帰ってきたウルトラ38番目の弟

ウルトラシリーズについて色々と書いていくブログです。

『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』

『大決戦! 超ウルトラ8兄弟』
2008年9月13日公開
脚本 長谷川圭一
監督・特技監督 八木毅

 

ウルトラマン
身長 40m
体重 3万5千t
アキコと結婚して横浜でサイクルショップを経営している。
娘のレナとダイゴの結婚を心待ちにしている。
別世界の記憶を思い出してベーターカプセルで初代マンに変身する。
グリッターバージョンにパワーアップして黒い影法師を倒した。

 

ウルトラセブン
身長 40m
体重 3万5千t
アンヌと結婚して横浜でハワイアンレストランを経営している。
別世界の記憶を思い出してウルトラアイでセブンに変身する。
グリッターバージョンにパワーアップして黒い影法師を倒した。
今回は新たにイリュージョニック・スラッガーと言うアイスラッガーの分身技を披露した。

 

ウルトラマンジャック
身長 40m
体重 3万5千t
アキと結婚して横浜で坂田自動車修理工場を経営している。
娘のメグと共に流星一号の完成を目指している。
別世界の記憶を思い出してジャックに変身する。
グリッターバージョンにパワーアップして黒い影法師を倒した。

 

ウルトラマンエース
身長 40m
体重 4万5千t
夕子と結婚し、娘の七海と一緒に横浜でベーカリー店を経営している。
別世界の記憶を思い出してウルトラリングでエースに変身する。
グリッターバージョンにパワーアップして黒い影法師を倒した。

 

ウルトラマンメビウス
身長 49m
体重 3万5千t
キングゲスラとの戦いの後、ダイゴの世界に迷い込んだ。
キングパンドンを倒すが直後にスーパーヒッポリト星人によってブロンズ像に変えられてしまう。別世界の記憶を思い出したウルトラ兄弟達によって復活し、グリッターバージョンにパワーアップして黒い影法師を倒した。
今回はライトニングスラッシャーと言う新しい技を披露した。
超ウルトラ8兄弟の他の7人は元の世界とは異なるパラレルワールドの人物となっているがミライだけは元の世界と同一の人物となっている。

 

ウルトラマンダイナ
身長 55m
体重 4万5千t
かつて横浜北高のエースとして甲子園にも出場したが満塁からの押し出しと言う自滅でチームを敗退させた責任から現役を退いていた。その後も野球への未練を断ち切れないで横浜スタジアムのボールボーイとして働いている。
ダイゴやレナの話を聞いて、かつての自分の夢と再び向き合う決意をする。
別世界の記憶を思い出してリーフラッシャーでダイナに変身する。
ソルジェント光線でキングシルバゴンを倒し、グリッターバージョンにパワーアップして黒い影法師を倒した。
その後、プロテストを受けて横浜ベイスターズに入団し、オールド・ルーキーとしてチームを優勝に導いた。

 

ウルトラマンガイアV2
身長 50m
体重 4万2千t
かつては天才と呼ばれた存在だったが、その肩書きから逃げ出して横浜マリタイムミュージアム学芸員として働いている。
ダイゴやレナの話を聞いて、かつての自分の夢と再び向き合う決意をする。
別世界の記憶を思い出してエスプレンダーでガイアV2に変身する。
フォトンエッジでキングゴルドラスを倒し、グリッターバージョンにパワーアップして黒い影法師を倒した。
その後、研究に復帰して藤宮と一緒に反重力システムの実用化に成功。日本丸を宇宙船へと改造した。

 

海獣キングゲスラ
身長 68m
体重 2万1千t
『初代マン』に登場したゲスラの強化版。
全身のヒレやトゲに猛毒が含まれている。
横浜赤レンガ倉庫メビウスと戦い、かつて見た『初代マン』のTVで弱点が背ビレだと知っていたダイゴの指摘によって倒された。

 

双頭怪獣キングパンドン
身長 63m
体重 6万8千t
『セブン』に登場したパンドンの強化版。
二つの口から火炎や光線を吐く。
ダイゴの世界に現れて横浜の街を破壊するがメビウスのライトニングスラッシャーとメビュームシュートの連続攻撃で倒された。

 

