがこちらもMVでおじさん達がエクササイズのダンスを踊ると言う一度見たら忘れられないインパクトを誇るものになっている。


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光を繋ぐもの」での初変身からケンゴは戦っている時は殆ど笑顔を見せていなかった。そして「三千万年の奇跡」で自分が普通の人間ではなく光の化身である事を知ったケンゴは「僕は光の化身。闇と戦う事が僕の運命」と宣言するようになる。これに対してユナは「強いね、ケンゴは……。自分の運命と向き合っている」と告げるが前回の「黄金の脅威」でケンゴは遂に「この命に代えても僕は皆を守るんだ!」とまで言うようになってしまう。この戦いの後にリブットがケンゴに向かって「運命の重さに押し潰されているようだね」と指摘したようにケンゴはウルトラマンと言う運命に向き合っていると言うより押し潰されて人間としての自分を犠牲にしてしまっていた。
なので今回のリブットの特訓は楽しいダンスでケンゴの緊張を解いたところで問答させてケンゴに笑顔を取り戻させる事が目的となった。

 

ケンゴは「インター・ユニバース」「繁殖する侵略」で会ったハルキとウルトラマン談義で盛り上がったが一方で「ウルトラマンをやっていて一番大変な事」「ウルトラマンである事の重責」についてハルキが「大変とも重責とも思っていない」と答えた事でケンゴはウルトラマンである事を大変であると思わないように重責を抱えていると思わないようにしようとして結果的にウルトラマンである事に押し潰されてしまったところがある。
『オリジンサーガ』のジャグラーとアスカほどではないが実はケンゴとハルキもあの時点ではあまり会わせてはいけなかったタイプだったのかもしれない。ウルトラマンになってまだ数週間から数ヶ月で他に相談できる相手がいなかったケンゴにはまだ若くて我武者羅なハルキより経験を積んだリブットの方が色々と問題点を見付ける事が出来た。

 

『トリガー』の元ネタになった『ティガ』『ダイナ』等は主人公が他のウルトラマンと会う事が殆ど無かったのでウルトラマンである事を一人で抱え込んでしまうところがあった。一方のニュージェネレーションシリーズはマルチバースの設定で経験豊富な先輩ウルトラマンと会える事があるのでその辺りの問題は『ティガ』『ダイナ』の頃に比べると早めに解決するようになった。

 

第1話から何度か出ていたユザレの「ケンゴ……。あなたは、光であり」の続きが明かされる。それは「人である」であった。流れ的に「光であり闇である」になりそうだったので不安があったが、これによってケンゴの闇堕ちの可能性は無くなったと言える。

 

「光であり人である」は『ティガ』でも出てきた言葉だが『ティガ』では「ウルトラマンの力を得てもダイゴが人間である事に変わりはない」と言う意味だったのに対し、『トリガー』では「ウルトラマンであったケンゴは人間としての人生を手に入れた」となっていて、スタート地点が人間であるダイゴとスタート地点がウルトラマンであるケンゴと真逆になっているのが興味深い。

 

自分が光の化身であり人間でもあると言う事を思い出せたケンゴはようやく笑顔を取り戻し、それを見たリブットは「良い笑顔だ。今の君なら運命を切り拓けるはず」と告げる。
一方でトリガーダークの力を手に入れたイグニスの笑みは悪くなっていた。

 

オペレーションドラゴンが開始されるがGUTS-SELECTだけではアブソリューティアンを相手にするにはさすがに戦力不足であった。しかし、そこに闇の巨人が現れてディアボロを取り押さえるのに協力する。利害が一致した事を理解したタツミ隊長は闇の巨人も作戦に組み込んで次の段階へと進む。
タツミ隊長はマルゥルをスカウトし、イグニスと協力体制を取り、闇の巨人と利害が一致したと判断するとすぐにそれを組み込んだ作戦に変える等している。『ナースデッセイ開発秘話』で語られているように既にTPUには多くの宇宙人が働いていると言う状況もあるがタツミ隊長は地球防衛の為に宇宙人の手を借りる事を迷い無く判断する事が出来る。

 

第三の勢力が現れたので主人公達と敵対している勢力が一時的でも協力すると言う展開はウルトラシリーズではかなり珍しい。盛り上がる展開で自分は好きな展開なのだが一方でこれはウルトラシリーズより東映ヒーロー作品の要素だよなぁと思うところもある。『パワーレンジャー』を担当していた坂本監督が参加してからウルトラシリーズ東映ヒーロー作品の要素が加わったところがあるが今回の前後編はそれが最も濃くなった回と言えるかもしれない。