剛力怪獣キングシルバゴン
身長 70m
体重 7万9千t
『ティガ』と『ダイナ』に登場したシルバゴンの強化版。
口から破壊光弾を吐く。今回は視力は悪くない。
キングゴルドラスと共に横浜の街を破壊するがダイナのソルジェント光線で倒された。

 

超力怪獣キングゴルドラス
身長 75m
体重 8万7千t
『ティガ』に登場したゴルドラスの強化版。
時空間バリアーを展開し、角から電撃を発し、口から火炎弾を吐く
キングシルバゴンと共に横浜の街を破壊するがガイアV2のフォトンエッジで倒された。

 

地獄星人スーパーヒッポリト星人
身長 60m
体重 6万5千t
様々な世界の怪獣を改造して自分の手駒にしていた。
メビウスをカプセルに閉じ込めてヒッポリトタールでブロンズ像にする。
「人間に未来は無い」として横浜の街を破壊するがティガのゼペリオン光線で倒された。

 

究極合体怪獣ギガキマイラ
身長 512m
体重 68万2549t
黒い影法師がティガ達に倒された怪獣の残存エネルギーを融合させて誕生した。
合体した怪獣達によって全方位に様々な攻撃を行う。
横浜の街を破壊するが超ウルトラ8兄弟のイリュージョニック・スラッガーとウルトラスペリオルで倒された。
「ギガキマイラ」と言う名前はネット上の公募によるものらしい。

 

邪心王黒い影法師
身長 180cm~1500m
体重 0
人間の持つ悪意や恐怖や恐れ等の負の感情から生まれた邪悪なエネルギーの集合体。
黒いフード付きのマントを被っていて素顔は隠されている。
スーパーヒッポリト星人を陰で操ってウルトラマンが存在する全ての並行宇宙を侵略しようとした。
ギガキマイラが倒された後、横浜の街に蔓延っていた全ての黒い影法師が合体して巨大化するが、グリッターバージョンにパワーアップした超ウルトラ8兄弟のスペリオルマイスフラッシャーで倒された。
スター・ウォーズ』のシスの暗黒卿を思わせるデザイン。(因みに巨大化時の肩書は「巨大暗黒卿」。そのまんま過ぎる……)
設定的には『新世紀ウルトラマン伝説』に登場した天空魔に通じるものがある。

 

迷子珍獣ハネジロー
身長 33cm
体重 5kg
ヒカリの友達。ヒカリと赤い靴の少女と一緒に遊んだ。

 

物語
ウルトラマンがいない世界。そこではハヤタやダイゴは普通の人間として暮らしていた。
しかし、ダイゴはウルトラマンや怪獣の夢を見るようになり、やがて現実世界にも異変が起きるようになってしまった。
世界を守る為、かつてのヒーロー達が再び立ち上がる!

 

感想
TV放送が終了してから11年後に劇場版が公開されると言う異例の展開。2010年代からは東映の「10 YEARS AFTER」等が展開されるようになったが本作の公開当時は10年近くの間を開けて新作が作られると言う事は殆ど無かった。さすがは平成ウルトラシリーズで最も評価が高い作品である。

 

本作の見所は昭和と平成の主役陣が一堂に会する事。特にハヤタとダイゴの2ショットは感慨深いものがある。
戦いの後の主人公8人が並ぶ場面で郷役の団さんの大きさが改めて分かる。
実は物語の構成を考えた場合、昭和世代のハヤタと平成世代のダイゴの二人だけの方が話がすっきりするのだが、円谷プロが子会社化されると言う大きな節目を迎えた事を考えると、このタイミングで歴代主人公と歴代ヒロインが集結してウルトラシリーズの総決算が行われるのは必要な事だったと思う。

 

当初は『メビウス』で人間態が唯一登場しなかったタロウを主役にした内容が検討されたが光太郎役の篠田三郎さんの出演が叶わなかったので方針転換されたらしい。(当初はギガキマイラではなくゴモラエレキングのパーツが集まったグランドタイラントと言う怪獣が出る予定だったらしい)
昭和ウルトラシリーズの総決算は実現しなかったが、昭和と平成の主人公が一堂に会した事で、これまで昭和シリーズの要素を復活させて来たウルトラシリーズに今度は平成シリーズの要素を復活させる流れが生まれた。以後のウルトラシリーズはM78星雲の世界を中心に世界観が異なる平成シリーズの要素を付け加える作りへと変わっていく事になる。

 

本作は歴代主人公と歴代ヒロインが集結し、しかも、パラレルワールドの設定を活かして全ての主人公とヒロインがカップルになっている。特にオリジナルの世界では結ばれなかったダンとアンヌ、郷とアキ、星司と夕子、アスカとリョウが幸せになっているのは嬉しい。こうして見ると昭和ウルトラシリーズの主人公とヒロインの結ばれなさは凄い……。
アキがオリジナルの世界と同じく重体に陥るが今度は助かるのがパラレルワールドならではで良かった。

 

本作の舞台は2009年に開港150周年を迎える横浜で当時の中田市長も出演している。
ダイゴとミライが赤い靴の少女について話をしたのは横浜山下公園にある「赤い靴はいてた女の子の像」の前。ウルトラシリーズで実在の場所が舞台になるのは珍しい。本作は横浜の街を舞台にしたダイゴ達の日常が描かれているので聖地巡礼がしやすい作品となっている。
長い鎖国時代を終えて世界に扉を開く場所となった横浜が物語の舞台になったと言うのはこの時期の円谷プロウルトラシリーズを考えると奇妙な符合を感じる。

 

この作品の時代設定は一体いつなのか?
物語は昭和41年7月17日と言う『初代マン』の第1話が放送された日から始まっていて、この時のダイゴ達は10歳くらいと思われる。(ダイゴの子供時代を演じた小川光樹さんは当時10歳) なのでダイゴ達は1956年頃に生まれたと仮定できる。
大人になったダイゴ達の年齢だが、ダイゴ役の長野さんが36歳、アスカ役のつるのさんが33歳、我夢役の吉岡さんが29歳となっている。子供時代のダイゴ達を見たらダイゴと我夢が7歳も離れているのは無理があるので、ここは間を取ってアスカの33歳を3人の年齢の基準と考える。(アスカの野球選手復活を伝える新聞にアスカの年齢が30代前半と記されている)
1956年生まれだと大人になったダイゴ達が活躍する時代は1989年の平成元年となる。これなら劇中の登場人物が『ティガ』以降の平成ウルトラシリーズを知らない理由も説明できる。日本丸が引退した年も1984年なのでこことも矛盾しないなと思ったら横浜ベイスターズが誕生した年が1992年であった……。
ラストシーンはダイゴ達の外見は変わっていないがダイゴとレナの娘であるヒカリがかなり大きくなっている。(因みにヒカリ役の橋本くるみさんは当時11歳) 横浜開港150周年で2009年なのは確定しているので、ヒカリを11歳と仮定すると彼女は1989年から1998年までの間に生まれたと考えられる。
まぁ、本作はウルトラシリーズ半世紀の流れをメタも交えて振り返ると言う内容なので細かい時代設定は最初から無いと言うのが正解なんだろうけれどね。

 

小ネタ色々『Q』編。
・ナレーションが石坂浩二さんで「しばらくの間、あなたの目はあなたの体を離れて、この不思議な世界へと入っていくのです」と語っている。
・横浜の街に浮かび上がった蜃気楼を取り上げたニュース番組にコメンテーターとしてSF作家の万城目淳が出演。著書の中で世界の破滅を予言し、環境破壊等によって自然界の秩序が乱れてアンバランス・ゾーンが生まれたと警告している。
・アキが怪獣の襲撃を受けた街で助けた老人は一平役の西條康彦さん。
由利子役の桜井浩子さんがアキコ役で出演しているので『Q』は主人公3人が全員出演している事になる。

 

小ネタ色々『初代マン』編。
・ハヤタとアキコがサイクルショップを開いているのは『レオ』の「怪獣の恩返し」が元ネタ。マニアックだ。
・駄菓子屋のおじさんがイデ隊員役の二瓶正也さん。
・キングゲスラ横浜赤レンガ倉庫を襲撃するのは『初代マン』の「沿岸警備命令」でゲスラが横浜に現れたから。

 

小ネタ色々『セブン』編。
・ダンとアンヌがハワイアンレストランを経営しているのはダン役の森次晃嗣さんとアンヌ役のひし美ゆり子さんが飲食店を経営していた事から。
・キングパンドンを見たダイゴはすぐに「あれは……確かパンドン!」と名前を当てている。キングパンドンは頭部のデザインが『セブン』のパンドンと異なっているが、どうやらダイゴの世界で放送された『セブン』のパンドンはキングパンドンと同じく頭部が二つに分かれているようだ。