 

リブットの特訓で精神を成長させたケンゴはグリッタートリガーエタニティのエタニティコアの力を制御できるようになった。
力強さと言う点ではエネルギーが溢れ出ていたこれまでの方が凄かった感じはするが今回の戦いは無駄が無くなった感じがして実際に戦って勝つのはどちらかとなったら今回のグリッタートリガーエタニティと言う感じがする。

 

リブットによるとウルトラマンは人間の姿を借りると光の力を解放するアイテムが無いと元の姿に戻れないらしい。モロボシ・ダンはセブンが地球人に変身した姿なのだからウルトラ・アイが無いと本来の姿に戻れないと言うのはおかしいなぁと思っていたが、その辺りの疑問が解決した。
一方で変身アイテム無しで変身していたウルトラマンもちらほらいるが、彼らも視聴者が知らないだけで何かアイテムを使っていたのか、それとも郷秀樹がジャックになる時に色々な条件が必要だったようにアイテム無しでも複数の条件を満たせば変身できるのかな。

 

リブットはユナのGUTSスパークレンスとGUTSハイパーキーに自分の力を込めて即席の変身アイテムを作り出す。
リブットはGUTSスパークレンスを使った変身はこれが初めてなのだがもうこれで何回も変身したみたいな慣れた感じになっていた。ハルキは二回目でもおぼつかない感じだったと言うのに……。

 

闇の巨人の協力を得てディアボロのエネルギーを得る事が出来たナースデッセイ号はバトルモードに移行する。
過去の作品に登場したロボット怪獣を特別チームが運用すると言う設定は『Z』の特空機と同じだがナースデッセイ号は『ティガ』のアートデッセイ号のような巨大戦闘艇にする事でセブンガー達との差別化がされた。

 

ギャラファイシリーズのキャラクターなのでここでディアボロが一度倒されるのは意外であったが、よく考えたら今回は「主人公が最強形態の力を使いこなせるようになる」「特別チームの巨大戦闘艇の真の力が遂に使われる」「実力者のウルトラマンが客演する」と言う三つの要素がある話なので、トリガー、ナースデッセイ号、リブットの三体を相手に戦える格となるとギャラファイシリーズのボスキャラクターの一人であるディアボロでなければ務まらなかったのかもしれない。

 

ケンゴ「あなたのおかげで大事な事に気付きました。僕は光であり人でもある。その運命を受け止めて生きていきます!」、
リブット「でも忘れないで。君の笑顔には世界を救う力があると言う事を」、
ケンゴ「はい! スマイルスマイル♪」。
なんかようやくウルトラマンになった後のケンゴの笑顔を見られた気がする。

 

今回のリブットはケンゴやユナに色々説明していたが、それを聞いていたイグニスにトリガーダークへの変身に必要な情報を与える事にもなってしまった。
しかし、リブットはイグニスを向かって「一つの事に囚われて周りが見えなくなっているように見えるけれど」と忠告するように全てお見通しであった。ひょっとしたらリブットはあえてイグニスがウルトラマンの事を理解できるように情報を出していたのかもしれない。

 

それにしてもイグニスのトリガーダーク変身からの『ウルトラ・BOOT CAMP!』はあまりの温度差に風邪を引きそうだw

 

今回の話の舞台になった「スクナシティ」は『ティガ』の「よみがえる鬼神」に登場した宿那鬼が元ネタだと思われる。この回で錦田小十郎景竜がダイゴに向かって告げた「強者は、常に孤独だ……。強者は、常に勝ち続けなければならない……。その為に孤独になる……。耐えられるかな?」はその後のウルトラシリーズの主人公の物語に大きな影響を与える事となり、今回明らかになったケンゴの問題点も突き止めるとこの言葉に辿り着くところがある。

 

 

「宇宙竜ナース」
『ナースデッセイ開発秘話 ~特務3課奮闘記~』第15話
脚本 足木淳一郎
監督 村上裕介

 

おそらく本作どころか『トリガー』関連で最も予想できなかった展開であろうワイルド星人ザガァに惚れるテルミちゃん。初めて見た時はリアルに「マジかっ!?」と言う声が出た記憶がある。