 

小ネタ色々『帰マン』編。
・郷とアキの娘としてメグが登場。アキ役の榊原るみさんとメグ役の松下恵さんは実の母娘。
・郷とアキが経営しているのは「坂田自動車修理工場」。工場内には坂田さんの写真が飾られていて、郷は家族と共に流星1号の完成を目指している。
・ミライが郷の記憶を呼び覚ませようと「ジャック兄さん! 分かりませんか? だったら、新マン兄さん! 帰りマン兄さん!」と呼びかける。ミライはM78星雲の世界から来ているので、M78星雲の世界ではジャックの事を実際に「新マン」や「帰りマン」と呼んでいた時期があった事が判明した。(「ウルトラマン二世」はどうなっているのだろうか……?)
・子供時代のダイゴ達が将来の夢を語り合う場面で「ウルトラの星」と言う言葉が出てくる。人間が目指すべき目標として「ウルトラの星」が使われるのは『帰マン』から。(実はこの場面は1969年らしいので『帰マン』はまだ放送されていないのだが……)
・街に買い物に行ったアキが怪獣の襲撃を受けて怪我をしてしまうのは『帰マン』の「二大怪獣東京を襲撃」「決戦! 怪獣対マット」が元ネタ。
・意識不明の重体に陥ったアキを見て郷は「アキは最後まで守ろうとした。自分よりか弱い命を。そんなアキを俺は守れなかった。守れなかったんだ……」と呟く。ひょっとしたら『帰マン』の「ウルトラマン夕陽に死す」の時の記憶が甦っていたのかもしれない。

 

小ネタ色々『A』編。
・星司と夕子の娘として七海が登場。夕子役の星光子さんと七海役の紫子さんは実の母娘。紫子さんの雰囲気が『A』当時の星さんに似ていて驚いた。「七海」の名前の由来は夕子の初期設定の名前であった「七子」かな。
・星司と夕子がベーカリーを営んでいるのは『A』で星司がTAC入隊前はパン屋の運転手だったから。
・夕子が看護師の資格を持っているのは『A』で夕子がTAC入隊前は看護婦だったから。
・ラストシーンで宇宙船に改造された日本丸がウルトラの星に向けて旅立つ。宇宙船に改造された船が宇宙に旅立つと言えば『宇宙戦艦ヤマト』が有名だがウルトラシリーズでも『A』の「青春の星 ふたりの星」でスカンジナビア号が空を飛んでいる。

 

小ネタ色々『ティガ』編。
・ダイゴが自転車通勤しているがダイゴ役の長野博さんの実家は自転車屋だったりする。
・ダイゴは横浜の経済観光局・観光交流推進課に勤めていて、ムナカタが観光課課長になっている。
・ハヤタとアキコの娘としてレナが登場。ハヤタ役の黒部進さんとレナ役の吉本多香美さんは実の父娘。
・レナはFMヨコハマのDJになっていて、シンジョウがFMヨコハマのディレクターになっている。
・横浜に浮かび上がった蜃気楼を取り上げたニュース番組のキャスターがマユミになっている。役柄的には『ガイア』の玲子の方が合っている気がするが……。
・宇宙船に改造された日本丸の出港式に国連事務総長としてサワイがテープカットをしている。
・自分が立ち上がらなければいけない事を決意したダイゴがレナに向かって訴えた「この世界を救うには僕が頑張るしかないんだ」「人として出来る事。それを最後までやるしかないんだ」と言う言葉は『ティガ』のTVシリーズでも似た意味の台詞があった。ウルトラマンとして戦い続ける中で答えを見付けたTVシリーズウルトラマンに憧れるただの人間だった中で答えを見付けた今回とでは言い回しが微妙に異なっている事に注目。
・シルバゴンとゴルドラスと言う『ティガ』怪獣の金閣銀閣コンビが今回初めて同じ画面に揃って登場している。

 

小ネタ色々『ダイナ』編。
・子供時代のダイゴ達が将来の夢を語り合う場面は「少年宇宙人」を思い出す感じになっている。
・アスカが野球選手になっているのは『ダイナ』の設定を踏まえて。満塁からの押し出しと言う自滅については『光の星の戦士たち』でダイナがデスフェイサーに負けたのをアスカが自分で振り返った時の台詞が元ネタになっている。
・戦いに赴く際のアスカとリョウの「アスカ、必ず帰って来てね」「あぁ、本当の戦いはここからだぜ」と言う会話は『ダイナ』のTVシリーズにあった台詞を踏まえたもの。今回はTVシリーズの最終回では言えなかった「お帰り、アスカ」「ただいま、リョウ」まである。
・横浜の街での超ウルトラ8兄弟の戦いを見守る人々の中にナカジマ役の小野寺丈さん、カリヤ役の加瀬尊朗さん、ゴンドウ参謀役の亀山忍さんがいる。ゴンドウ参謀が無邪気にダイナを応援してる姿に思わず涙。
横浜ベイスターズに入団したアスカはフォークボール等の変化球も駆使して活躍している。『ダイナ』での野球関連の話と合わせてみると色々と感慨深いものがある。
横浜ベイスターズの監督がヒビキになっている。宇宙船に改造された日本丸の出港式で「ただ一言言っとく。また無茶をして、宇宙で迷子になるんじゃねぇぞ」「ラジャ!」と「明日へ…」を意識したやりとりがある。
・ヒカリの友達としてハネジローが登場。出来れば、アスカと絡んでほしかったな。
・『ダイナ』の野球回である「ウイニングショット」の脚本を担当した古怒田さんは横浜ファン。

 

小ネタ色々『ガイア』編。
・本作は世界が異なる作品の主人公を集める為にパラレルワールド設定が使われているが、過去のウルトラシリーズでは『超時空の大決戦』が同じ手法を採っている。
・ダイゴ達が出会う赤い靴の少女の正体は不明であるが、いくつもの世界を渡り歩いているところは『超時空の大決戦』のリサに通じるものがある。(どちらも赤を特徴にしている)
・藤宮博也教授がTVに出演して反重力理論完成について語っている。おそらくこれはリパルサー・リフトの事。この作品の平成主人公達は皆が夢破れているが藤宮は夢を叶えている。
・戦いに赴く際に我夢がアッコに告げた「この世界は滅んだりしない」はTVシリーズにあった台詞を踏まえたもの。
・藤宮と玲子が結婚しているが、藤宮役の高野八誠さんと玲子役の石田裕加里さんも実際に結婚されている。藤宮と玲子の娘として妃菜花と言う女の子が登場しているが彼女も高野さんと石田さんの実の娘である。
・宇宙船に改造された日本丸の出港式をKCBが中継している。

 

小ネタ色々『メビウス』編。
・ダイゴ達の世界に迷い込んだミライは『メビウス&ウルトラ兄弟』からTVシリーズの「別れの日」までの間のミライとなっているらしい。この頃はエンペラ軍団がヤプールを復活させようとして次元が乱れていたらしいが実は黒い影法師の暗躍も関係していたのかもしれない。
・ダイゴとミライを繋ぐ言葉として「G・I・G」が使われる。『ダイナ』の「ラジャー」もだが決まった台詞があるとこういう時に使える。
・キングパンドンを倒したメビウスは応援してくれたダイゴに向かってサムズアップをしようとしたが、その隙を突かれてスーパーヒッポリト星人にブロンズ像にされてしまう。『メビウス&ウルトラ兄弟』もだったがメビウスが勝利のポーズをするのはもはや敗北フラグ……。

 

小ネタ色々その他編。
・『メビウス&ウルトラ兄弟』で集結した黒部さん、森次さん、団さん、高峰さんの4人を「ダンディー4」と呼ぶのに対して今回出演した桜井さん、ひし美さん、榊原さん、星さんの4人は「ビューティー4」と呼ばれている。
・子供時代のダイゴの母親役は長澤奈央さん。『忍風戦隊ハリケンジャー』が有名だがウルトラシリーズにも八木監督作品で出演している。
・ビューティー4がアロハを踊る場面で客席に満田監督がいる。因みに本作にアロハの場面があるのは横浜が日本のハワイアン発祥の地だったかららしい。この場面の為にダンディー4と松下恵さんによる『渚の約束』と言う歌が作られている。
横浜ベイスターズの試合で始球式を務めるのは『SEVEN X』でエス役の伴杏里さん。因みに横浜出身。
・怪獣出現を伝える女性のテレビキャスターは『SEVEN X』で政府放送のキャスターを務めていた莇陽子さん。一気に不穏になる……。
・この世界には特別チームがいないので自衛隊機が怪獣を攻撃している。ウルトラシリーズ自衛隊が登場するのは珍しくて『Q』『初代マン』『帰マン』くらい。『ULTRAMAN』は自衛隊がメインと言うかなりレアな作品だった。
・被災者を手当てしている医師は風見しんごさん。『コスモス』と『メビウス』の劇場版に出演しているが今回の役名は『コスモス』の時のキドだった。
・宇宙船に改造された日本丸の出港式のテープカットにウルトラシリーズの映画のプロデューサーである鈴木清さんがいる。

 

本作では平成の主人公達は夢破れた者達となっていて、ダイゴは宇宙飛行士、アスカはプロ野球選手、我夢は科学者になって宇宙船を作るが夢だった。
話の展開上仕方が無いが宇宙飛行士の夢はアスカが担当しても良かったかなと思った。まぁ、それを言い出したらFMヨコハマのDJはリョウの方がとかアンヌとマユミも看護師で出すとか色々出てきてしまうが。

 

メビウス&ウルトラ兄弟』でナックル星人に捕らわれたメビウスを救う為にハヤタ、ダン、郷、北斗の4人がウルトラ兄弟に変身する場面を目撃するダイゴ。
今回の舞台となっている世界では昭和ウルトラシリーズが放送されているようだが、ハヤタ達がウルトラマンに変身するのを見たダイゴは驚き、ダイゴから話を聞いたアスカ達も笑って信じようとしていなかったので、どうやらこの世界で放送されている昭和ウルトラシリーズの主人公達はハヤタ達とは全く違う人物のようだ。

 

今回の登場怪獣だが『初代マン』からゲスラ、『セブン』からパンドン、『A』からヒッポリト星人、『ティガ』からシルバゴンとゴルドラス、巨大怪獣ではないが『ダイナ』からハネジローが出ている。
やや強引ではあるが『メビウス&ウルトラ兄弟』の場面でナックル星人が喋っている場面があるのでここが『帰マン』枠で、Uキラーザウルス・ネオが『A』と『メビウス』枠と言えるかもしれない。
残るは『ガイア』枠だが、赤い靴の少女が『超時空の大決戦』のリサを思わせるキャラだった。あと、黒い影法師が根源的破滅招来体をイメージしているとか……?

 

ニュース番組がメビウスと怪獣の戦いを「過去に放送されたウルトラマンと怪獣に酷似している」と伝えている。ダイゴの世界にもあるであろう円谷プロはこの後色々と問い合わせがあって大変だっただろうな……。

 

自分に出来る事をしようと決意したダイゴの姿を見たレナも自分に出来る事をする。
ディレクターに言った「私に3分だけ時間をください」と言う言葉にニヤリとしてしまう。
「皆さん。災害情報の時間ですが少しだけ私の言葉を聞いてください。怪獣が現れ、多くの人が傷付きました。たくさんの怒りや悲しみがこの街に溢れています。未来に絶望し、立ち止まっている人もいるでしょう。届かぬ夢に思いを馳せている人もいるでしょう。でも、希望は捨てないでください。あなたには守るべき人がいるはずです。守るべき未来があるはずです。声に出して伝えてください。一番大切な人に自分の正直な気持ちを、夢を……。その時、見付かるかもしれません。忘れていた大切な何かが……。そして、本当の自分が……」。
実を言うと公開当時は良い台詞だなぁ……くらいの感覚で聞いていたのだが、この数年後に起きた東日本大震災を経た後に再び聞くとかなり胸に迫るものがあった。こうして見るとウルトラシリーズは普遍的なメッセージを伝えようとする作品なんだなと改めて思った。

 

ダン「最後まで諦めなければウルトラマンはきっと来てくれる。ダイゴ、君がまだ子供の頃、教えてくれた言葉だ」、
ダイゴ「僕が……?」、
星司「そうだ、俺達が夢を忘れずにいられたのはウルトラマンを信じる君達の眼差しが心に残っていたからだ」、
ダイゴ「ウルトラマンを信じる……眼差し」、
ハヤタ「そうだ。君達はウルトラマンを信じていた」。
本作では昭和の主人公達はいつまでも夢に向かって頑張って生きている、変身こそしないが人間として尊敬出来るヒーローとして描かれている。しかし、それは自分達より下の世代である平成の主人公達の存在があったからこそ自分達は頑張れたとなっている。
昭和と平成の二つの世代をどちらが上でどちらが下とするのではなく、二つの世代がお互いに良い影響を与え合っていたと言うのが良かった。本作は二つの世代の主人公達が出演しているので両方を立たせなければいけなかったと言う事情があったのだろうが、それでもどちらの世代も良く描く作品は意外と少なくて、上の世代が古い考えに固執していたり下の世代が世の中をゲーム感覚で捉えていたりと言う感じに描く作品が多いイメージがある。

 

幾多の迷いの末、ダイゴはかつて赤い靴の少女が「皆の心にいつまでもウルトラの星が輝いていますように……」とウルトラの星に願い、それに対して自分は世界がピンチになった時は自分がウルトラマンになって助けに来ると約束していた事を思い出す。
そして全てを思い出したダイゴの手にスパークレンスが現れ、ダイゴはティガに変身する!
公開当時は久し振りに聞けたBGMに思わず涙した……!

 

ティガがダイゴだと気付いたアスカと我夢も決意を固め、現れたリーフラッシャーとエスプレンダーでダイナとガイアV2に変身する。
変身の際に二人の周りを光が包むのは『ガイア』の「天使降臨」での我夢と藤宮のW変身が元ネタと思われる。(因みに八木監督のウルトラシリーズ監督デビュー作)
ガイアV2の着地の時に土砂が舞い上がる演出が嬉しい。やはりこれがあるとガイア!と言う感じになる。
ガイアがV2だったのは昭和のウルトラマンと分かりやすく区別を付ける為か、それとも今回の作品に登場しなかったアグルの分も含めてと言う意味だろうか。

 

ティガ、ダイナ、ガイアV2の平成三部作のウルトラマンが揃うのは『超時空の大決戦』以来。この時には実現しなかった3人の掛け合いも今回は楽しめる。一方で残念ながらタイプチェンジは行われなかった。

 

これまでのウルトラシリーズの空中戦は遥か高くに上がって周りに何も無い大空で行うのが殆どであったが、今回は眼下に横浜の街が広がる場面が多く、これまでより空を飛んでいるのが実感できるようになっている。
個人的にはセブンがギガキマイラの攻撃を避けながら海面スレスレを飛ぶ場面が好き。

 

スーパーヒッポリト星人達を倒すが黒い影法師によって出現させられたギガキマイラに苦戦するティガ達。それでも戦いを見守る人々は諦めていなかった。
郷「誰もが最後までウルトラマンの勝利を信じている」、
北斗「この声を俺達は聞いた事がある」、
ダン「そう。私達はこの声を聞き、戦い続けてきたんだ」、
アンヌ「そうよ、ダン。私も思い出した。ダンが命を懸けて戦ってきた事を」、
アキコ「ハヤタさん。あなたはこの星を愛し、人間を愛した。あなたは本物のヒーローよ」、
郷「愛する人を、守る為に……」、
アキ「郷さん……」、
北斗「この世界を守る為に……」、
夕子「星司さん……!」、
ハヤタ「さぁ、我々も行こう!」、
ダン「ダイゴ達と共に!」。
ここでの主人公達とヒロイン達のやり取りは元の作品を知っていると感慨深いものがある。(まぁ、ハヤタとアキコは元の作品で特に深い関係ではなかったので違和感が少しあったが)

 

平成の主人公達は後半に差し掛かって自分達が別の世界ではウルトラマンだった事を思い出すのだが昭和の主人公達はどの辺りで思い出していたのだろうか。なんかもう前半の時点で黒い影法師が暴走させたトラックを人間離れした動きで止めていたりしているのだが……。

 

あまり深く考えるものではないのかもしれないが、「別の世界の記憶を思い出す」と言う言い回しが微妙におかしい気がする……。

 

今回も初代マンはAタイプであるが今回のハヤタは『初代マン』の影響が強いので今回はアリだった。(何故か変身シーンではAタイプではなかったが……)

 

超ウルトラ8兄弟によってギガキマイラが倒されたのを見た黒い影法師は街に蔓延っていた無数の自分と合体して巨大化する。
「我らは消えはせん……。我らは何度でも強い怪獣を呼び寄せる……。人の心を絶望の闇で包む……。全ての並行世界からウルトラマンを消し去ってくれる……」と語るが「無駄だ! どんな絶望の中でも人の心から光が消え去る事は無い!」と言うティガの言葉とグリッター化した超ウルトラ8兄弟が放つスペリオルマイスフラッシャーを受けて「消えぬぞ、我らは……!」と言う言葉を残して消え去るのだった。
平成ウルトラシリーズは光と闇の戦いが多かったが本作で一区切りとなったのか、翌年の『ウルトラ銀河伝説』ではゼロとベリアルが登場し、光と闇と言う対立の図式は残っているのだが、人間が光になったり相手が実体の掴みにくい闇だったりする事は少し抑えられる感じになっていった。

 

戦いが終わり、ミライは自分の世界へ帰って行く。
ミライ「ありがとう。また会いましょう」、
ダイゴ「G・I・G」。
この後、メビウスとティガが共演する作品もあるがミライとダイゴは再会したのかなぁ。ちょっと気になる。

 

この戦いで大切な何かを思い出したダイゴ達は一歩前へと踏み出した。
「信じる力が奇跡を起こし、この世界は救われた。そして、僕らは知ったのだ。この空の向こうに本当にウルトラの星がある事を……」。
アスカはプロ野球選手になって横浜ベイスターズを優勝に導く。調べてみると2008年時点で横浜が優勝したのは1960年と1998年の2回だけらしい。マジか……。
我夢は藤宮と一緒に反重力システムの実用化に成功し、日本丸を宇宙船に改造してしまう。横浜が舞台なので日本丸が選ばれた理由は分かるが、それでもやっぱり「どうして日本丸を?」と言う感じはする。
ダイゴは市役所職員から宇宙パイロットになって、レナとも結婚。『THE FINAL ODYSSEY』ではダイゴとレナの結婚式が描かれていなかったのでこれは嬉しかった。
そして宇宙船に改造された日本丸でダイゴ達は人類で初めてM78星雲ウルトラの星へと旅立ち、それをハヤタとアキコのジェットビートル、ダンとアンヌのウルトラホーク1号、郷とアキのマットアロー1号、星司と夕子のタックスペースが後ろから見守る。
このウルトラの星への旅立ちはかなり強引な展開なので一種のサービスと思って見た方が良い。ここまで開き直られると逆に文句を言う気持ちが無くなって、これはこれで良いのかなと言う気がしてくる。

 

個人的に最後にハネジローが出てくれたのが嬉しかった。

 

赤い靴の少女について明確な説明は無かった。「もし子供達の心からウルトラマンが消えて皆が夢を失ってしまったら、私も消えて全ての宇宙は奴ら(黒い影法師)のものになってしまう」と言っているので、ウルトラマンや夢や希望と言った「人間の善なるもの」に関わる存在だと思われる。おそらくそれは「人間の悪なるもの」に関わる存在であった黒い影法師と対になるものだったのだろう。

 

エンディング曲はV6の『LIGHT IN YOUR HEART』。
『ティガ』に続いて本作もV6が主題歌を歌う事になった。

 

本作は八木監督のウルトラシリーズ監督最終作となっている。
八木さんは監督業だけでなく『マックス』ではプロデューサー業も担当していて平成の満田監督のような存在であった。

 

円谷プロの子会社化によって円谷家はこの作品をもってウルトラシリーズの制作から退いている。他にも怪獣倉庫が取り壊される等、一つの時代が終わりを告げた事を感じる時期であった。だからこそ、本作のようなメタな部分も組み込んでのウルトラシリーズの総決算的な作品が作られたのかもしれない。(結果としてウルトラシリーズに詳しくない人には理解が難しい、いわゆるマニア向けの作品になってしまったところがある)
平成ウルトラシリーズと言う新たな時代を切り開いた『ティガ』は数年の時を経て再びウルトラシリーズの歴史にとって一つの節目に立ち会う事となった。